「ブランドらしさ」は、どこから生まれるのでしょうか。象徴的なロゴや色、ひと目でそれと分かるシルエット。あるいは、長い歴史のなかで生み出されてきた名作。それらもブランドを形づくるものです。しかし、もっと個人的で、言葉では説明しきれない「好き」の積み重ねが、そのブランドらしさをつくっているとしたら。
Courtesy of Chloé
Chloé(クロエ)のSummer 2027「THE OBSESSION COLLECTION」で、クリエイティブ・ディレクターのシェミナ・カマリ(Chemena Kamali)が向き合ったのは、自分自身がChloéに対して抱き続けてきた“オブセッション”です。
「このコレクションもまた、純粋に本能から始まりました」とカマリは語ります。何に惹かれ、何を愛し、そこからどんな感情が生まれるのか。その極めてパーソナルな感覚へ立ち返ることが、今回のクリエーションの出発点となりました。
Chloéと聞いて思い浮かべるものがあります。軽やかなドレス。繊細なレースや刺繍。肌をのぞかせる柔らかな服。ロマンティックで、どこか自由な女性像。しかし、それらを繰り返すだけなら、「Chloéらしさ」はいつしか決められた型になってしまいます。
カマリが探求したかったのは、「クロエのアーキタイプであって、ステレオタイプではありません」。
Courtesy of Chloé
その手掛かりのひとつとなったのが、メゾン初期の歴史に登場する“ローブ・ド・ジュンヌ・フィーユ(robes de jeunes filles/少女たちのドレス)”です。そこに使われていたブロダリー・アングレーズ(イギリス刺繍)の記憶から、19世紀のアーカイブに見られる糸細工を参照。最も軽やかなオーガンザから、張りと重量感のあるコットンまで、異なる素材へと展開しています。
Courtesy of Chloé
白い刺繍やレースは、確かに私たちが知っているChloéのロマンティシズムを思わせます。けれど、カマリが見つめているのは「Chloéならこうあるべき」という完成されたイメージではありません。そのイメージが生まれる以前にある、形や技法、そして感情へと遡っていきます。
カマリがもうひとつ強く惹かれたのが、1960年代に見られた立体的なフローラルエンブロイダリーです。クチュールにも匹敵するサヴォアフェールによって、奥行きやテクスチャー、複雑さをつくりながら、それでも服は軽やかで若々しい。カマリは、そこに「クロエならではのひとつの矛盾」を見ています。
Courtesy of Chloé
その矛盾は、Summer 2027のさまざまな場所に現れています。繊細なレースと大胆に開いたネックライン。ふわりと広がる白や淡いイエローのドレスと、身体を露わにする軽さ。あるいは、深く開いた黒いドレスが持つロマンティックな装飾性と力強さ。装飾的なのに軽い。ロマンティックなのに強い。肌を見せながらも、脆弱さだけには回収されない。
Courtesy of Chloé
シルエットも、ハートシェイプ、ボートネック、スクエアネック、Vネックといったネックラインから構築されました。メゾンの歴史を意識的に想起させるものと、カマリ自身が長く惹かれてきた形。その双方がひとつのコレクションのなかで重なっています。
“オブセッション”の対象は、ロマンティックなドレスだけではありません。カマリが挙げるもうひとつが、アウターウエアです。
1970年代のシルエットをベースに、フィッシャーマンズコートやケープ、サウウェスターハットから着想。そこに1950年代のレインウエアを思わせるスモーキーな透明のビニールを重ね、グラフィカルでシャープなシルエットへと変化させています。
Courtesy of Chloé
光沢を帯びた黒や半透明のアウターは、白いレースや刺繍のドレスとはまったく違う表情を見せます。けれど、それもまたカマリにとってのChloéです。
1972年のアーカイブに残るテーラードの“ノエル(Noel)”スーツについて、彼女は「いつまでも愛し続ける服」と語ります。そのスカラップエッジのタキシードを出発点に、メンズテーラリングを纏う女性という、Chloéのヘリテージに欠かせない姿も改めて見つめました。 そして、もうひとつのオブセッションがランジェリーです。
Courtesy of Chloé
繊細なランジェリーから切り取ったレースは、身体を縁取るロマンティックなハーネスへ。グラフィカルでありながら、ほとんど何も纏っていないような感覚を生み出します。
ドレス、アウター、テーラリング、ランジェリー。
カテゴリーも年代も異なるこれらを結びつけているのは、体系的な歴史ではなく、カマリ自身が何度でも惹かれてしまうという感情です。
アーカイブを見ることは、必ずしも過去を再現することではありません。なぜ、この服が忘れられないのか。なぜ、この刺繍に惹かれるのか。なぜ、このシルエットをもう一度見たいと思うのか。
Courtesy of Chloé
「THE OBSESSION COLLECTION」でカマリが辿っているのは、Chloéの歴史そのものというより、自分のなかに残り続けてきたChloéの記憶です。だからこそ、白いブロダリー・アングレーズも、黒いレインウエアも、メンズテーラリングも、ランジェリーも、ひとつの決められた「Chloéらしさ」へと均される必要はありません。それぞれ異なる表情を持ちながら、何度でも惹かれてしまう。
Courtesy of Chloé
ブランドらしさとは、ひとつの完成されたスタイルではなく、そうした「好き」が長い時間をかけて積み重なったものなのかもしれません。カマリは今回のコレクションについて、「クロエへの愛に導かれました」と記しています。そして、その言葉をこう結びます。
Forever Chloé.
