アンティーク・レース展が渋谷区立松濤美術館で開催中、中近世ヨーロッパの美と技の粋を集めた約170点が並ぶ

開催日:2018.06.12-07.29
2018.06.19
渋谷区立松濤美術館では、「ダイアン・クライスコレクション アンティークレース展」を、6月12日から7月29日まで開催する。

《ショール》シャンティリ・レース、19世紀、フランス ©Keita(FLAME)
かつてレースは、ヨーロッパの王侯貴族たちの間で富と権力の象徴として流行し、歴史上、常に重要な価値を持ってきた。熟練した職人たちが長い時間をかけて手作業で生み出したレースは、単なる豪奢な装飾品の域を超え、時には城や宝石をしのぐほどの価値を持った、きわめて優美で繊細な美の世界だった。

展では、世界的なアンティーク・レースのコレクターで鑑定家でもあるダイアン・クライスの、数万点にもおよぶ膨大なコレクションから、カトリーヌ・ド・メディシス、マリー゠アントワネット、ナポレオン・ボナパルトといった、王侯貴族に由来するロイヤル・レースや、ファッションインテリアに取り入れられたレースなど、16世紀から19世紀のレース全盛期の作品を中心に、約170点を紹介する。

《タイ》グロ・ポアン・ド・ヴニーズ、17世紀、イタリア ©Keita(FLAME)
展示は5章で構成。レースは、刺繍の技術を元にした「ニードルポイント・レース」と、房飾りの技術を元にした「ボビン・レース」に大きく分類される。第1章「誕生と変遷」では、ニードルポイント・レースの誕生につながるカット・ワークの技法でつくられたレースなど、レースの技法の誕生から発展の変遷を、時代を追って紹介。

第2章「レースに表現されるもの」では、技法の発展とともに、や蔓や葉などの植物、動物や昆虫や鳥、王侯貴族から農夫といった人々や、天使や神仏など、レースに描き出されるようになった様々なモチーフを紹介する。

《ハンカチーフ(ヴィクトリア女王に由来)》リメリック、19世紀、アイルランド ©Hiroshi Abe

第3章「王侯貴族のレース」では、16世紀初期に誕生し、瞬く間にヨーロッパ中の宮廷に広まったレースに焦点を当て、カトリーヌ・ド・メディシスやマリー゠アントワネット、ナポレオン・ボナパルト、ヴィクトリア女王らに由来する繊細で華麗なレースが展示される。

第4章「キリスト教文化に根付くレースの役割」では、キリスト教文化に根付き、洗礼や初聖体拝領、結婚、喪といった人生の節目の宗教儀式にも用いられてきたレースが登場。所蔵者ダイアン・クライスの家庭では、1860年の曾祖母の時代の洗礼式のドレスとヴェール、ボンネットが現在も受け継がれている。

《パネル》ポアン・ド・ヴニーズとバンシュ・レース、1914-18年、ベルギー ©Keita(FLAME)
第5章では、ベルギーの「ウォー・レース」を展示。1914年、第一次世界大戦がはじまり、ベルギーの5万人にも及ぶレース職人たちが困窮した。それを救うために、のちのアメリカ第31代大統領ハーバート・クラーク・フーヴァーによってベルギー救済委員会が設立。彼らによって糸と食料が供給され、レースの維持が図られた。この時期のベルギーのレースが「ウォー・レース」と呼ばれている。たくさんの人々の熱意と懸命な尽力によって守られた、ベルギー・レースの技術と伝統を感じることが出来る。

会期中には、関連イベントも開催。6月17日の14時からは、「レースは、私の人生そのもの~Lace in My Life」と題して、ダイアン・クライスの記念講演会、6月30日の14時からは、本展監修者の百々徹による記念講演会「21世紀におけるアンティーク・レースの魅力」が開催される。さらに、7月16日の14時からは、担当学芸員が展覧会のみどころとレースの装飾文様について語るミニ講座、6月22日と7月7日の14時からは、担当学芸員によるギャラリートークも実施される。19世紀後半にベルギーで紹介された新しいタイプのクラフトレース「プリンセスレース」でピルケースを作るワークショップ「レースのピルケース作り」も7月8日の14時から開催。定員は20名、往復はがきによる事前申し込みが必要。イベントの詳細、申し込みについては公式ホームページ(http://www.shoto-museum.jp/)にて。

「アンティーク・レース」は、超絶技巧とも言える、現在ではほとんど失われてしまった技術で制作された芸術品。私たちがいま目にするレースとは一線を画す、中近世ヨーロッパの美と技の粋を集めた品々をぜひ楽しんで。

【展覧会情報】
ダイアン・クライスコレクション アンティーク・レース展(Diane Claeys Collection Antique Lace)
会期:6月12日~7月29日
会場:渋谷区立松濤美術館
住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)、金曜日10:00〜20:00(入館は19:30まで)
料金:一般500円(400円) 大学生400円(320円) 高校生・60歳以上250円(200円) 小中学生100円(80円)
※( )内は団体10名以上及び渋谷区民の入館料
※土・日曜日、祝休日及び夏休み期間は小中学生無料。毎週金曜日は渋谷区民無料。障がい者及び付添の方1名は無料。
休館日:6月18日、25日、7月2日、9日、17日、23日
編集部
  • 《ショール》シャンティリ・レース、19世紀、フランス
  • 《タイ》グロ・ポアン・ド・ヴニーズ、17世紀、イタリア
  • 《タイ》デュシェスのついたブラバント・ヴァランシエンヌ、19世紀後半、ベルギー
  • 《ハンカチーフ(ヴィクトリア女王に由来)》リメリック、19世紀、アイルランド
  • 《ウェディング用扇(ヘイワードの箱つき)》ブリュッセル・アプリケーション、19世紀、ベルギー
  • 《パネル》ポアン・ド・ヴニーズとバンシュ・レース、1914-18年、ベルギー
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