kiminori morishita「80 pieces of history」──約80着のアーカイブで辿る、服と時間のインスタレーション

Mar 20, 2026
キミノリ モリシタ(kiminori morishita)は、楽天ファッションウィーク東京 2026 Autumn / Winterにて、ブランドの歩みを辿るインスタレーション「80 pieces of history」を発表しました。

Courtesy of kiminori morishita
会場は暗闇に包まれ、その中に約80着の作品が一列に吊るされる構成。手前から奥へと進むにつれて年代が現在へと近づいていく導線が設計されており、観客は空間を歩きながら、ブランドの時間を遡るように体験していきます。

Courtesy of kiminori morishita
ライティングは一定ではなく、会場内に流れるアナウンスに呼応して変化。特定の年代にフォーカスしたり、象徴的な1着に光を当てることで、その背景やディテールが浮かび上がります。暗闇の中で、光によって断片的に現れる衣服は、まるで記憶の層を一枚ずつめくるような感覚をもたらします。

Courtesy of kiminori morishita
また、インスタレーションの特徴的な点として、多くの作品に実際に触れることができる構成となっていました。テーラリングの精度、染色や加工による質感、そして素材に刻まれた時間の痕跡。視覚だけでなく触覚を通して、服づくりの密度と熱量を直接感じ取ることができる体験となっています。

Courtesy of kiminori morishita
kiminori morishitaは2003年春夏シーズンにスタートし、卓越したテーラリング技術と日本の伝統的な染色・加工技術を融合させた独自のスタイルを確立してきました。東京での発表を経てパリのオフィシャルスケジュールにも参加し、国内外で活動を重ねてきたブランドです。

Courtesy of kiminori morishita
展示されるアーカイブには、ブランド初期から現在に至るまでの思想が凝縮されています。異素材の組み合わせや過剰とも言える加工、経年変化を“再現する”のではなく“設計する”という発想。削る、叩く、焼く、染めるといった工程を重ねながら、服の中に時間そのものを内包させてきました。

Courtesy of kiminori morishita
ブランドが一貫して考えてきたのは、「人間と社会の関係性を布で表現すること」。特定の場所でのみ成立する服ではなく、都市の中に自然に溶け込みながらも、触れた瞬間に職人の手の痕跡と強度を感じることができる存在。いわば“カモフラージュ”のようでありながら、確かな個性を宿す衣服です。

Courtesy of kiminori morishita
初期の東京時代に見られた実験的な熱量、パリで洗練されていった造形、再始動後に加わった時代性、そして現在に至る静かでありながら密度の高い表現。それぞれの時代の断片が、空間の中で連続的に提示されていました。

Courtesy of kiminori morishita
本展は、20年以上にわたる表現の蓄積を示すと同時に、過去を振り返るためだけの場ではありません。アーカイブを起点に、構造や美意識を再解釈し、現在へと接続していくプロジェクトでもあります。

kiminori morishita/Courtesy of kiminori morishita
暗闇の中で浮かび上がる一着一着は、単なる衣服ではなく、時間と試行錯誤の痕跡そのもの。観るという行為に加え、触れ、歩き、感じることで、ファッションの本質により近づく体験となっていました。


The Editorial Team
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