アーティスト・田中麻記子と森岡書店店主・森岡督行の展示と本と恋のお話【INTERVIEW】

開催日:2018.08.03-09.16
2018.08.24

花椿の連載や、FASHION HEADLINEで占いイラストを手掛けるパリ在住のアーティスト田中麻記子さん。8月3日に発売された『Vu Vu』の新刊を記念して、「森岡書店」、「ナディッフ ギャラリーNADiff Gallery)」、「シス書店」の3会場で新作展覧会を開催中。

FASHIOHN HEADLINEでは、田中麻記子さんと展示会場にもなっている「一冊のだけを売る本屋」森岡書店の森岡督行氏をお迎えし、展覧会についての話を聞きました。



---森岡書店での展示について---




FASHION HEADLINE(以下、FH):森岡書店で開催中の展示について、見どころを教えてください。

田中麻記子(以下、麻記子):1冊の本を売るお店なので、どうやって構成しようかなって考えてたんですけど、ナディッフでも同時に展覧会を開催中なので全く違うものにしようかなっと思っていて。ナディッフは、海辺のインスタレーションをしているので、森岡書店では銀座も近いし資生堂の花椿のアニメーションをゆっくり見ていただきながら、そのアニメーションのアイデアスケッチと可愛いイラストの新作を展示してます。

FH:
お二人は前からお知り合いだったのですか?

森岡書店店主・森岡督行さん(以下、森岡):いいえ、HeHe編集者の中村水絵さんが紹介してくださいました。でも、紹介いただく前に街で偶然会ったんです! 

麻記子:そう! 普段全く行かない赤坂見附で! 

森岡:私もあんまり行きません。(笑)

FH:えっ、ちなみに何をしに赤坂見附まで行かれてたんですか? 

麻記子:日本によく帰るので、携帯を買いに行ってその後散歩をしてたんです。そしたら前の方から森岡さんが歩いてこられて、そのままご挨拶したんです。

森岡:そうそう、「夏の展示よろしくお願いします」って。何万分の1の確率ですよね! びっくりしました。

麻記子:本当に! しかもあまり行かない赤坂見附で!

森岡:あれはすごいタイミングでしたねー、すごく嬉しかったです。

FH:まきこさんは、森岡さんのことをご存知だったのですか? 

麻記子:もちろんです。知り合いもよく森岡書店で展示をされてたりするので。

FH:森岡書店での展示構成は、森岡さんと話をして決めるのですか?

森岡:私の関わり方って展覧会ごとに毎回違うのですが、今回はほとんど麻記子さんが決めてくださったと思ってます。事前に2回くらい麻記子さんが来てくれて、ある程度展示内容をまとめてくださったんです。素材は麻記子さんが決めて、レイアウトは私が決めて。

FH:森岡さんは初めて田中さんの作品を見た時いかがでしたか? 

森岡:前に資生堂の仕事をやらせてもらっていたので、花椿編集部の方からよく話を聞いてました。麻記子さんの食べ物の絵が好きで、最近工芸の仕事が多いから、食器カトラリーが描かれていたりするとすごく親近感が湧いてきて。でも、今回の展示とトークイベントをしてから、作品に「恋」を感じてイメージが変わったなーって思いました。



---「恋」について---


田中麻記子さんと森岡督行さん

FH:恋してますか? 

麻記子:恋は重要です! 

森岡:恋はいいですね〜、いいなぁ〜

麻記子:色々な大きさの恋があると思うんだけど、多分そういう意味では森岡さんも恋してるんじゃないんですかね?  

森岡:恋ね...

FH:まきこさんにとっての恋って…? 

田中:いつでも恋の気持ちってなんか楽しいし、エネルギーになるし、泥沼化しなければすごくポジティブなパワーになるからすごく大切だと思う。生きてて楽しくなるし。今回の展示コンセプトは、海を隔てた異国に住んでるからこそ、七夕みたいに1年に1回しか会えない距離感の方がうまく行ったりもするよね...みたいな恋の切なさを表現していて。




麻記子:この作品(右)は眠れない夜に、窓から飛行機が見えてアレに乗ったら会えるのかなって想いながら、携帯とかいじったりしているシーン。そして今回のキーワードとなる海をベットに描いています。

森岡:そうなんです、全ての作品に水面が入っているんですよ〜! 




