木曜日連載、アート・ブックショップ「NADiff（ナディッフ）」各店による今読むべき1冊。今週は、『片山正通的百科全書 Life is hard... Let's go shopping.』。東京・新宿の支店、ギャラリー5（新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー3階）によるご紹介です。



■『片山正通的百科全書 Life is hard... Let's go shopping.』

4月8日から6月25日まで東京オペラシティアートギャラリーで開催された、インテリアデザイナー片山正通のコレクションを大公開した展覧会「片山正通的百科全書展」の公式図録である。

現代アート作品をはじめ、本・CD・家具・剥製・ガラクタ…さまざまなジャンルから片山の審美眼によって選び抜かれた「好きなもの」が目白押しの同展覧会は盛況のうちに終了し、会場風景を掲載した本書が満を持しての刊行となった。

パンクロックとの出会いで「既成概念に蹴りを入れる」という価値基準が生まれた片山少年。以来、様々な物や事との出逢いの中で、その価値観を貫くために費やしたエネルギーと情熱、そしてお金は計り知れない。そんな、本人も認める買い物における「節操のなさ」が展覧会そして図録の隅々にまで表れている。「人生はしんどいが、買い物に行こう！」と本書を通して語りかけてくる潔さが痛快とさえ感じられる。

人気アートディレクター平林奈緒美による、百科事典に相応しい重厚で洗練されたブックデザインも必見。アートファンは思わず本棚に加えてみたくなる一冊である。