スーツのボーダーをポップに破壊するコム デ ギャルソン・オム プリュス【2019春夏メンズ】

2018.07.10

川久保玲によるコム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)が2019年春夏コレクションを6月23日、パリファッションウィークで発表した。

残念ながら、今回シートは得られずショーはスタンディング。2重のスタンディングの後ろから最初に見えたのは、モデルの髪型。黒のジャケットにモデルの頭頂部はグレイス・ジョーンズ(Grace Jones)のようなフラットのリーゼント。白人なら80年代キース・ヘリング(Keith Haring)やケニー・シャーフ(Kenny Scharf)と良くつるんでいた、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)回りで良く紹介されていたパフォーマーのジョン・セックス。懐かしい80年代のNYアートシーンを回想していると、ショーが進むうちにそれがソフビ人形のようなウィッグ、かぶりものであることに気付かされる。

マルチカラーボーダーのスーツはシャーリングが施され、サテンのピンクシャツ、グリーンのタイ、フラットヘッドではないが、ポマードで固めたウェービーなヘア。まるでダギー・フィールズ(DUGGIE FIELDS)、日では資生堂のパーキージーンで覚えている方もいるかもしれない英国イラストレーターだ。

柄やカラフルなボーダーにボウタイ、ショートパンツルックはピーウィー・ハーマン(Pee-Wee Herman)でお馴染みのポール・ルーベンス(Paul Reubens)まで思い浮かべてしまう。日本の証券会社のCMにも起用されていた彼がセクシャルな話題で公から姿を消したことが、昨今の「me too」の問題提起につながるのか考えさせてしまうのが、コム デ ギャルソンというブランドの面白いところ。

ここまで挙げたさまざまな人物の共通点は、彼らがアバンギャルド。ヒップなアウトサイダーな表情をしていながら、パブリックイメージはスーツで登場していたことだ。今シーズンのテーマは「クレージースーツ」。カモフラ柄シフォンのパーツを重ねたスーツや。身頃、袖にシャーリングを施したエドワーディアンスタイルのロングジャケットや、メッシュのアスレチックシャツを解体し、ハイテク素材で再構築したアスレジャーへの解答とも取れるデザインなど、スーツという枠に固定しながら、現在のあらゆるファッションの要素をコラージュしている。

首にチェーンを巻き、ケージを背景にしたモデルたちがケージの中から出てきたのか。入ってきたのかは想像次第だ。


Text: Tatsuya Noda
野田達哉
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