麻記子:この作品(右)は、「私は、ずっとwifiエリアにいつでもいるわ、雷の日でも...」というタイトルで、実は友達がモデルなんです(笑)。既婚者の方に恋をしていて、自分から連絡ができないから、終電まで駅の近くのwifiが繋がるカフェであなたの連絡を待ってるという...

森岡:いいですね〜。

FH:せつなーーい!

森岡:そういえば、昔そういう歌ありましたよね。こばやし、小林…小林明子さん! 

麻記子:あー! 「ダイヤル、回して手をとめた〜♪」(歌う麻記子さん)

森岡:そうそう! そのダイヤルがwifiになった現代バージョンみたいなかんじ。でも心境は今も昔も同じですよね。あの歌いいですよね。



---花椿のGIF動画のこと---






麻記子:ストーリーを60枚くらいの小さな紙に描いて10秒にまとめるんですけど、その短い中で起承転結を表現しないとだから、一度紙にアイデアスケッチを描いてから構成してるんです。

FH:実は、私の姪っ子も麻記子さんのGIF動画が大好きなんです。

麻記子:嬉しい! 実は、アリックスちゃんていうフランスの友達の子供に一番最初に見せて、彼女が笑ったらOKっていう最初の関門にしてます。(笑) 子供でもわかりやすく、でもギリギリセクシーさを入れて。毎月昼休みにクスっと笑ってもらえるようなシンプルさを大切なポイントにしています。

森岡:なるほど〜



---『Vu Vu』について---




FH:今回発売した『Vu Vu』には、どんな意味が込められているのですか?

麻記子:『Vu Vu』(ヴュ ヴュ)は造語なんです。フランス語のdéjà vuの“vu”からとっていて、“vu”は過去形で「見た」という意味があるので、街とか建物とかフランスの風景とかをずっと見てきてインスピレーションを得たデッサンを中心に構成しています。特に意味があるとかではなく、響きで『Vu Vu』としました。

FH:麻記子さんの絵の表現はすごく多様ですよね、描き分けてたりするんですか? 

麻記子:もともとモノクロームだけのダークな世界の細かい表現と、真逆のサイケデリックな大きな油絵の2つを描いていたんです。ずっと黒白で描いてたら頭の中でカラーが浮き上がってきて、カラーに溺れそうになったら黒白の世界に戻ってという繰り返しでした。その途中で、フランスに行くことが決まり、自由に絵を描くようになって、好きな食べ物とか音楽とか、幻想の世界じゃなくて、現実に自分が好きなものをシンプルに描くということを久しぶりにやって、すごくそれが楽しかった。それを描き続けて誕生したのが1冊目の食べ物コレクションの本『La collection gastronomique(ラ・コレクション・ガストロノミーク)』でした。それから、イラストレーションの依頼が増えていったんです。

実は、ピエール・エルメ・パリマカロンのイラストレーションを担当した時に、初めて点と線で描いた簡素な女の子のキャラクターが生まれたんです。それはそれでひとつのスタイルになっていきましたね。



FH:ピエール・エルメ・パリさんがきっかけで、かわいい彼女たちが誕生したんですねー。
これからも、さまざまな作品楽しみにしていますね! 





【展覧会情報】
田中麻記子の新作展覧会「Vu Vu」

■森岡書店
会期:8月26日まで
住所:東京都中央区銀座1丁目28−15 鈴木ビル
イベント情報:「田中麻記子に聞く100のこと」PARTⅡ
8月26日 18:30〜、参加費1,000円、15名限定

■NADiff Gallery
会期:8月3日~9月9日
住所:東京都渋谷区恵比寿1丁目18-4 1F
イベント情報:「Vu Vu演奏会」
・9月1日 14:00〜岩見継吾・岩間由右子、15:00〜松倉如子、エントランスフリー
・9月2日 晴ツ(横手ありさ、たけてつたろう、荒井康太)、エトランスフリー

■シス書店 第63回企画~「Étoile」 展
会期:8月18日~9月16日
住所:東京都渋谷区恵比寿南1-12-2 南ビル3F

★9月17日から、パリのGalerie da endのグループ展に参加

【書籍情報】
田中麻記子『Vu Vu』
発売日:2018年8月3日
出版社:HeHe / ヒヒ
A4判 72ページ 仮フランス装


編集部
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