伝説のアーティスト、セルジュ・ルタンスを知っていますか?

2015.12.10

アーティスト、哲学者、人。その肩書きは多く、日本ではとりわけフレグランス ブランドの名前で広く知られるイメージ クリエーター、セルジュ・ルタンス(Serge Lutens)。

彼がメイクアップ界でキャリアをスタートさせたのは、1968年に発表された、ディオールのメイクアップライン。革新的なクリエーションで多くの人を圧倒した伝説のコレクションでルタンスはアーティスティック・ディレクターとして開発に従事する。その重責を経て、1980年より資生堂との深い関係はスタート。

両者の関係性が深まり行くなか、今から遡ること10年前の2005年。この年、東京銀座の「HOUSE OF SHISEIDO(ハウス オブ シセイドウ)」では「セルジュ・ルタンス…夢幻のの記録」展を開催。それに合わせて、来日したセルジュ・ルタンスと福原義春(資生堂名誉会長)の対談が実現された。企業資料館が発刊する『研究紀要おいでるみん Vol.19』に掲載されている対談の中から、その時の言葉を少しご紹介したい。

ふたりは出会った時の感動をこのように述べている。

当にふたりの人間がお互いに知り合いたいという意思で、非常に心の波が通った一瞬だったのを覚えています」(ルタンス)

「僕の方は興味津々じゃなくて、どこに行っても「色彩の神さまルタンス」「マキアージュの神さまルタンスさま」みたいな話。その人が目の前にいるなんて信じられなかったわけです」(福原名誉会長)

また、「(対談当時)実際にクリエーションを始めてから二十年ぐらいになるわけだけど、まずビジュアルの世界から始まって、それからすばらしい香水をつくって、そして今度はリュクスの極致みたいなメーキャップをつくって、僕たちの間の関係にはいろいろあってルタンスさんを苦しめたこともたくさんあったと思うんだけど、結局僕たちの関係というのは、世界に新しい一つの美の世界をつくれたのではないかしらと思うんですけどね」との福原会長の言葉からは、同社とセルジュ・ルタンスの関係がいかに深いものであったのかを推すことができるだろう。

そんなふたりを繋いだのは、ミューズとして資生堂の広告を数多く支え、今もなお色褪せることのない存在で在り続けるモデル山口小夜子だ。彼女はセルジュ・ルタンスが手がけた資生堂の広告ビジュアルにも度々登場する。

現在、セルジュ・ルタンスは自身の名を冠したブランドで2000年よりフレグランスを、2005年からはメイクアップラインも加えて手がける。それ以前には今はなき「インウイ」のイメージクリエーションも。35年に渡る資生堂における彼との軌跡は、静岡県掛川市の資生堂企業資料館でなぞることができる。

セルジュ・ルタンスには色々な顔がある。その希有な存在と独特の世界観で生み出される色もに魅力的なのはもちろんであるが、多くの人が今真っ先に想うルタンスは、少なくとも私にとってはやはり魔術師とも思えるほどの香りのクリエーターであろう。

そんな彼を象徴的する六角形でデザインされた「ノンブルノワール」は、生産を中止している現在もなお問い合わせがあるという伝説の香りだ。

資生堂企業資料館に隣接する資生堂アートハウスで開催中の「香水瓶の世紀」展(後期)では、「ノンブル ノワール」をはじめ、セルジュ・ルタンスが手がけたフレグランスボトルが並ぶ。展示の中でも目を引くのは、1990年代半ばにフランスで発表された、通称「グラベ」シリーズ。ガラス彫刻の施された美しいコレクションだ。年に一度、30個限定で作られる幻の作品がガラスケースに納められた28種の作品群は古き良き時代の香水瓶を見るかのような優美な佇まいだ。

その芸術品のような作品の中の一つ「ラヴィエルジュドゥフェール / 鉄の百合」(50ml、1万3,000円・11月21日より数量限定にて発売)の香りが角ボトルで発売中。ゆりや西洋ナシ、白檀の香りが溶けあう日本未発売のミステリアスな香り「ラヴィエルジュドゥフェール / 鉄の百合」にルタンスの美のクリエーションとスピリットを存分に感じ取ることができるだろう。

