山口百恵からギャングの素顔まで圧巻の790点、「立木義浩1959-2019写真展」上野で開幕

開催日:2019.05.23-06.09
2019.05.25
プロ写真家としてスタートして今年60年目を迎える立木義浩の自身最大規模となる写真展が5月23日、上野の森美術館でスタートした。館1、2階の展示室を使って展示された作品は720枚。「時代 − 立木義浩 写真展 1959-2019 −」というタイトルと偶然にも同じ12ヶ月×60年と同じ数となった。さらにギャラリースペースを使用して6×6(ロクロク)をもじり『デジ6』とネーミングされたデジタルカメラの1:1の機能を使用して撮影されたモノクローム作品70点も発表。計790点という個展としては、これまで類を見ない点数の作品は圧巻だ。



200万部のベストセラーになった『蒼い時』を立木氏のスタジオで執筆していたというエピソードとともに、今回公開された山口百恵を撮った写真は8点が出展された。それ以外にも未発表を含む著名人のポートレートは勝新太郎、黒澤明、夏目雅子、大原麗子、寺山修司、ムッシュかまやつなど鬼籍に入った有名人から、武豊、貴田光司などのスポーツ選手、開高健、柴田錬三郎など作家まで幅広い。また1971年に発表された加賀まりこの写真集「私生活」を含む、“良き時代”を切り取った日本のアーカイブは、初期の『anan』の写真などとともに、ファッション文化のクロニクルとなっている。



「この(有名人の)コーナーはモデルのアプルーバルと、展示の並び順がすべて。瀬戸内寂聴さんの隣に誰の写真が並べられているか、それを見ただけでこの大変さが分かって頂けると思う。一般公開される明日には(クレームが怖いので)田舎に引っ込む」というジョークは、日本のコマーシャル創世記から生きたレジェンドならではのコメントだ。



2階にはサウスブロンクスのギャングからアラバマのKKKまでが写る“裸の”アメリカヨーロッパアフリカ、キューバ、日本の町や村のスナップが圧倒的な数で迫る。



「玉石混淆(笑)。決して名作を並べたわけではなく、この写真を見た人が何かを感じ取ってくれて、面白がってくれれば良い」「写真に内面は写らない。カメラマンや見た人はたまに勘違いするけれど(笑)。だから外面を丁寧に撮る」「昭和から平成を経て令和、20世紀から21世紀、銀板からフィルム、そしてデジタルと変化しても“写真”という呼び方は変わらない」「いかに時代に潜り込めるか、それがスナップ。その面白さは筆舌に尽くしがたい」「これは集大成ではなく通過点」「上り坂も下り坂も一つの同じ坂」

オープニング当日、プレスの記者たちを前に語る立木節は81歳を迎えた今もエネルギー全開。「有料の写真展自体が久々の開催」というそのエンターテイメント精神は、会場で販売されている限定写真集やTシャツなどのマーチャンダイズも魅力だ。




Text by Tatsuya Noda



【展覧会情報】
時代 − 立木義浩 写真展 1959-2019 −
会期:5月23日〜6月9日
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
時間:10:00〜17:00(金曜日20:00まで開館)
入場料:一般当日1,200円、大学・高校生800円、中学生以下無料
会期中無休


野田達哉
  • 立木義浩
  • 「時代 − 立木義浩 写真展 1959-2019 −」1階
  • 立木義浩と山口百恵(奥)
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