【COLUMN】ビブリア古書堂ドラマ化に見る、ファッショナブルに逆襲する紙の本達

2013.01.13

1月14日からフジテレビ系列にてドラマ「ビブリア古書堂の事件手帖」が放映される。同放送局のドラマ看板枠、いわゆる「月9」での制作だ。ヒロインである女古書店主、栞子を務めるのは剛力彩芽

三上延の原作はシリーズ累計340万部を突破したメディアワークス文庫の同名のライトミステリノベル。ドラマ制作が発表されてから、このキャスティングについてかなり話題を呼んだ。非難ツイートを行った声優のタイムラインが炎上。他にもプロサッカー選手内田篤人がゲスト出演するなど、公開前から多く話題を提供している。

原作のイメージに忠実に従うとすれば、主人公は綾瀬はるかが妥当なところか。黒髪ロングの髪型、ほっそり体型の巨乳、メガネっ娘(こ)の引っ込み思案な雰囲気。残念ながら、今年はNHK大河ドラマ「八重の」で新島襄の妻である。

さて、この「ビブリア」をはじめ、「」にまつわる話題が再びにぎやかだ。電子書籍界では、“元年”といわれた2010年から既に3年も経ったが、昨年11月に本命であるアマゾンの端末「キンドル(Kindle)」が日本上陸。やっと本格的な電子書籍マーケットが形成されつつある。

現状、新刊書籍の売り上げは依然として落ち込み、2012年11月までの出版販売額は前年比3.3%減。12月には中堅出版社が倒産し、準大手取次も希望退職を募っているという話が出版界で話題になった。書店は年間1,000店消えている。業界3者一様に厳しい時代だ。

出版不況には違いないが、それを盛り返すように「本に触れる=カッコいい、美しい」というベクトルも目に付く。本にそれ自体の内容以外の付加価値を与えているかのようだ。

今月号の雑誌「HUGE」の特集は「GO! BOOK STORE(本屋へ行こう!)」である。インテリアに凝った本屋も増加中で、「代官山 蔦屋書店」を初めとし、嶋浩一郎氏と内沼晋太郎氏がかかわっている下北沢の「B&B」、セレクトショップ「1LDK青山アネックス」とつながった江口宏志氏率いる「ユトレヒト」、アンダーグラウンドシーンで息づく中野の「オメガアルゲア」などなど、どれもオシャレな書店だ。書棚は趣があり、セレクトもユニーク。本がファッショングルメなどと共存している。

若い店主のアート系古書店も増えた。古本のメッカである神保町のファッション系雑誌を主に扱う古書店「マグニフ」やコム デ ギャルソンの古いカタログなども扱う渋谷の「東塔堂」の他、サブカルの中枢である高円寺にも続々との古本屋が開店している。東京都現代美術館へと続く通りにもアート・ファッション書籍を扱う古本屋がオープンしていた。

この読書ファッション化計画の女子向け最終兵がドラマのビブリアであろう。メガネ巨乳美人という萌え的原作キャラを、剛力を用いることで溌剌とした印象に。読書好きな美しい女性像から「本を読む=美しい」というイメージを発信し、視聴者を本に触れることへとつなげる。ストーリー内で扱われる本も電子書籍では読めない絶版ものが多く、玄人受けする点も見逃せない。

果たして、ビブリアの栞子は出版界のジャンヌ・ダルクとなるのか。少なくとも人々が紙の本や古本に触れる機会は増えるだろう。ちょっと読書行為が表面的になっているきらいを感じがしなくもないが、一書痴としてはそれよりも多くの人に本に触れてほしいと思う気持ちの方が優先する。ちなみに私はテレビを持っていないので見られないのですが。
エビゾー
  • 「ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~」メディアワークス文庫刊。初版帯付き也
  • 丸ノ内線新宿駅通路に設けられたビブリアの番組広告
  • ホログラフィックによるプロモーションが設けられ、空間に剛力彩芽が現れる
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