「鉄の教義は処女を、処女はユリを必要としていました。この苦しみから掩蔽壕のような小瓶へ格納します。そこには作者が入っているのです」(セルジュ・ルタンス)

かつて、ルタンスは香りについてこんな話を言っている。「例えば宝石をつくるとき、まずはきれいに見えそうな原石を拾ってきて、それをカットしてさまざまなアセットをつくることによって最大限に輝きを出せる。これと同じようなことが私の香水のつくり方で、何のことはない」(セルジュ・ルタンス)と。そして、「ラヴィエルジュドゥフェール / 鉄の百合」にどのような輝きを与えたのか--香りという五感を揺さぶるクリエーションから感じる歓びに触れたい。


<問い合わせ>
ザ・ギンザ
TEL:0120-500824

<information>
■資生堂企業資料館
静岡県掛川市下俣751-1
TEL:0537-23-6122
入場料:無料
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(ただし祝日・振替休日の場合は翌日)、夏季(8月中旬)、年末年始(12月末~1月初旬)、展示替えのための臨時休館(開館スケジュールはホームページまたはお問い合わせ下さい)
http://www.shiseidogroup.jp/corporate-museum/

---資生堂企業資料館について
創業120周年を迎えた1992年に開設。館内には、長い歴史の中で生み出された商品や宣伝制作物をはじめとする様々な企業資料を一元的に収集・保存するアーカイブ施設と、収蔵品の一部を一般に展示公開しているミュージアムとがある。創業から今日までの企業の歩みや商品パッケージ、ポスター、新聞・雑誌広告、テレビCMなどの広告関連資料、資生堂と日本の化粧文化の関わりなどについて紹介している。

■資生堂アートハウス
TEL:0537-23-6122
入場料:無料
休館日:月曜日(月曜日が祝祭日の場合は翌日休館)
開館時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
http://www.shiseidogroup.jp/art-house/
渡部玲
  • 1996年に刊行されたルタンスの作品集「L'Esprit Serge Lutens: The Spirit of Beauty」より。
  • 1996年に刊行されたルタンスの作品集「L'Esprit Serge Lutens: The Spirit of Beauty」より。
  • 資生堂企業資料館の2階では、これまでのルタンスのクリエーションのアーカイブを楽しむことができる。
  • 1980-1999年に発表された「セルジュ・ルタンス」の広告の歴史は美の系譜。
  • ルタンス自身のブランド「セルジュ・ルタンス」を始め、「インウイ」、「資生堂 メーキャップ」など、クリエーターとしての資生堂での作品は数多。
  • 1982年(昭和57年)に発表された「ノンブル・ノワール」は、セルジュ・ルタンスをイメージクリエーターに起用して開発。「黒は、すべての色を集約した最高の色」というルタンスの想いから、黒一色で彩られたシックなパッケージで包んだ一本。極限まで削ぎ落としたシンプルでクールなその美しさは、今もなお再販を希望する声が多い。ルタンス自身がモデルを務めた広告ビジュアルは、必見!
  • 「女が、ひとつ、謎めく」に描いた美しいシンメトリーはルタンスの真骨頂。
  • 「インウイ」のCFのためにクリエートした作品=魚のピンブローチ
  • 幻のフレグランス「ノンブルノワール」。リップスティックやフレグランスのパッケージに採用されている、六角形はルタンスの微にわたった拘り。
  • 金で秋草を描いた漆黒長調のデザインがしみじみ美しい、1964年に発表の資生堂「Zen(禅)」。禅僧の黒袈裟を連想させる黒の磨りガラスのボトルを採用。
  • ルタンスのブティックのためだけに制作される「グラベ」は、1990年代半ばに発表された美しいガラス彫刻が施されたコレクション。資生堂アートハウスの企画展「香水瓶の世紀」では、その全28種を初めて展覧。釣鐘型のボトルを基調に金やプラチナ、エナメルを贅沢に用いた複雑な彫刻模様に職人技が光る。発表される度に新しい顔を見せてくれる。
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