出版界に風穴開くか。『ロフィシャル ジャパン』のアドバンテージとは【日本モード誌クロニクル:横井由利】

2015.10.05

雑誌が創刊準備を始めると、パイロット版を作り、クライアント、代理店にプレゼンテーションするのが常となっている。ところが、『ロフィシャル ジャパン』は従来の常識を打ち破るかのようにパイロット版をパスした。それがロフィシャル流なのだろう。

フランス版は、誌以外にロフィシャル・ボヤージュ、ロフィシャル・アートジュエリーウォッチのモントレー、ロフィシャル・オムなどがあり、それぞれ年4回ずつ発刊されている。

ライセンスマガジンの場合、リフトの仕方は契約条項に記されている。『ロフィシャル ジャパン』の場合はリフトの仕方が従来のライセンスマガジンと違い、インターナショナルな視野に立ったの記事は『ボヤージュ』から、海外のアートシーン情報は『アート』からリフト。ファッションは独自の視点で企画、撮り下ろしをするという。

セブン&アイ出版が進めるオムニ化の拡大解釈と捉えればいいのか、出版社の垣根を越えたコラボレーションを実現する予定もあるという。ファッション界でも、ラグジュアリーブランドファストファッションコラボなどで化学反応を起こし、新たなマーケットを創出しようとする動きが盛んだ。『ロフィシャル ジャパン』の試みは、モードとは縁がなかった文学系の雑誌とのブック・イン・ブックや別冊という形態でのコラボなど、今まで接点がなかった互いの読者へアプローチして部数を伸ばそうという企画が進行している。セブン&アイホールディングスの大規模小売業的な大胆な発想が生かされているのだろう。出版界でも同業者との業務提携は進んでいるが、コンテンツまで踏み込むことはほとんどない。

更に『ロフィシャル ジャパン』主導でライセンスビジネスを展開する準備が進められている。80年代前後に上陸したモード誌は本国主導でアパレル、コスメを中心にライセンスビジネスが盛んに行われた。

「ライセンスビジネス?」と訝る声もある中で、あえて挑戦するのには訳がある。「後発のモード誌はしっかりしたブランディングが必要です。ブランディングが成功すれば、出版だけではなくホテルカフェなどのライセンスビジネスへと繋がっていくという発想なのです」と馬淵氏はいう。そこには従来の出版社の姿はない。新しいビジネス展開を目指す企業の姿を思い描こうとしているようだ。

webサイトは、本誌の電子書籍として10月1日より同時にスタートする。本格始動は12月1日の予定で、当面本誌連動企画とweb_企画をミックスして運営していく。webの可能性と発展は十分に意識しながらも、紙媒体を充実させることを優先している。

馬淵氏が懇意にするあるクリエーターから「ラグジュアリー・マガジンをコンビニで売る気なのか?」と問われた。富裕層の人たちは、スーパーマーケットは厳選するが、コンビニへのこだわりや偏見はない。1日2,500万人、5人にひとりが毎日コンビニを利用している時代に、そのアドバンテージを見過ごすわけにはいかないという思いが芽生えた。『ロフィシャル ジャパン』の共同発行人でありセブン&アイ出版の大久保清彦執行役員は、コンビニで『街の本屋さん』を展開している。流通、出版共にパラダイム・シフトが起きている今、逆もまた真なりと新たな一歩を踏み出すことで、出版界に風穴を開けようとする『ロフィシャル ジャパン』の創刊は、起爆剤になるのだろうか。


---前編「『ロフィシャル』が再創刊へ。オムニチャンネルを生かし常識を覆す」を読む。
Yuri Yokoi
  • 『ロフィシャル ジャパン』創刊号
  • 『ロフィシャル』発行人兼編集人を務める馬淵哲矢氏
  • フランス版は、本誌以外にロフィシャル・ボヤージュ、ロフィシャル・アート、ジュエリー&ウォッチのモントレー、ロフィシャル・オムなどがあり、それぞれ年4回ずつ発刊されている。
  • 『ロフィシャル』発行人兼編集人を務める馬淵哲矢氏
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