もしも騎手が水平だったら? エルメスのファンタジー【2019春夏ウィメンズ】

2018.10.03
© Jean-François José 
ナデージュ・ヴァンヘ=シビュルスキー(Nadège Vanhée-Cybulski)によるエルメス(HERMÈS)は、改築後10月の再オープンを目前に控えたロンシャン競馬場でショーを開催した。

ランウェイには砂が敷き詰められ、客席の前には大きな鏡。鏡には空が写り込み、空と海もしくは地平線と水平線が曖昧になる演出に。これは、乗馬をする女性“サドラー”が、“セーラー”(水兵)になったらどうなるのか、という空想の物語からスタートしたコレクションに合わせたもの。セーラースタイルや、フィッシャーマンスタイルを取り入れながら、エルメスらしい乗馬の世界も盛り込み、いつもながら重厚なアイデアに富む内容となっていた。

リベットとコードを配したドローワークのレザーのワンピースにはフードが付き、セーラーとフィッシャーマンの装いを組み合わせたかのよう。キーカラーであるネオンオレンジのジップアップワンピースには、レザー製の格子状のドレスコーディネート。職人が手仕事で丹念に仕上げたもので、今季は格子のアイデアが多用されている。またストライプのモチーフも様々なルックで見られ、ワークウエア風のブライトレッドのジャンプスーツにも、間近で見るとピンクのラインがジャカードで織り込まれている。

後半に登場したブレザーやブルゾンには、セラミックアーティストのローレンス・オーウェン(Laurence Owen)の手による舵を象ったメタルボタンがあしらわれ、ルックによってはボタンに錆びたような効果を出すペイントを施し、海を強烈にイメージさせる。各ルックは非常にシンプルなフォルムであるものの、凝ったディテールと素材により、さらに奥深いストーリー性を感じさせる内容に仕上がっていた。
Tomoaki Shimizu
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