心が澄み渡るこの1冊、NADiff a/p/a/r/t・スタッフが選ぶ2016年ベストオブブック【vol.1】

2016.12.27

毎週木曜日に連載企画「今読むべき1冊」を担当いただいている、東京恵比寿店、ナディッフ アパート(東京都渋谷区恵比寿1-18-4NADiff A/P/A/R/T1階)に、2016年もたくさんの書籍をご紹介いただきました。

今回は1年の締めくくりに、ナディッフ アパートの5人のスタッフが“2016年発行の書籍の中から選んだベストオブブック”を31日まで毎日1冊ずつお届けします!1日目は、スタッフIさんが選ぶ2016年ベストオブブック。


■『林檎が木から落ちるとき、音が生まれる』エレナ・トゥタッチコワ(
Elena Tutatchikova)


記憶の生成について考察する中で、自然と人間との関わりに焦点をあて制作を続けるエレナ・トゥタッチコワによる初の作品集。幼少期の自身の記憶を軸に、故郷ロシアを2009年から撮りためてきた。

寒い地域にとっては特別な夏。ロシアの人々は、ダーチャという森や川に囲まれた家で過ごす習慣があり、子どもたちはそこで遊ぶ内によく宝物を見つけてきたそう。本書中ほどには、綴じ込まれた美しい“宝物”たちも丁寧に並ぶ。もう子どもになることのできない大人たちが、背筋を少しだけしゃんと正したくなるくらいに、写真の流れが澄みきっている。作品群に寄り添うように巻末に綴られた物語は、夏の間まだ少年と少女でいられたその瞬刻を鮮やかに描き出している。林檎が木から落ちるときの刹那もきっと、人間をかたち作っている記憶なのだろう。鑑賞者の感覚の奥底から、そんな懐かしさを掬い上げてくれる。


【書籍情報】
『林檎が木から落ちるとき、音が生まれる』
言語:日、英
出版社:torch press
72頁/A4判変型/仮フランス装/フルカラー
発売日:2016年12月
価格:2,500円

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NADiff a/p/a/r/t・スタッフI
  • 『林檎が木から落ちるとき、音が生まれる』エレナ・トゥタッチコワ
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