花の生き死に向き合う事。世界へ広がる、東信の“殺して生かす”フラワーアート

2015.05.16

を愛でるということを、人を愛することに置き換えてみれば東信の信念の一端が見えるかもしれない。

流行に流されないスタンスで“花の価値”を突き詰めている東信。狂気に近しいほど神経を研ぎすませ、花と真摯に向き合うには理由がある。「『美』とは何か。花は枯れるものだが、咲く時だけが当に美しいのか? 一般の人の目に商品として触れる花は、人の欲望の為に生産されるものの内の2割にしか過ぎない事を、どれだけの人が知っているだろう? 人が必要としていない部分も含めて、花の全部が美しい」。世の中に蔓延する盲目的な既成概念を覆し、花の価値を高める挑戦は、創業当初から変わらず続いている。

最新プロジェクトの「In Broom」では、宇宙空間に続き、フィリピンの海の真ん中といった本来、植物が生息しない場所に花を生けた。「次もむちゃくちゃやるよ。不毛の土地には理由がある。それを追い求めたい」という言葉通り、彼の活動は常に驚きに満ちている。それは新宿伊勢丹のフラワー オブ ロマンス(FLOWER OF ROMANCE)でも同じ事。「今まで全く花に興味がなかった人に『こんなに花って綺麗だったのか』という気づきや、(フラワー オブ ロマンスの)花をもらった人に『これが花なのか?』という純粋な驚きをもたらしたい」と話すのは、当店の全てを任されている望月マネージャー。東は「花の価値を追求するのも良いけど、広げないか」という望月の言葉に突き動かされ、「お前が言うんだったらやろう」と踏み切った。

「花を買いづらい」という声にフォーカスを当てたという今回の出店。「俺たちは一年に何万本という花を切って殺している訳だから、生き物を扱っていく上での責任がある。花の本当の意味を暮らしの中で感じてもらう、それが花を生ける意味。ファッションシャンパンにはできないことだと思っている」。その切実な想いが形になったのがフラワー オブ ロマンスだ。「花と向き合って行く姿勢を貫き、真摯にコツコツとやっていくまでだ。“花の価値”を突き詰め、それを広げるには、世界一でないと意味がない」と力強く言い切る。

事実、世界からの熱い視線が東信に注がれているのは、メディアにひっきりなしに取り上げられている事からも分かるだろう。この1、2年だけを例に挙げても、Thames & Hudson社の書籍『FLORAL CONTEMPORARY: The Renaissance in Flower Design』、仏ル モンド紙の『Mマガジン』、『New York times』、『Huffington Post』などで彼の作品や「In Broom」のプロジェクトが報道・特集されている。

「正直、日本のお花のレベルは高い。だが、問題は花をどう解釈し、どう広げていくか。我々は植物に生かされている。それこそが花の価値。世界で勝負する時もそのままの姿勢を変えず、自然体のまま、強く、逞しくやっていくので見ていて欲しい」。

世界の舞台での活躍は、前述のファッション界の一流メゾンをはじめ、グローバル企業や他ジャンルのアーティストとの取り組みなど多岐に渡るが、彼が最も注力している“花の価値を広げる”為の活動においても、新宿伊勢丹への出店はまだ彼にとって出発点だ。香港上海、NYなど世界の重要都市でのポップアップなどが計画されているという。人生に花がある本当の意味を、世界中の多くの人々が彼の店で感じることができる日もそう遠くない。
RIEKO.M
  • フィリピンの海に植物を生けた「In Broom」最新作
  • フィリピンの海に植物を生けた「In Broom」最新作
  • 「ICED FLOWERS」
  • 新宿伊勢丹のフラワー オブ ロマンス
  • フラワー オブ ロマンスの商品はAMKKのスタッフの手によって作られる
  • フラワー オブ ロマンスの商品はAMKKのスタッフの手によって作られる
  • フラワー オブ ロマンスのメニュー票
ページトップへ