Love,
Chemena
何度でも愛してしまうもの。そのオブセッションの先に、Chloéの心と魂があります。
シェミナ・カマリ(Chemena Kamali) | Courtesy of Chloé
Courtesy of ChloéChloé(クロエ)のSummer 2027「THE OBSESSION COLLECTION」で、クリエイティブ・ディレクターのシェミナ・カマリ(Chemena Kamali)が向き合ったのは、自分自身がChloéに対して抱き続けてきた“オブセッション”です。
「このコレクションもまた、純粋に本能から始まりました」とカマリは語ります。何に惹かれ、何を愛し、そこからどんな感情が生まれるのか。その極めてパーソナルな感覚へ立ち返ることが、今回のクリエーションの出発点となりました。
「アーキタイプ」であって、「ステレオタイプ」ではない
Chloéと聞いて思い浮かべるものがあります。軽やかなドレス。繊細なレースや刺繍。肌をのぞかせる柔らかな服。ロマンティックで、どこか自由な女性像。しかし、それらを繰り返すだけなら、「Chloéらしさ」はいつしか決められた型になってしまいます。
カマリが探求したかったのは、「クロエのアーキタイプであって、ステレオタイプではありません」。
Courtesy of Chloéその手掛かりのひとつとなったのが、メゾン初期の歴史に登場する“ローブ・ド・ジュンヌ・フィーユ(robes de jeunes filles/少女たちのドレス)”です。そこに使われていたブロダリー・アングレーズ(イギリス刺繍)の記憶から、19世紀のアーカイブに見られる糸細工を参照。最も軽やかなオーガンザから、張りと重量感のあるコットンまで、異なる素材へと展開しています。
Courtesy of Chloé白い刺繍やレースは、確かに私たちが知っているChloéのロマンティシズムを思わせます。けれど、カマリが見つめているのは「Chloéならこうあるべき」という完成されたイメージではありません。そのイメージが生まれる以前にある、形や技法、そして感情へと遡っていきます。
複雑なのに軽やか。それもChloéという矛盾
カマリがもうひとつ強く惹かれたのが、1960年代に見られた立体的なフローラルエンブロイダリーです。クチュールにも匹敵するサヴォアフェールによって、奥行きやテクスチャー、複雑さをつくりながら、それでも服は軽やかで若々しい。カマリは、そこに「クロエならではのひとつの矛盾」を見ています。
Courtesy of Chloéその矛盾は、Summer 2027のさまざまな場所に現れています。繊細なレースと大胆に開いたネックライン。ふわりと広がる白や淡いイエローのドレスと、身体を露わにする軽さ。あるいは、深く開いた黒いドレスが持つロマンティックな装飾性と力強さ。装飾的なのに軽い。ロマンティックなのに強い。肌を見せながらも、脆弱さだけには回収されない。
Courtesy of Chloéシルエットも、ハートシェイプ、ボートネック、スクエアネック、Vネックといったネックラインから構築されました。メゾンの歴史を意識的に想起させるものと、カマリ自身が長く惹かれてきた形。その双方がひとつのコレクションのなかで重なっています。
雨を防ぐ服も、ランジェリーも
“オブセッション”の対象は、ロマンティックなドレスだけではありません。カマリが挙げるもうひとつが、アウターウエアです。
1970年代のシルエットをベースに、フィッシャーマンズコートやケープ、サウウェスターハットから着想。そこに1950年代のレインウエアを思わせるスモーキーな透明のビニールを重ね、グラフィカルでシャープなシルエットへと変化させています。
Courtesy of Chloé光沢を帯びた黒や半透明のアウターは、白いレースや刺繍のドレスとはまったく違う表情を見せます。けれど、それもまたカマリにとってのChloéです。
1972年のアーカイブに残るテーラードの“ノエル(Noel)”スーツについて、彼女は「いつまでも愛し続ける服」と語ります。そのスカラップエッジのタキシードを出発点に、メンズテーラリングを纏う女性という、Chloéのヘリテージに欠かせない姿も改めて見つめました。 そして、もうひとつのオブセッションがランジェリーです。
Courtesy of Chloé繊細なランジェリーから切り取ったレースは、身体を縁取るロマンティックなハーネスへ。グラフィカルでありながら、ほとんど何も纏っていないような感覚を生み出します。
ドレス、アウター、テーラリング、ランジェリー。
カテゴリーも年代も異なるこれらを結びつけているのは、体系的な歴史ではなく、カマリ自身が何度でも惹かれてしまうという感情です。
「好き」を掘り下げると、メゾンの本質に辿り着く
アーカイブを見ることは、必ずしも過去を再現することではありません。なぜ、この服が忘れられないのか。なぜ、この刺繍に惹かれるのか。なぜ、このシルエットをもう一度見たいと思うのか。
Courtesy of Chloé「THE OBSESSION COLLECTION」でカマリが辿っているのは、Chloéの歴史そのものというより、自分のなかに残り続けてきたChloéの記憶です。だからこそ、白いブロダリー・アングレーズも、黒いレインウエアも、メンズテーラリングも、ランジェリーも、ひとつの決められた「Chloéらしさ」へと均される必要はありません。それぞれ異なる表情を持ちながら、何度でも惹かれてしまう。
Courtesy of Chloéブランドらしさとは、ひとつの完成されたスタイルではなく、そうした「好き」が長い時間をかけて積み重なったものなのかもしれません。カマリは今回のコレクションについて、「クロエへの愛に導かれました」と記しています。そして、その言葉をこう結びます。
Forever Chloé.
Love,
Chemena
何度でも愛してしまうもの。そのオブセッションの先に、Chloéの心と魂があります。
シェミナ・カマリ(Chemena Kamali) | Courtesy of Chloé



































































