山本寛斎2/2--日本を、自分を、大声で主張していく【INTERVIEW】

2014.01.01

――最新コレクションについて。「婆娑羅(ばさら)」というテーマのもと、日の伝統にいわゆる日本の技術を盛り込んだとあります。

たくさんのクリエーターがおいでになる中で、私は日本色を一番強く意識している1人かもしれません。他の方はもっと気持ちがインターナショナルになっているかもしれません。

私が世界へ出ていないのかと言えば、非常にたくさんをしていろいろな方と交流しますが、その度に日本人である誇りにやはり心が戻っていくんですね。海外の人には絶対に持ち得ない良さがあると信じていますので、自然と日本的なものを取り入れるようになりますし、勝負する時はそれを前に出していこうと思うのです。

――そのお気持ちは、寛斎さんの活動、どれを見ても感じられます。

もう一つ、今回最新コレクションを発表するにあたって考えたのは、私の長所は何だろう、逆に欠点は何だろうと考えたんです。そして同じくらいの世代の、世界で活躍されているデザイナーの方々は、40年くらい前から今日までずっとファッションの世界にいる。一方、私は20年程で軸足を大きなイベントのほうへ移しています。そうすると、私の場合、ファッションを片方の腕とすれば、もう片方は、イベントの演出ということになります。であれば、両方の刀を抜いて、二刀流でやったほうがいいと考えたんです。

逆に言うと、40年間、イベントなどの衣装デザインはしていても、終始ファッションビジネスの世界にいて、商品を提供していたわけではありませんから、彼らと単純に比較すると「今、KANSAIの服を買えるところはどこですか?」と言われたら、これからは「伊勢丹です」と言えるようになります。そこで私は、(1月2日から始まるポップアップストアでは)しばしば店に顔を出して、お客様達とお会いしようと思っています。

先達てはレディー・ガガさんから連絡があって、私の衣装を着てテレビ番組などに出演してくれましたので、寛斎っていう人はこういう人なんだと、改めて若い人が私に興味を持ってくれる、そういう人たちが伊勢丹に足を運んでくれることになるような予感がしています。

――特に何か、寛斎さんご自身が注目しているアイテムなどありましたら、教えてください。

今回、伊勢丹ではミーシャ・ジャネットさんなど、若手デザイナーとのコラボレーションがあります。先日、彼女の作品を見て共通するものを感じました。それは、デザインの行為を基本的に自分のためにしているということ。彼女のデザインは、自分が一番似合うだろうという服なんですね。

その点はデザイナーによっていろいろですが、たとえばマーケティング戦略を立てる段階で「寛斎さんは濃いから、少し薄めて…」なんて言われ方をされることがありますが、それでは失敗すると思うんです。それよりも、皆、価値観の違う中で色々なものがあることが良いのであって、私も伊勢丹のスペースで何ができるのか、試行錯誤していきたいと思います。

――一般にも日本への意識が高まっていますが、寛斎さんは日本から見たクールジャパンと海外から見たクールジャパンは違うというようなことをおっしゃっていましたね。

私が通っている歯医者さんでは、治療台の脇にディスプレーがあって、色々な映像が見られるんですが、そこで先日サラ・ブライトマンさんを見て、なるほど、この人は世界で自分が一番美しいと思って、歌い、演じているな、と感じたんです。照明も構成も本人が一番きれいに見えるように作られている。これほど自分を褒め称えるクリエーターがいるのかと思いました。一方で、日本のチャンネルを見てみると、演出はおろか、彼女と同じコンテストに出ていたら、落選間違いなしというアーティストが堂々と歌っている。つまり、そういう意味で、海外とはえらい落差があるなあと感じます。

海外で評価が高いという日本の歌手が、パリで公演をしてどうだったなどという記事を目にすることがありますが、ファンの褒め言葉だけではなく、どのくらい動員したとか、その歌手を知っているフランス人がどのくらいいるかという情報で冷静に判断している人がどれくらいいるのでしょう。

日本にある良いものをどんどん海外へ出していこうという動きには賛成ですが、若い人に支持されるから、だけではなくて、よく吟味をして出していくことが必要だと思っています。

――寛斎さんご自身の今後の活動を伺えますか?

日本はこんなに良い国なんだというファンを諸外国につくる活動、日本はこんなに優秀なんだということを宣伝する活動を軸にしていこうと思っています。毎年、どこかの国でイベントをやってきましたが、今は少し意識が変わって、私自身は、来年から向こう3年間は「地獄の3年間を過ごす」と言っております。

――地獄の、というと?

苦しいと思う時ってありますよね。それは人から殴られるってわけでもなく、精神的に苦しいということですが、そうすると、その苦しいという感情をコントロールできれば、もっとチャレンジできたり行動できたりするわけです。苦しいというのは、自分の心が自分を縛り付けているんじゃないかなと思うんです。地獄の3年間というのは、私自身の心の持ち方を体質改善する期間、そうしないと今の時代に合っていかないようだと感じています。

英語に関しては、ベルリッツに通ってずいぶん上達したと褒められますが、私はパソコンが全然できないんです。映画を観るのも、昔ながらに新聞で映画館の情報を見て電話をして聞くような有様です。優秀なスタッフが支えてくれているからですが、1人になると手も足も出ません。ですが、いつまでもお世話になっているわけにもいきませんから、自分でもちゃんとできるようにしていこうと。大したことじゃありませんが、来年からは相当訓練を重ねることになると思います。1年後にはタブレットなんかをいじってインタビューを受けるようになっているかもしれませんよ(笑)。スタッフの機械を見て「型、古いよね」なんて言ったりして(笑)。

――体質改善ということですね(笑)。そうした鍛錬をしながら、どのような活動をされるのでしょう?

現代の日本人には婆娑羅感覚の人が少ないんじゃないかと思っていたら、ある方が「それは誤解です。着ているものこそスーツに変わったけれど、今の日本には相当な婆娑羅な人達がいます。横のつながりと連携を取ることを考えてみたらどうですか?」というアドバイスをもらったんです。

ですので、有名、無名にかかわらず、そういう人たちと出会いを求めて街に出て行こうと思っています。

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飯塚りえ
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