銀座メゾンエルメスでの展示で注目されるフランス人写真家シャルル・フレジェ作品集【NADiffオススメBOOK】

2016.03.03

各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。毎週木曜日は、アート・ブックショップ「NADiffナディッフ)」各店がオススメする1冊をご紹介。今回は東京銀座のNADiff du Champ(ナディッフ デュ シャン)です。

■『WILDER MANN 欧州の獣人―仮装する原始の名残』シャルル・フレジェ

現在、銀座メゾンエルメス恵比寿ギャラリーMEMで展覧会が開催され注目を集めるフランス写真家、シャルル・フレジェ。

フレジェが過去に出版した写真集『EMPIRE』では、騎兵隊の肖像を写すことから、そこに根付いた秩序のあり方や権力構造を抽出し、『BRETONNES』では、レースを身に着けた女性の肖像写真から、ブルゴーニュに今も残る伝統を繊細に写し出した。そして今回紹介する『WILDER MANN』で被写体となるのは、欧州の祝祭や儀式に古くから見られる、動物や悪魔に扮する人びと「WILDER MANN」である。

人間は、どんなに原始的な集団であっても社会秩序を持っているが、その反面、厄災や、心の中の悪や欲望など、理性だけでは説明のつかない面も当然ながら多く抱えている。だからこそ、獣や悪魔といった、暴力的に、理不尽に秩序を崩壊させる非日常的な存在は、人間が理性と能、または秩序と自然に折り合いをつけるためにかつてから必要とされてきたのだった。本書をめくれば、こうした側面が決して欧州の「WILDER MANN」だけに象徴されるものではないということがわかるだろう。彼らの肖像のうち多くが、鬼や獅子舞、なまはげなど、私たち日本人にとっても馴染みのある存在と良く似ている。

そうした人間と「WILDER MANN」的存在の普遍的な関係性への気づきの一方で、シャルルの肖像写真は、それぞれのキャラクターや装束の固有性をじっくりと注視する体験を可能にした。まさしく、本書のユニークさは、本来ならばそうした祝祭や儀式でしか存在し得ない生き物たちを、そのカオスから取り出したことにある。静止し、美しい構図によって切り取られた彼らは、恐ろしくもありながら、どこか滑稽で、キュートで、あまりにも個性豊かである。各キャラクターの意味、役割、由来、装束の特徴などが詳しく記された、巻末の解説ページまで必読の一冊だ。

現在、ナディッフ デュシャンではシャルル・フレジェ ブックフェアを5月15日まで開催中。『WILDER MANN』『BRETONNES』など、シャルル・フレジェの写真集に加え、世界の土着的文化、民俗学、民俗衣装などにまつわる書籍をそろえている。また、『WILDER MANN』から6種類、『BRETONNES』と『EMPIRE』から1種類、計8種類のオリジナルポストカードも販売中。

※『WILDER MANN』は日独共同出版の書籍で、ナディッフ デュシャンでは独・日の2種類の書籍を取り扱う。日本語版は現在版元品切れ中につき、予約を受け付け中。(7月下旬に重版予定)

【書籍情報】
ドイツ語版『WILDER MANN』
写真:シャルル・フレジェ
発行:Kehrer社
言語:ドイツ語
判型:ハードカバー/170×222mm
発刊:2012年3月
価格:5,100円

日本語版『WILDER MANN』
写真:シャルル・フレジェ
発行:青幻舎
言語:日本語
判型:ハードカバー/170×222mm
発刊:2013年11月
価格:3,800円
NADiff
  • 『WILDER MANN 欧州の獣人―仮装する原始の名残』シャルル・フレジェ
  • 『WILDER MANN 欧州の獣人―仮装する原始の名残』シャルル・フレジェ
  • 『WILDER MANN 欧州の獣人―仮装する原始の名残』シャルル・フレジェ
  • 『WILDER MANN 欧州の獣人―仮装する原始の名残』シャルル・フレジェ
ページトップへ