“パールを変えた男”タクーンTASAKIクリエーティブディレクターに八つの質問【INTERVIEW】

2014.08.05

去る5月に東京で開かれた「タサキ(TASAKI)」創業60周年記念イベント来日した同ブランドのクリエーティブディレクター、タクーン・パニクガル(Thakoon Panichgul)にジュエリーにまつわる八つの質問を試みた。8月6日からは伊勢丹新宿店にて彼の最新コレクションがそろうイベントが行われる。

1.ジュエリーデザインはいつ学んだの?
タクーンは大学卒業後、雑誌編集からキャリアをスタートさせている。後にニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインでデザインを学び、NYを拠点に自身のブランドを発表している。

タクーン(以下T) : 特にジュエリーの勉強はしませんでした。トレーニングを受けなかったことがむしろ(TASAKIでの)成功の秘訣だったと思います。自由な発想でデザインできましたから。なまじ知識があるとそれに捕われてしまうから、私の場合は結果的には良かったのかもしれません。

始めた頃は、デザインを最初に考えていたので、技術的な問題がありました。最近は、デザイン面と技術面を同時に考えるようになってきました。

2.パールと出合った時の印象は?
TASAKIは60年前に神戸で養殖真珠加工販売業からスタートした。現在も長崎の九十九島とミャンマーに自社の養殖場を持ち、養殖、選別、加工、販売まで自社内で行っている。

T : パールに対する最初のイメージは純粋さでした。TASAKIと仕事を始める時、伝統的なパールのブランドだと聞いていましたから、自分の仕事はそれを若々しくよみがえらせることだと思いました。

それまでパールといえば冠婚葬祭のイメージが強かったけれど、日常的に使いたいと思える宝石になったと若い女性、プレスの方にも高い評価を得るようになりました。一緒に仕事をしているTASAKIの方から「パールのイメージを変えましたね!」と言われたのはとても嬉しかったですね。

3.ファッションとジュエリーの関係は?
タクーンはニューヨークコレクションで自身のブランドを発表している。そこにはTASAKIのジュエリーも登場する。

T : ファッションとジュエリーは基的に同じマインドで仕事をしています。違うのは素材の解釈が違うところです。ファッションの場合は,生地を身体に掛けた時のドレープを見ていると、その服を着た女性のアティチュード(態度)が思い浮かびます。ジュエリーは的確に素材と技術を頭に思い浮かべることで、シェイプが完成していくのです。

4.どんな女性に着けて欲しい?
2009年、クリエーティブディレクターに就任したタクーンは、TASAKIに新風を送り込むべく、今を生きるモダンな女性のために大胆かつ繊細なデザインのジュエリーを発表している。

T : ジュエリーの着け方や解釈の仕方は、その人次第だと思っています。ガラパーティーでは思いっきりゴージャスなジュエリーを着けて欲しいし、パールをジーンズTシャツに組み合わせるのもいい。どちらかというと物事に捕われない自由な女性に着けてほしい。ジュエリーを大切に扱うより、毎日の日常生活でまるでユニフォームのように身に着けている女性が素敵だと思う、これこそラグジュアリーな発想ですね。

5.「バランス」はどのようにして生まれたの?
彼がバランスボールにインスパイアされ、パールを直線に並べたデザインの「バランス」は、TASAKIのアイコンといえるヒットアイテム。様々なパール、ダイヤモンドを組み合わせたリングペンダントがあり、世界中で人気を博している。

T : パールと向き合った時,自分ならどんなパールを身に着けたいかと自問自答しました。考えているうちにパールが指の上に浮いているようなイメージが生まれたのです。それは、シンプルでモダン、しかも強いインパクトを与えるものでした。「バランス」のデザインはシンプルだからこそ、パールの役割を主張できているのだと思います。

基本的には自分がいいと思うものを作っていこうとしていて、なかでも「バランス」は特に気に入っています。

6.アイコン シリーズの一つである「リファインド リベリオン」については?
あこや真珠をスライスし、上下を逆にして山型を強調したTASAKI独自のカットを施したダイヤモンドを組み合わせた「リファインド リベリオン」シリーズは、相反する二つの感覚を融合させるタクーンのパンキッシュな精神から誕生した。

T : 普段のものの見方をひっくり返す感覚がクリエーティビティーに影響を与えると思っています。「リファインド リベリオン」やパールにゴールドの棘を付けた「デインジャー」シリーズは、デザインに取り掛かる時、“ラグジュアリー”という概念を破壊するものにしたいと考えました。ラグジュアリーのイメージを変えてしまうことで新しいエネルギーが生まれ、新しい価値観も生まれてくるのです。

7.「Abstract World」から新たなアイコンが生まれる?
創業60周年を迎えたTASAKIが8月から発売する新作のテーマは、「Abstract World(抽象的な世界)」。宇宙に輝く星、氷の世界、深海に生息する生物など、自然界に存在する魅惑的な美の世界を抽象的に表現した最新シリーズだ。

T : 最新作は宇宙などをモチーフにその神秘をデザインしました。デザインというのは、できるだけシンプルなものがいいと思っています。あまり思い詰めなくても、いいタイミングでやってくるものです。凍結した氷の世界、海で浮遊するクラゲ、突然の流れ星。「アブストラクト スター」というネックレスは、星というモチーフを壊して新たに組み合わせたもので、とても気に入っています。今回ダイヤモンドを多く使っているのは、ダイヤモンドがイメージを演出しやすかったからです。

8.世界の女性達はあなたのジュエリーをどう捉えている?
2014年パリに支社が設立され、世界最古の百貨店「ボン・マルシェ」が「バランス」シリーズなどタクーンのコレクションの取り扱いを開始するなど、ワールドワイドに展開している。

T : 今年からパリで本格的な展開が始まったのですが、フランスの女性はジュエリーがとても好きな人達で,パールのジュエリーに良い反応を示し、インパクトのある「ア・シークレット」シリーズが人気を集めました。NYの女性に人気なのは「デインジャー」、エッジの利いたセクシーなものが好みです。東京の女性は可愛くてファンシーなものが好みのようです。ただ「バランス」シリーズは、どこの都市の女性達にも人気がありますね。中国の女性も大好きだそうです。


伊勢丹新宿店本館1階ザ・ステージでは8月6日から12日までTASAKIのイベント「TASAKI 60TH PEARL & DIAMOND JUBILEE Abstract World」 が開催される。タクーンのコレクションラインを始め、パールをスライスした大胆なデザインを発表しているメラニー・ジョージャコプロス、カラーストーンやダイヤモンドを巧みに操りパールとの絶妙のコンビネーションを見せるマリーエレーヌ・ドゥ・タイヤックの最新作が先行販売される。

タクーンによるイエローゴールドに南洋真珠 白蝶とイエローゴールドとダイヤモンドを大胆に使い彗星を表現したペンダント「コメット(comet)」(45万円)は、伊勢丹新宿店先行発売商品の一つ。
Yuri Yokoi
  • タクーン・パニクガル氏ショーケースのジュエリーは彼の代表作「バランス」
  • 8月6日から伊勢丹新宿店で先行発売となる「comet」
  • タクーン・パニクガル氏
  • タクーン・パニクガル氏
  • タクーン・パニクガル氏
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