ある意味2ちゃんねるのような--NOAVENUE小石祐介1/2【INTERVIEW】

2015.01.25

Facebook、twitter、instagramなど、世界中の人々の日常に入り込んだSNSがある一方、数多くのSNSが生まれては消えていく時代。そんな背景の中2014年10月、「ノーアべニュー(NOAVENUE)」はローンチした。コム デ ギャルソンCOMME des GARCONS)の企画運営を経て独立した代表の小石祐介氏に、同サービスの展望とファッションの未来への考えを聞いた。

ノーアベニューとはユーザー自身がクリエーティブなアイデアを提案するオンライン上のプラットフォーム。アイデアに共感する人を募り、人が集まったアイデアは具現化に向け次のステージに進む。小石氏はtumblrを始めとするソーシャルメディアを活用する中で、数々の無名のユーザーが持つ編集力の力に驚嘆し、「そういった人達がより創造力を発揮できる居場所を作ることができないか」と思ったという。マイノリティーの集合知が企業や組織にない発信力や創造力を秘めていると見ている。

「今、世の中で実現したアイデアの多くが数年前には会議室、カフェ、バーあるいはストリートで既に話されていたものだったと思います。そして話されなかったものや、人間の性質上躊躇や迷いなどで頭の中から出てこなかったものには知る由がありません。中には面白いものもあったかもしれない。殆ど多くのものが実際の“場”に出てこないのであれば、それらをリアルな世界で実験的に出す場があったらどうなるのかを見てみたいと感じました」と小石氏。そして「ある意味、2ちゃんねるのような」と笑う。刺激とリアクションを誘発するような場所をイメージしている。

今後、ファッション業界にある風潮に風穴を開けるようなプラットフォームになり得るのだろうか。

■ファッションの“様相”

――テクノロジーの変化はファッションに何を与えたのでしょうか

一般的には、新しいツールが生まれたという程度にしか認識されていないのかもしれませんが、ずいぶん大きな変化があったと思います。テクノロジーというとコンピューターや人工知能をはじめ、「人間的ではない何か」というイメージにたどり着きがちですが、そもそもコンピューター「Intelligence Amplifier(知性の増幅)」という側面があります。そういう観点で見ると、例えば100年前は、ミシンがファッションの世界においてテクノロジーと言えました。ミシンの誕生によって、Sサイズ展開で大量生産をする考えが普及し、誰でもスーツが着られるようになったり、当時のクリエーターの知的好奇心を大いに刺激して社会の可能性が拡がったはずです。近年のテクノロジーの変化はミシンが生まれた時のようにファッションの様相を変えたとも言え、ただのメディアやツール、販売の場以上の可能性があると思います。

――かつてのファッションと現代のファッションの違いは

ファンションが生き方や人の有り様を左右するコードに関わるという点では何も変化がないと思います。200年前は衣装は振る舞いがコード化されていて、明文化されていない社会や家の慣習に従うというのが大多数だったはずです。その慣習がコミュニティーを形成していたと思います。現在は混沌としているとは思いますが、今度10年、もしかすると5年程度でビッグデータやディープラーニングの解析がかなりの精度になってくると、人間が自分自身で考える領域が減り、機械的なリコメンデーションやその時に表示されたルールに従うのが当たり前になるかもしれません。そのようになれば、昔と同じように自分の頭で考えられる人がシステムの欠陥を見つけて何か新しいことを創造する可能性も増えてくるでしょうね。

――とすると、ファッションの未来は、どう変化していくのでしょうか

「自然は変化を嫌う」という言葉があります。極端な変化が続くと、その後には反動があって振り戻される現象です。物が作れるのが当たり前になると作らない行為が注目を浴びたり、マーケットに極端にセンシティブな世界になれば、予測される状況を逆手にとって情報をハックする人がスターダムにのし上がっていく。大資に関して言えば、ここ数年のファッションはM&Aのゲームになっている風潮があります。物を売ることでより有名になって、会社を売ることを考える動きが増えている。シリコンバレー的な考えですが、物が豊穣である現在の反動かもしれません。今後もラグジュアリーの大資本は新しい才能に投資をし、回収し続けて立ち位置を維持するでしょうし、そしてナイキユニクロのようにマスプロダクションや協力なR&Dを実行する資本がある企業は、今後も投資を続けて新しい境地を導き出していくことでしょう。そのうち業界の外の伏兵もあるかもしれませんね。ただそれも続くと、揺り戻しが訪れるのだと思います。純粋に良いものを作るという職人的行為、コンセプチュアルな活動が貴重になり特権的な形で注目を浴びるような流れなどが出てくるかもしれませんね。

――ノーアベニューには、マーケティングツールとしての利用価値もあると

世の中がデジタルな判断基準のみで動きがちになると、世界がグリッド化し、グリッドの「交点」にあるものだけが目立つようになってきます。そのグリッドの枠から外れた微妙なものは、存在する前に淘汰されてしまうと思うのです。ノーアベニューはその中にある「なかなかありえなさそうだけど、もし形になったら面白いこと」の投稿を促しデータを集めたり可能性を確かめ、記録し、実現に向けて動く場です。誰もが世界のあちこちにグリッドの補助線を引いて「交点」を作る場として利用してもらえればと考えています。

2/2に続く。
Shigematsu Yuka
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