忘却を巡るヨコハマトリエンナーレを写真でガイド

2014.08.03

8月1日に開幕した現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ2014」。森村泰昌がアーティスティック・ディレクターを務める今回は、本を読むことも持つことも禁じられた世界を描いたレイ・ブラッドベリのSF小説『華氏451度』になぞらえたタイトル「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」のもと、「忘却」に着目した400点以上の作品が序章と11の挿話として構成されている。

主会場のうちの一つ・横浜美術館前では、ヴィム・デルボアが1990年に着手した「ゴシック」シリーズのうちの1作「低床トレーラー」が出迎える。全長15m以上の大型トレーラーをゴシック建築風に表現したもので、会場内外やチラシにキービジュアルとして登場するギムホンソック(韓国)の「クマのような構造物―629」「8つの息」と共に、序章の「アンモニュメンタルなモニュメント」という矛盾したテーマを提示する。

美術館に入ると、エントランスホールの空間いっぱいに設置されているのがマイケル・ランディの「アート・ビン」。今回の展覧会のテーマ「忘却」とそれに至った様々な「失敗」の入れ物として用意されたゴミ箱が美術館(=世界)の中心に置かれ、芸術作品を捨てることのできる参加型の作品としてメインを飾る。

第1話のテーマは「沈黙」と「ささやき」。新進アーティストを積極的に紹介してきたことでも知られるヨコハマトリエンナーレだが、65組79人の参加作家のうち、カジミール・マレーヴィチ(ロシア)やジョン・ケージ(アメリカ)、ブリンキー・パレルモ(ドイツ)、ルネ・マグリット(ベルギー)など多くの物故作家も名を連ねるのが今回の大きな特徴の一つ。森村氏は「新しく作られたもの、古い作品、生きている人、死んでいる人、そういった境界線を取っ払い、その上で『現代』について考えたい」としている。

日本有数の日雇い労働者の寄せ場である釜ヶ崎(大阪市西成区)で開講されている「釜ヶ崎芸術大学」に焦点を当てた第2話では、高齢化、医療、就労、住居など多くの問題を抱えた同地域に「表現」を通じてかかわろうとする同校が、これまでの参加者が制作した書、詩、写真などの作品、講座の様子を伝える講義ノートなどを展示する。また、会期中はオープンキャンパスとして、詩や天文学の出張講座、学生による狂言公演、炊き出しカフェなどのイベントを行う。

小説『華氏451度』のテーマを受け継ぐかのような数々の現代的な表現を紹介する第3話では、同小説へのオマージュとして作られた「世界でたった1冊の本」のリーディングパフォーマンスも不定期に開催される。第5話に登場する「赤い法廷」を舞台に執り行われる「横浜トライアル」では、「日本国憲法をラップする By Shing02」他全5回の審議を実施。

第8話の「漂流を招き入れる旅、漂流を映しこむ海」では舞台を黄金町のnitehi worksに移し、高山明/Port Bが横浜のアジアコミュニティーをリサーチした作品をライブインスタレーション「横浜コミューン」に変える。更に、市内の複数会場で「映像日記/スライドショー」を展開するのが、写真家のトヨダヒトシ。写真を一切プリントせず、モノとしての痕跡を残さないスライドショー形式を一貫してとっている。第9・10話では、「札幌国際芸術祭 2014」「福岡アジア美術トリエンナーレ」の二つの国際展がヨコハマトリエンナーレに乗り入れる。

物語の最後の会場となる新港ピアでのハイライトは、やなぎみわによる台湾で制作された特注の移動舞台車。外側には龍が描かれ、全方位展開すると中には架空の花が描かれている。大竹伸朗の新作「網膜屋/記憶濾過小屋」は、「忘却の海」に漕ぎ出すためのボート=本として、海を臨む新港ピアの最後部に設置されている。

新港ピアには、終着点として主会場の空間構成を手掛ける日埜直彦設計による「カフェ・オブリビオン」も併設。横浜港を眺めながら限定メニューが楽しめる。


【イベント情報】
ヨコハマトリエンナーレ2014「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」
会場:横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1)、新港ピア(横浜市中区新港2-5)
会期:8月1日から11月3日
時間:10:00から18:00(8月9日、9月13日、10月11日、 11月1日は20:00まで開場)
料金:一般1,800円 大学・専門学校生1,200円 高校生800円
休場日:第1・第3木曜日
齊藤真菜
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  • ヴィム・デルボア「低床トレーラー」
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  • マイケル・ランディ「アート・ビン」
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