【連載:IT×ファッションvol.01(中編)】「起点」から「終点」への懸け橋になる──アパレルの構造革命を狙うVASILY金山裕樹

2012.12.28

月間訪問ユーザーは100万人を突破。売り上げは前月比150から200%で増え、現在月1万人以上のペースでユーザーが増える「iQON」。中編では、他企業に対するiQONの立ち位置を考え、今後の戦略を聞いた。


--ユーザーから好評ですが、今後のB to Bでの戦略は?

ファッションを購入する流れにおける「起点」をiQONで作りたいと思っています。ファッションの世界ではリアル店舗、あるいはアマゾン楽天ゾゾタウンといったECサイトなど、いわゆる「買うところ(終点)」は既に多数存在します。しかし、消費者の多くは着たい服やコーディネートが分からなかったり、先に述べたのようにファッションに触れる時間が少なくなっているので、終点に到達しにくくなっていると思います。そこに集客するためのアプローチ方法、つまり「起点」はバラバラと存在しており、決定打というものはまだ存在しないのではないでしょうか? iQONでは「終点」に誘導する「起点」をデザインして、何か買おうと思ったらまずiQONにアクセスするという状態をつくりたいと考えています。

iQON経由での売り上げが1か月で1,000万円を超えるECサイト様が出て来ており、販売額は順調に推移しているのですが、iQONユーザーにアンケートを取ったところ、73%はiQON経由で物を買ったことはないと回答しました。一方、87%のユーザーがiQONは新しいファッションアイテムの発見に役に立っていると回答しています。これはお客様はiQONというオンラインでの空間で購入したいと思うファッションアイテムを発見して、オフラインで購入しているということではないかと考えています。現在iQONがつなぐ終点はオンライン上のECサイトしかありません。これをオフラインまで含めてつなげていくことでさらにビジネスを拡大させていけるのではないかと思います。

--自らECをやろうとは思わないのでしょうか?

やろうと思ったことはないですね。そもそも自分たちにノウハウがないということと、規模が効くビジネスなので、在庫管理やロジスティクス、商品仕入れなど考えるとそこで1番になるということは今からでは難しい。iQONはあくまでファッションに関する情報を提供し、人を集め、ECショップやリアル店舗へ送客する。そこでのアフィリエイトやメディアとしての広告ビジネスを強みとしていきたいです。将来的にはiQONに蓄積されている、いわゆるビッグデータというものを販売者様に提供して、何かしらのコラボレーションできればとは考えています。

--具体的にはどのように?

店舗の商品情報と、iQONに蓄積されたユーザーの興味、嗜好(しこう)、行動履歴などのデータを結びつけることで、お店にユーザーを誘導するソリューションサービスを考案・開発中です。このソリューションでは、iQONユーザーが外出している際に、近くの店舗に自身が「LIKE」した洋服があるということを通知し、来店へつなげることを狙っています。洋服は家電製品などとは異なり、店舗での「試着」がとても重要。スマホの位置情報を用いたリアル店舗誘導、いわゆるO2O(online to offline)の分野でスマートフォンアプリらしい力を発揮できると考えています。

次回はSNSの隆盛がファッションに及ぼす影響について考察し、iQONの真の狙いを掘り下げる。
編集部
  • ヴァシリー代表取締役金山裕樹氏
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