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儚い逃避、『ヴァージン・スーサイズ』の音楽の世界【映画 Sounds! 】

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2018.03.25
FASHION HEADLINE読者に向けてオススメの映画サウンドトラックを紹介する企画「映画 Sounds! 」。第1回目は『ヴァージン・スーサイズ』をお届けします。



ソフィア・コッポラ(Sofia Coppola)の初監督作品は、ジェフリー・ユージェニデス(Jeffrey Eugenides)のベストセラー小説『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』を映画化したものである。舞台は1970年代のアメリカ郊外。13歳から17歳までのリスボン家の5人姉妹は金髪に白い肌でとても美しい。彼女たちの部屋には香水やアクセサリー、ぬいぐるみやお花などガーリーアイテムがいたるところに配置されている。厳しい母親の元、どこへ行くにも何をするにもいつも一緒。そんな姉妹を、近所の男の子たちの目線で見つめる物語。

思春期の男の子にとって、女の子は未知の生き物。何とか彼女たちの気持ちを理解しようと、末娘の日記を読んだり、望遠鏡で観察したり、彼女たちに関するものなら何でも集めて探偵気分。そんな彼らの次の手段は、電話越しにレコードを使ってメッセージを送ること。「もしもし、僕だよ。ずっと長い間、僕たちのことを考えていたんだ」(トッド・ラングレン「Hello It's Me」)。すると彼女たちの返事の電話からも曲が聴こえてくる。「つい昨日を思い返してみても、僕は元気で明るく陽気だった。……僕は本当に、いかにも当然、また独りぼっち」(ギルバート・オサリヴァン「Alone Again (Naturally)」)。こうしてレコードで会話することになる。「孤独な時はいつでも僕に助けを求めて。肩が必要なら僕のところへおいで」(ビージーズ「Run To Me」)。「とても遠く離れている。……扉からあなたの顔が見えたらどんなに素敵だろうか」(キャロル・キング「So Far Away」)。音楽が場面の雰囲気を高めるために使われるのではなく、実際に物語の中で言葉の代わりとして流されるという画期的で、感動的な場面。

この作品は、上記のような劇中で使われた既成曲をまとめたサウンドトラックと、フレンチ・エレクトロ・デュオのエールによって書き下ろされたオリジナル・サウンドトラックの2つがある。70年代の曲たちは、登場人物が聴くものとしてその時代の雰囲気を伝えてくれる。一方、籠の中に閉じ込められていた金髪の少女たちが自由に飛び跳ね、笑顔を輝かせている場面で流れるエールによる曲は、シンセによるドリーミーな浮遊感があって、思春期の瑞々しさや危うさ、つかみどころのない乙女心を感じさせてくれるものになっている。ラックス(キルスティン・ダンスト)が芝生の上で目覚めたような青みがかった朝や、キャンドルやイルミネーションを灯した暗い部屋に合いそう。


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