日常に埋没したシュールと官能的を掘り起こす。アーティスト、ジャック・デイヴィソン作品集【ShelfオススメBOOK】

2019.08.17
各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。毎週土曜日は、洋書を専門に扱う原宿外苑前のブックショップ「シェルフ(Shelf)」(東京渋谷神宮前3-7-4)が選ぶ書籍をご紹介。



■『Photographs』Jack Davison

書はイギリスアーティスト、ジャック・デイヴィソン(Jack Davison)が、2007年から継続して制作するイメージを用いた実験の成果を1つのシリーズとしてまとめた作品集。

独学で写真を学んだジャック・デイヴィソンは、画家が絵を描くように直観や天性の感覚に従い、日常に埋没したシュールで官能的なものを掘り起こすような写真を撮る。

明暗を強調することで絵に深みを出す表現技法「キアロスクーロ(明暗法)」や、意味を曖昧にすることや逆に隠された意味を明らかにすることもできる写真の力が、そのユニークで巧妙なアプローチにおいて存分に生かされている。

反転し水面下に沈んだ世界のようなそのイメージは、明快で鮮明なディテールが立ち現れたかと思えば、蜃気楼のようにかき消えていく。まるで揺れ動く振り子のようである。

濃い陰影とタイトなフレーミングを特徴とする本作は、紛れもなく映画的な美意識で貫かれている。レイヤーを重ね合わせたイメージの1つ1つが見るものの連想を刺激し、実際に写っている文脈から遠く離れたところまで想像が広がっていく。

近年世間の注目を集める作家であるが、つつましやかであらゆるものを包み込むような姿勢は変わっていない。本書においては、日常の出来事をシンプルに捉えていながら、丹念な演出と編集によるセットアップ写真からミステリーと深い意味を湛えたイメージへと実にさりげなくシフトしている。


作者のイメージには手と目が繰り返し登場する。握りしめた拳、顔を撫でている手、看板の中からこちらを睨みつける目、鏡越しにきらめく目と、この2つのモチーフは作品のあちこちに姿を現している。見ることと感じること、知覚と想像の境界といった力強い緊張感を象徴している。

本書では、作者の視点から見た世界を写した謎めいたポートレート、風景写真、静物写真がきめ細やかなシークエンスとなり、こうした2つの対立する状態の間をふわふわと漂いながら、情感溢れる複雑な世界観を表現している。


【書籍情報】
『Photographs』
作品:Jack Davison
出版社:Loose Joints
言語:英語
ハードカバー/136ページ/260×240mm
発刊:2019年
価格:6,800円
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