音楽の効果を再確認する『はじまりのうた』【映画 Sounds! 】

PROMOTION
2018.04.01
FASHION HEADLINE読者に向けてオススメの映画サウンドトラックを紹介する企画「映画 Sounds! 」。第2回目はジョン・カーニー(John Carney)監督作品『はじまりのうた』をお届けします。



シンガーソングライターのグレタ(キーラ・ナイトレイ)は、恋人のデイヴ(アダム・レヴィーン)と一緒にロンドンからニューヨークへやってきた。しかしデイヴは歌手活動で忙しく、すぐに離れ離れになってしまう。久しぶりに再会したら、デイヴの浮気が発覚。家を飛び出し、古くからの友人のスティーヴ(ジェームズ・コーデン)を頼るグレタ。スティーヴも音楽活動をしており、この日は彼のライヴがあったため、グレタも一緒に会場へ行き、スティーヴの無茶振りで1曲歌うことに。「都会で独りぼっちのあなたへ」と一声つぶやき、ギターを弾きながら歌うグレタ。それをたまたま聴いていた落ちぶれた音楽プロデューサーのダン(マーク・ラファロ)は、彼女の歌に可能性を感じ、アルバム製作を持ちかける。音楽プロデューサーとして自身が立ち上げたレーベルからも見限られたダンは、ニューヨークの街中で演奏し、それを録音してアルバムをつくることを思いつく。こうしてDIYのアルバムづくりが始まる。

恋人に付いてくるかたちで異国へやってきたグレタだけど、「男なしでは生きられない」みたいな女の子じゃなくて、初対面の怪しいプロデューサーの対応も賢くこなすところがかっこいい。「ウイスキーか水があるけど」っていうときに迷わず「ウイスキー」を選ぶところも好き。ダンに「トムボーイ」と言われる、いい感じに力の抜けたファッションにも親近感がわく。演じるキーラ・ナイトレイは1985年生まれのアラサー女子。2000年代後半に一時大騒ぎとなった音楽ジャンル「ニューレイブ」の名付け元であるクラクソンズのメンバーと結婚し、一児をもうけている。女優としてだけでなくこの世代の女性として注目したい存在。

アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされた劇中歌「Lost Stars」は、キーラ・ナイトレイ(Keira Knightley)が歌うグレタ・ヴァージョンとアダム・レヴィーン(Adam Levine)のデイヴ・ヴァージョンの2つが楽しめる。キーラ・ナイトレイの声は可憐で、繊細なアコースティックの雰囲気とよく合っている。アダム・レヴィーンはさすがマルーン5(Maroon 5)。スタジアムが似合う仕上がりで、サビの高音部分が最高だ。

ダンとグレタが「スプリッター」を使って一緒に音楽を聴きながら夜のニューヨークを歩き回った後、「音楽で平凡な風景が意味のあるものに変わる」というダンの言葉が印象的だった。私たちの生活には映画みたいにBGMが流れてこない。だけどイヤホンやヘッドフォンをして音楽を聴くと、自分だけのBGMがかかったような気分になれる。そんなときは歩き方もちょっと気取った風になったりして。音楽は日常生活を映画のワンシーンのようにできる力を持っているということを再確認した。


ci
ページトップへ