安藤忠雄展が国立新美術館で開催中。原寸大の「光の教会」や「直島プロジェクト」など“建築を体験”【レポート】

開催日:2017.09.27-12.18
2017.10.03

建築家、安藤忠雄の半世紀に及ぶ活動に迫る「安藤忠雄展ー挑戦ー」が、東京六本木国立新美術館にて9月27日から12月18日まで開催している。26日、プレス向けの内覧会と安藤によるギャラリートークが行われた。

元ボクサーという異例の経歴を持つ安藤は、独学で建築を学び28歳で建築事務所を設立する。これまで、常に既成概念を打ち破るような斬新な建築作品を世に送り出してきた安藤。過去最大規模となる同展では、その半世紀に及ぶ約270点もの模型やドローイング、設計資料から89のプロジェクト展示。「原点/住まい」「光」「余白の空間」「場所を読む」「あるものを生かしてないものをつくる」「育てる」の6つのセクションに分けて紹介をしている。

プロローグでは、安藤が建築家になる前に世界をしたスケッチや、活動歴、また現在のアトリエの一部が再現されており、安藤のパーソナルな部分を垣間見ることが出来る。



Section.1 「原点/住まい」
“人間が住まう”という建築の原点に迫る

安藤建築を象徴する、打ち放しのコンクリートや幾何学的造形、自然との共生といったキーワードからなる100を超える住宅作品を紹介。

初期の代表作である「住吉の長屋」は、3軒並ぶ長屋の1軒をコンクリートハウスに建て替えた極小の建築。さまざまな賞を受賞した作品だが、この住居について安藤は「建物の真ん中に中庭があるので、雨が降ったら2階の部屋から一度外に出てを差してトイレに行かないといけないんですよ」とエピソードを話し周囲の笑いを誘った。


Section.2 「光」
光、風、自然が息づく空間




大阪府・茨木市の郊外につくられた礼拝堂「光の教会」が、原寸大で国立新美術館に再現された。ただのインスタレーションではなく、東京都に建設申請を出して増築したというから驚きだ。この展覧会では“建築を体験してほしい”という安藤の言葉の通り、実際に教会の礼拝堂に入ることが出来る。コンクリートの十字架から射す柔らかい“光”、そして黒に塗られた床に映る“光”の十字架は見ものである。


Section.3 「余白の空間」
余白の空間をつくりだし、人が集まる場所を生み出す

初期の小規模な商業建築から、私たちの暮らしに馴染みの深い「東急東横線 渋谷駅」、「表参道ヒルズ」などを模型で紹介。建物に広場をもたせることで、人が集まるきっかけをつくりだした。


Section.4 「場所を読む」
その場所にしかできない建築


大自然に息づくそこにしかない芸術を求めて、住民約2,500人の島に毎年45万人もの観光客が訪れる直島。同セクションでは、「直島プロジェクト」の空間インスタレーションを中心に紹介している。木片が積まれた島に、ベネッセハウスや地中美術館を俯瞰で表現。映像とともに島の空気を体感してほしい。


Section.5 「あるものを生かしてないものをつくる」
歴史的建造物の再生


新旧の建物が入れ子状態になる空間。国内での現実作品や、歴史的ヴェニスでの「プンタ・デラ・ドガーナ」を中心とする作品を紹介。さらに、現在パリで進行中のプロジェクトに至るまで、一挙に公開している。ギャラリートークにて「海外と比べて日(東京)は古いものを壊してしまうことが多い。建物も人間の体と一緒でメンテナンスをすれば元の通りになる。古いものは残さないといけない。」と訴えた安藤が印象的であった。


Section.6 「育てる」
社会活動、建築づくり、環境再生
建築づくり=環境づくりと考える安藤の思いをドキュメンタリー映像で紹介している。




【展覧会情報】
「安藤忠雄展―挑戦―」
場所:国立新美術館 企画展示室 1E+野外展示場
住所:東京都港区六本木7-22-2
会期:9月27日~12月18日
時間:10:00~18:00(金曜は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
料金:一般1,500円、大学生1,200円、高校生800円
休館日:火曜日



編集部
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