地上200mから「彼方」と交信する。ヨシロットン過去最大規模の個展「BEYOND EARTH」がTOKYO NODEで開幕

Event Date:2026.10.30-2027.01.11
Nov 4, 2026
東京・虎ノ門ヒルズのTOKYO NODEで、アーティスト、ヨシロットン(YOSHIROTTEN)の過去最大規模となる個展「ヨシロットン展 彼方との交信/BEYOND EARTH」が10月30日に開幕しました。会期は2027年1月11日まで。

地上約200mに位置する約1,500㎡の展示空間を舞台に、光、色彩、映像、立体作品が交錯する本展。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力によって生まれた新作から、これまでの創作を象徴する代表シリーズまで、ヨシロットンが探求してきた「見えないものの可視化」というテーマを、多角的に体験できる展覧会です。

photo ©FASHION HEADLINE

会場となるTOKYO NODE GALLERYは、都市を見渡す大きな窓と高い天井を持つ空間です。ヨシロットンは、この場所全体を一つの宇宙船に見立て、今ここからは見ることのできない遠い場所や時間、未知の世界と出合うための場を構想しました。

宇宙から届く観測データ、人工的に生成される光、窓の外に広がる東京の風景。異なる時間と距離を持つものが一つの空間に集まり、鑑賞者を「彼方」への想像へと誘います。



ファッション、音楽、アートを横断するヨシロットンの創作

1983年、鹿児島県生まれのヨシロットンは、ファインアートと商業美術、デジタルと物質、都市文化と自然といった領域を横断して活動するアーティストです。自身が率いるクリエイティブスタジオ「YAR」では、エルメス(Hermès)、ナイキ(Nike)、ジャガー(Jaguar)などのブランドをはじめ、スティーヴィー・ワンダー、山下達郎、宇多田ヒカル、XGといったミュージシャンのプロジェクトにも携わり、広告、映像、空間デザインなど幅広い分野で独自の視覚表現を展開してきました。

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一方、アーティストとしての活動では、キャリアの初期から一貫して「見えないものを、どのように視覚化できるのか」という問いに向き合っています。幼少期を過ごした鹿児島の自然も、その創作の原点の一つです。街灯のない山道を歩き、暗闇の中で木々を眺めながら、目の前の自然とは異なる、まだ見たことのない世界を想像していたといいます。現実に存在する風景から、そこには見えていない何かを思い描く。その視線は、現在のヨシロットンの作品にも通じています。

本展では、過去約10年間にわたり展開してきた《RGB》《FUTURE NATURE》《SUN》という3つのシリーズが、それぞれ異なる方法で「見えないもの」に向き合ってきた3つのシリーズが、本展では一つの展示空間の中で交差しています。



《RGB》──144台のモニターが映し出す、光の原体験

展示の序盤で目にするのは、壁面に並ぶ144台のモニターから赤、緑、青の光が放たれるインスタレーション《Signal RGB》です。

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モニターには、それぞれ異なるグラフィックが映し出され、鮮やかな色彩が暗い展示室を照らします。個々の画面では図形やイメージが動き続け、少し離れて眺めると、壁面全体が一つの大きな光の構成として立ち現れます。

この作品の着想源となったのは、ヨシロットンが中学生の頃に目にした、暗いコンピューター室で発光するスクリーンセーバーの光景です。《Signal RGB》は2019年のグループ展「PHENOMENON: RGB」で初めて発表され、2024年にギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催された個展「Radial Graphics Bio」でも披露されました。

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今回の展示では、これまでで最多となる144台のモニターを使用。デジタルイメージの基礎となる光の三原色、RED(赤)、GREEN(緑)、BLUE(青)が、空間そのものを満たしています。グラフィックデザインの世界で日常的に用いられるRGBという仕組みを、身体で体験する光の環境へと拡張する。ここには、ヨシロットンがデジタル表現と空間表現を往来してきた軌跡が表れています。



《FUTURE NATURE》──自然への想像力が、宇宙科学と出合う

《FUTURE NATURE》は、自然界に存在しながら、人間の目では捉えることのできない現象や存在を、テクノロジーと想像力によって表現するシリーズです。2018年の個展から展開されてきたこの試みでは、自然の造形とデジタル特有の質感を重ね合わせ、現実の風景とも空想上の世界とも異なるイメージが生み出されてきました。

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今回、その探求は地球の自然から、さらに遠い宇宙へと広がっています。新作群の制作につながったのは、JAXA宇宙科学研究所の教授で、X線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」の研究に携わる山口弘悦氏との対話でした。

ヨシロットンが以前から取り組んできたのは、自然界の色彩や光、形態を、独自の感覚で捉え直すこと。一方、XRISMは、人間の目では見ることのできない宇宙のX線を観測し、天体で起こる現象を研究するための衛星です。

科学者が観測データを解析し、宇宙で何が起きているのかを解き明かそうとすることと、アーティストが見えない世界に想像力を働かせること。方法は異なっていても、両者には未知の存在を捉えようとする共通の関心があります。本展では、そうした対話から生まれた作品が、絵画、映像、光や音を用いた表現として展開されます。

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超新星爆発の過程を描く《Supernova》、XRISMが調査を進めるブラックホールのX線を視覚化する《Puddle Cygnus X-1》、国際宇宙ステーション(ISS)による全天観測データを光と音に変換する《Light Pulse》、そして約100分に及ぶ映像作品《宇宙百景》などです。

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観測によって得られた情報が、科学的な説明とは異なる形で鑑賞者の感覚に働きかける。データを視覚表現へと変換することで、遠い宇宙の出来事が、目の前の光や色彩として現れます。



