吉岡徳仁の煌めく結晶世界の全貌。大規模個展「クリスタライズ」開催

2013.10.03

国内外で高い評価を受けているデザイナー吉岡徳仁個展「クリスタライズ(Crystallized)」を10月3日より東京都現代美術館でスタートした。2014年1月19日まで。展は吉岡の公立館初の大規模個展として、三つの新作に加え、インスタレーションを含む代表作と国内初公開作品を展示する。

3会場で構成された今展のメインとなるのは、地下2階のアートインスタレーション。同階に足を踏み入れると、細長いストローを集積した半透明の叢のような作品「トルネード」が迎えてくれる。その中に据えられるのが光の屈折により様々な表情を見せるガラスのベンチ「ウォーターブロック」だ。パリのオルセー美術館で展示されている作品で、来場者は実際に座ることが可能。

「トルネード」を過ぎると一転して落ち着いた空間に。しかし哀切のある後期ロマン派の1曲が鳴り響いている。新作である、“一つの曲が一枚の絵になっていく”というコンセプトの結晶絵画「白鳥の湖」のコーナーだ。水槽の中で自然結晶を成長させる過程でチャイコフスキーの「白鳥の湖」を聴かせ、曲の振動により形状を変化させた作品。

歩を進めると再び「トルネード」がエントランスよりも増幅して視界に入って来る。その“叢”中に新作、生きているバラを結晶化させた彫刻「ローズ」と、7本の糸をイスの形に張り、結晶を育て、成長させた彫刻「蜘蛛の糸」が佇む。結晶絵画からのこれら新作群はいずれも制作段階が表示される。「白鳥の湖」は水槽の中の結晶が音楽の振動を受けながら成長する様が、「ローズ」は制作段階で撮影されたポートレートが、「蜘蛛の糸」は糸のみの段階、成長途中のものが披露された。

次の空間は天井高が取られ、神々しいまでの七色の光を浴びせられる。国内初公開となる、建築プロジェクト「虹の教会」の重要なエレメントであるステンドグラスが放ったものだ。この約40cmのクリスタルプリズムを500本積み重ねた大きな作品は、自然光を鮮やかな虹色に変化させ神聖な空間をつくり出す。更にこの教会に設置するために作られた、クリスタルプリズム製の「レインボーチェア」「レイ・オブ・ライト」が次の部屋に展示される。コントラストを付けるように照明を最低限に絞られた一室にはプリズムによる七色が輝いている。「最終的には建築物として完成させたい」と吉岡氏は展望を窺わせる。

1階では代表作の「パーネチェア」と「ハニーポップ」の二つのイスを展示し、原点となる50点にも及ぶ作品集の映像記録を上映。ミュージアムショップ横ではイッセイミヤケコレクション映像を流し、1990年から2014年に掛けてのデザインプロダクトが一覧される。イッセイミヤケでの初期作品から、近年手掛けた化粧品のパッケージまで、多岐に渡る吉岡の仕事を見ることが出来る。

一つの作品の制作に最低でも2年の時間をかけるという吉岡氏は、今回の個展のために長い準備期間を費やしたという。最初のオファーを受けた後に東日本大震災が発生し、「自分は医者でもなく人を助けることは出来ないが、デザインで役に立てることはないかと考えたところ、自分の表現の中で何か出来るのではと今回の個展開催に辿り着いた。クリスタライズとは自然のエネルギーそのものを結晶化させるという意味を持つが、自分自身田舎で育ったこともあり自然の恐ろしさも知っている。作品の中には、そんな一面が垣間見えるものもあると思う」と吉岡氏は語る。

吉岡氏はインテリアデザイナーの倉俣史郎に師事。その倉俣に三宅一生を紹介され、イッセイミヤケの店舗デザインを手掛けるようになる。その頃三宅はアクセサリーをデザイン出来る人材を探しており、本展で展示されている「Silicon hat」を見せたところ気に入られ、アクセサリーのデザインにも携わるようになったという。「イッセイミヤケでの作品を見てもらえれば分かる通り、本質的な作風は変わっていないが、常に新しいものを作りたいという思いがある。小さくてもいいので、体で感じられる空間を作りたい」と語った。


イベント情報】
「吉岡徳仁ークリスタライズ」
場所:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
会期:10月3日から2014年1月19日
時間:10:00から18:00
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
入場料:一般1100円、学生・65歳以上800円、中高生600円
畑 麻衣子
  • 「虹の教会」。ウォーターブロックに座って展覧可能
  • 地下2階エントランス。ストローによる「トルネード」が迎える
  • ガラスのベンチ「ウォーターブロック」
  • 「白鳥の湖」
  • 曲を聴かせ結晶化した絵画
  • 水槽も設えられた
  • 再び「トルネード」が現れる
  • 生のバラを結晶化させた「ローズ」
  • 生のバラを結晶化させた「ローズ」
  • 「ローズ」製作途中のバラのポートレート
  • 「蜘蛛の糸」
  • 「蜘蛛の糸」糸のみの段階。
  • 「蜘蛛の糸」結晶成長途中
  • 「蜘蛛の糸」完成
  • 「虹の教会」。七色の光が空間を彩る
  • 「虹の教会」
  • 「虹の教会」のステンドグラスのドローイング
  • 「レイ・オブ・ライト」
  • 「レインボーチェア」
  • 暗い空間に七色が光る
  • 1階エントランス
  • ハニーポップ
  • パーネチェア
  • 1階全景
  • 吉岡徳仁氏
  • ミュージアムショップ横にはデザインプロダクトを展示
  • イッセイミヤケで使用された「Silicon hat」
  • イッセイミヤケで使用された「Ring Bag」
  • ミュージアムショップ横にはデザインプロダクトを展示
  • ミュージアムショップ横にはデザインプロダクトを展示
  • ミュージアムショップ横にはデザインプロダクトを展示
  • ミュージアムショップ横にはデザインプロダクトを展示
  • 吉岡徳仁氏
  • 吉岡徳仁氏
ページトップへ