「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」展が水戸芸術館で開催

開催日:2018.02.10-05.06
2018.01.06
茨城県にある水戸芸術館現代美術ギャラリーでは、2018年2月10日から5月6日まで「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」と題して、企画展を開催する。

レイチェル・マクリーン《大切なのは中身》 2016
Commissioned by HOME, University of Salford Art Collection, Tate, Zabludowicz Collection, Frieze Film and Channel 4

芸術は、いわば「危険早期発見装置」である。そのおかげでわれわれは、社会的、精神的危険の兆候をいち早く発見でき、余裕をもってそれに対処する準備をすることが出来るのである。”と1960年代に鋭い先見性で、新しい技術がもたらす社会変革を予見したメディア批評家、マクルーハンが活躍した時代から半世紀が過ぎた今、インターネットが社会に浸透し、人工知能などの新しい技術革新が進められている。

「どんな技術も、次第に、まったく新しい人間環境を作り出していく」という彼の言葉通り、テクノロジーは人類に全く新しい世界をもたらしてきた。こうした変革は、希望に満ちた新しい時代のドアとして期待される一方、さまざまな問題や混乱が危惧されている。技術革新がもたらす時代の光と影について、革新と混沌が交錯する現在、そして未来に対し、鋭い感性で応答する国内外のアーティスト8組の作品を通し、テクノロジーが作り出すこれからの社会について考える機会として展を開催する。

セシル・B・エヴァンス《溢れだした》2016
Courtesy of the artist and Emanuel Layr Galerie, Vienna

本展の見どころは、情報社会を紐解くアーティストたちの競演。新しい時代のさまざまなキーワードに対し、刻々と変化する時代を捉え、新しい表現を開拓するアーティストの作品が展示される。ロボットや映像、写真など多様なメディアの作品群も見どころのひとつ。本展では、セシル・B・エヴァンス(Cécile B. Evans)のロボット、ペッパー(Pepper)やアイボ(aibo)と20数面の映像による、完全自動のパフォーマンス作品「溢れだした」や、谷口暁彦の監視カメラで制作された写真作品「address(アドレス)」、サイモン・デニー(Simon Denny)の仮想通貨をテーマにしたボードゲームなど、映像や写真、インスタレーション、ロボットによるパフォーマンスなど多彩な表現方法を通して取り組む作品が集う。

ヒト・シュタイエル《他人から身を隠す方法:ひどく説教じみた.MOVファイル》2013
Courtesy of the artist and Andrew Kreps

また、テクノロジーによる便利で快適な社会が発展していく一方、フェイクニュースの氾濫や監視社会の発達、仕事を奪う人工知能など、不安を煽る話題も多く取り上げられる昨今。本展ではこうした現代に潜むスリリングな状況にスポットを当てた作品も紹介。レイチェル・マクリーン(Rachel McLean)のSNSに依存しきった人間のドラマや、情報社会から身を隠す方法を語ったヒト・シュタイエル(Hito Steyerl)のインスタレーション、センセー ショナルで破滅的な映像の作り方を教えるデヴィッド・ブランディの映像作品などは、見えないところで起こっている情報社会の怖さを捉えるアートの力を感じることができる。

小林健太《ピンク&ブルー, #ブラー #シャープネス》2016
Courtesy of the artist and G/P Gallery

2017年にイギリスの美術雑誌『アートレヴュー』が発表するランキングリスト「Power100」で世界のアート界で最も影響力のある人物として選ばれたヒト・シュタイエルを始め、ヴェネチア・ビエンナーレで各国館の代表を務めたサイモン・デニーやレイチェル・マクリーン、さまざまな国際芸術祭での展示歴を持つセシル・B・エヴァンスなどの海外作家の作品を紹介。また、ニューヨークを拠点とする日本人アートユニット・エキソニモや2017年の「Asia Art Award supported by Warehouse TERADA」で特別賞を受賞した谷口暁彦、次世代を担う写真家として国際な評価を高めつつある小林健太など、世界を舞台に活躍する多彩な顔ぶれが揃う。

2月24日には、キュレーターである本展企画学芸員が展覧会について話すギャラリーツアーも実施。また、ハロー・ワールド展トーク・シリーズと題して、本展出品作家と多彩なゲストを交え、それぞれの活動や展覧会のテーマを掘り下げる特別対談シリーズも行われる。スケジュール等詳細は順次、水戸芸術館のホームページ(http://www.arttowermito.or.jp/)にて発表。


【展覧会概要】
ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて
会期:2018年2月10日~5月6日
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
住所:茨城県水戸市五軒町1-6-8
時間:9:30~18:00(入場時間は17:30まで)
料金:一般800円、中学生以下、65歳以上・障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名無料
休館日:月曜日、2月13日、5月1日 (2月12日と4月30日は開館)
編集部
  • レイチェル・マクリーン《大切なのは中身》 2016
  • デヴィッド・ブランディ《チュートリアル:滅亡に関するビデオの作り方》2014
  • サイモン・デニー《ブロックチェーンの未来予測/フェア用ブースと特別郵便切手:イーサリアム(リンダ・カンチェヴとの共作)》2016
  • セシル・B・エヴァンス《溢れだした》2016
  • ヒト・シュタイエル《他人から身を隠す方法:ひどく説教じみた.MOVファイル》2013
  • エキソニモ《キス、または二台のモニタ》2017
  • 小林健太《ピンク&ブルー, #ブラー #シャープネス》2016
  • 谷口暁彦《address(アドレス)》2010~
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