パリコレクション俯瞰、ファッションの息遣い【2016春夏 Paris collection:横井由利】

2016.03.31
一枚の服に目を凝らし、耳をそばだて、感触を確かめる、するとそこから波動が伝わってくる。デザイナーは、何を感じ、何を夢想し、何を提供すべきか、ときに感情の赴くまま、ときに才知にたけた判断により、完成させた服に込められた波動なのだ。

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ファッションデザイナーは、絵画や音楽などにインスパイアーされたものをシーズンテーマにして、物語を紡ぎランウエィショーで発表する。その物語は、ときに恋愛がドラマチックに描かれたり、日常生活の機微がスマートに描かれており、感動的なショーはスタンディングオーベーションを受けるほどだ。ただショーの中心はあくまでも新作の服だということを忘れてはいけない、素材やデザインやコーディネート、小物使いで文脈を読みとることになるのだ。

エディ・スリマンのサンローラン(Saint Laurent)には、良家のちょっと不良の女子が描かれている。ムッシュ・サンローランのミューズ、ベティ・カトゥローを彷彿させるケイト・モスをイメージし、反体制派の香りを漂わせた。ライダースの下にグラマラスなレースやスパンコールのドレスを着て挑発した。ランバンのアルベールが描いたストーリーは、衣服礼賛、女性礼賛だった。無表情な淑女が着るセクシーなドレスは、九鬼周造の『「いき」の構造』で語られた意気地や媚態の霊化が粋となるという言葉に通じる何かがある。そうして、コム デ ギャルソン(COMME des GARCONS)のコレクションは、いつも情動的な昂ぶりがデザインされ、見る人に衝撃を与え続けている。

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奇しくもこの括りに並んだ3名の服は女性デザイナーのものだ。先にも述べたように彼女たちのプレゼンテーションは「自分が着たいと思う服」を出発点としている。特別な日に着る「ハレの服」より、日常に着る普段着を意味する「ケの服」を大切にする傾向がある。その発想は、ミウッチャ・プラダがデビューした90年代のリアルクローズと通じている。女性の日常を豊かにするリアルクローズは、情緒的なフリルよりも、シンプルで理性的な色使いや合理的なカッティングが必要なのだ。

エルメス(HERMES)のデザイナーに就任して2回目コレクションで、ナデージュ・ヴァンヘ=シビュルスキーは、整然とした美しい数式のようにシンプルな手法で、エルメスの極上の素材やカレ(スカーフ)を再解釈してみせた。セリーヌ(CELINE)を率いるフィービー・ファイロは女性のたおやかな感性を知的に使いこなし、暮らしの中のモダニズムを追求する。持続可能(サスティナブル)な世界のために誠実な企業であることを目指すステラ マッカートニー(Stella McCartney)は、環境負荷の少ない素材を開発しつつ、美しく楽しいファッションを展開している。

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Yuri Yokoi
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