日本初の人工衛星「おおすみ」の管制卓も展示

JAXAとの協働を象徴するのが、宇宙開発の歴史的な資料の展示です。会場には、1970年に打ち上げられた日本初の人工衛星「おおすみ」の管制に使用された管制卓の実機も展示されています。

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スイッチや計器、操作盤が並ぶ管制卓は、現在のデジタル機器とは異なる時代の技術を伝える存在です。半世紀以上前、日本が宇宙開発の第一歩を踏み出した時代の装置が、現代アートの展示空間に置かれています。

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さらに、太陽光の圧力を受けて推進する宇宙帆船「IKAROS(イカロス)」のバックアップモデルも特別展示されています。

宇宙を観測する技術の歴史と、その観測結果から新しいイメージを生み出す現代の表現。過去の宇宙開発と現在のアートが、ここで一つにつながります。



《SUN》──365枚のイメージから生まれた、変わり続ける世界

《SUN》は、ヨシロットンがコロナ禍に継続して制作した365枚のイメージを起点とするアートプロジェクトです。2023年の発表以降、インスタレーション、プリント、レコード、書籍など、さまざまなメディアを通じて展開され、現在は宿泊可能な作品《SUN HOUSE》の構想も進められています。

本展では、この《SUN》シリーズから、約10時間に及ぶ新たな映像作品が発表されています。

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高い天井を持つ展示室には巨大な縦型スクリーンが設置され、色彩と形態がゆっくりと移り変わる映像が映し出されます。鑑賞者は床に置かれた柔らかなシートに腰を下ろし、時間とともに変化するイメージを眺めることができます。

《SUN》の着想源の一つには、地底深くに銀色の景色が広がっているという想像があります。実際に見ることのできない地球の内部を想像しながら、季節の移ろいや物事の変化といった、私たちの日常にも通じるテーマを重ねていく。作品に現れる色彩は、特定の風景を再現するのではなく、鑑賞する人それぞれの記憶や感覚を呼び起こします。

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長い映像のすべてを見届けることよりも、その時々に現れる色や光と向き合うこと。絶えず変化する映像は、鑑賞する時間そのものを作品の一部にしています。



東京の光と宇宙のデータが交差する、地上200mの展示空間

今回の展覧会を特徴づけているのは、個々の作品だけでなく、TOKYO NODEという場所そのものを表現に取り込んでいることです。展示空間には、モニターやネオン管、映像作品など、自ら光を発するさまざまなメディアが配置されています。そこに大きな窓から自然光が差し込み、日没後には東京の街の灯りが加わります。

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時間帯によって光の条件が変わることで、作品と空間の見え方も変化していきます。約1,500㎡のギャラリー全体が、固定された一つの景色ではなく、その瞬間にしか現れない光の環境となるのです。

ヨシロットンは、今回の展覧会の構想について、2024年に鹿児島県の霧島アートの森で開催した個展の後、TOKYO NODEの展示室から東京の夕景を眺めたことがきっかけだったと説明しています。

次第に日が暮れていく都市の景色を見ながら、思い浮かんだのは「宇宙」という言葉でした。その着想をきっかけにJAXAの研究者との交流が生まれ、宇宙の観測データを光や音、映像へと変換する今回の作品群へと発展していきました。

地上約200mという高さは、宇宙から見ればごくわずかな距離です。それでも、都市を見下ろすこの場所に立つことで、普段とは異なる視点から地球や、その先に広がる世界を想像することができます。



見えない世界に、想像力で輪郭を与える

ヨシロットンがこれまで手がけてきたファッションや音楽のプロジェクトと、今回の宇宙をテーマにした作品群は、一見すると異なる領域に属しているように見えます。しかし、目に見えない感覚やイメージを、色彩、形態、光、空間へと変換するという点では、共通する創作の姿勢が貫かれています。

《RGB》では、デジタルの光が持つ可能性を。《FUTURE NATURE》では、自然や宇宙に潜む不可視の現象を。《SUN》では、未知の風景と変化し続ける時間を。それぞれ異なる方法で探求してきた表現が、本展では一つの空間の中で交差しています。

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宇宙の観測データを科学者とは異なる視点で読み替え、見ることのできない世界に新しい姿を与える。その行為は、私たちが普段見慣れている都市の景色にも、まだ気づいていない何かが存在することを想像させます。

「彼方」とは、遠い宇宙だけを意味する言葉ではないのかもしれません。目の前にありながら見えていないもの、過去の記憶、まだ訪れていない未来。ヨシロットンの作品は、そうした未知の領域へと意識を向けるきっかけを与えてくれます。

東京の地上約200mから始まる「彼方」との交信。そこには、科学が捉えた世界を、アートの想像力によってもう一度見つめ直す体験が広がっています。




INFORMATION
ヨシロットン展 彼方との交信/BEYOND EARTH

会期:2026年10月30日(金)~2027年1月11日(月・祝)
会場:TOKYO NODE GALLERY A/B/C、SKY GARDEN & POOL
所在地:東京都港区虎ノ門2-6-2 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー45階・49階
主催:ヨシロットン展製作委員会(森ビル株式会社、株式会社YAR、株式会社博展、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 CCCアートラボ)
協力:宇宙航空研究開発機構(JAXA)


45階 TOKYO NODE GALLERY 展示
月~金曜:13:00~22:00
土曜:10:00~22:00
日曜・祝日:10:00~20:00
※最終入場は閉館30分前


49階屋上展示
「ポケモンカードゲーム & ヨシロットンパーク」
月~金曜:13:00~17:00
土曜・日曜・祝日:10:00~17:00

「ビヨンドアースガーデン」
全日:17:30~22:00
※最終入場は閉場30分前
※「ビヨンドアースガーデン」のみ入場無料・別途オンラインチケット制
※屋上展示は天候等により休止となる場合があります。最新の公開状況は公式サイトをご確認ください。




The Editorial Team
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