踏みしめる大地をもアートに変える「北アルプス国際芸術祭」の見どころ――夏の信濃大町アート旅2/3

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ジェームス・タップスコット《Arc ZERO》
  • ジェームス・タップスコット《Arc ZERO》
  • 淺井裕介《土の泉》
  • 淺井裕介《土の泉》
  • 《土の泉》制作途中の淺井裕介さん
  • 《土の泉》制作途中の淺井裕介さん
  • 地元の土が作品を描く際の画材となりました
  • 地元の土が作品を描く際の画材となりました
  • ジェームス・タップスコット《Arc ZERO》
北アルプス国際芸術祭のテーマ「水、木、土、空」が示すように、作品を巡りながら信濃大町を歩くと、山々の美しさ、集落のたたずまい、澄んだ水の清らかさに感動します。見たことのない風景が、新たなイメージや発想へと誘ってくれるでしょう。

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●2) ダムエリア―大自然と溶け合う造形と豊かな土

高瀬渓谷の絶景を背景に建設された大町ダムは、自然と文明の接点。別名「龍神湖」と呼ばれ、1969年に発生した大洪水をきっかけに建設された多目的ダムです。ダムのある高瀬川は、25キロ下流で犀川に合流、千曲川、信濃川と名前を変えて日本海に注ぎます。源流は北アルプスの槍ヶ岳。この水と人の相剋の記憶を残す場所で、合計4作品が鑑賞できます。

水力エネルギーの歴史を展示する「大町エネルギー博物館」の、幅38メートルの巨大な壁面に、淺井裕介さんは《土の泉》と題し、地元の土で絵を描きました。

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淺井裕介《土の泉》photo by Tsuyoshi Hongo

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淺井裕介《土の泉》photo by Tsuyoshi Hongo

淺井さんは「朝来ると猿が足場にいたり、川にカモシカが水を飲みに来たり、自然豊かな環境です。信濃大町で何度か土を堀りましたが、乳川の上流で採取された赤い土、そして濃い黒い土と、強い色の2色がすぐに見つかり、土地の豊かさを感じました」と話しました。動植物を基調にした無限に広がる文様は、大きな生物のなかに小さな生物がいて、さらに微細な生物たちが息づき、見ればみるほど発見に満ちています。信濃大町の住民、そして全国から集まったボランティアの筆跡が加わり、土地の生命力を吸い上げたかのような、有機的な世界が立ち現れました。

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淺井裕介さん

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地元の土が作品を描く際の画材となりました


そこから歩いて数分の温泉施設「こまどめの宿 心笑館」へ。2階のフロアでは、栗田宏一さんが「塩の道 千国街道」をテーマに、《土の道・いのちの道》を展示しています。日本海に沿って船で運ばれた塩、それらの塩が糸魚川に集まり、山を越えて信濃大町に至るイメージを作品化しています。栗田さんは1990年頃より、ありのままの土の美しさに目覚め、軽自動車に乗り、日本列島の全域で土の採集をはじめたアーティストです。土はそれぞれ干して、ていねいに石や植物の根を取り除き、ふるいで粒子を揃えると、目の覚めるような美しい表情を現わします。採取した地名が記されたそれぞれの土は、生命にとって欠かせない塩、そして土そのものが経てきた時間を物語り始めます。


3) 源流エリア―霧に包まれた新緑に、清らかなブルーの雪解け水

北アルプスの雪解け水が流れる鹿島川流域のエリア。黒部ダムや大町温泉郷などの有名な観光名所もあり、信濃大町が「水のまち」であることをもっとも強く印象づけます。作品も「水」そのものを扱った透明感あふれる作品が多く、合計9作品が鑑賞できます。

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北アルプスの雪解け水が流れる鹿島川流域のエリア


自然素材を媒体に表現を展開してきたオーストラリアのアーティスト、ジェームス・タップスコットさんは、仏崎観音寺で《Arc ZERO》という作品に挑みました。参道にかかる太鼓橋の下には、青い雪解け水が勢いよく流れています。この橋を包み込む、光る霧のリングが出現。「水を使った作品ではなく、水そのものを作品にしたいと考えました」。水蒸気から雲が生まれ、山に雪を降らせ、その雪解け水が川に集まり海に注ぎ、また水蒸気になり……という水の循環を表現しているといいます。橋は此岸と彼岸を隔てる境界。光を放つ霧は針葉樹の木々の奥へと広がり、見るものを別世界へと誘います。

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ジェームス・タップスコット《Arc ZERO》photo by Tsuyoshi Hongo

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ジェームス・タップスコット《Arc ZERO》photo by Tsuyoshi Hongo


フィンランドのマーリア・ヴィルッカラは、大町温泉郷にある森林劇場で、普段上がることのないステージに観客が立つと、建物全体が水で満たされている感覚に見舞われる作品をつくりました。その名も《ACT》。舞台では一般的に、役者(主役)が動き、観客はそれを見るのですが、その主客が転倒するという驚きの仕掛けが待っています。

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マーリア・ヴィルッカラ《ACT》photo by Tsuyoshi Hongo


大町の温泉郷の空き店舗では、写真や映像、音を素材とする新津保建秀さんと、複雑系科学・人口生命の研究を行う池上高志さんが、大町市の歴史における「塩の道」に着目し、《不可視な都市:ロング・グッドバイ》と題した地下室に氷室を抽象化した建築空間の床に大量の塩を敷くインスタレーションを制作します。

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新津保建秀+池上高志《不可視な都市:ロング・グッドバイ》


「北アルプス国際芸術祭」ガイド―夏の信濃大町アート旅3/3へ続く...
《永峰美佳》
  • ジェームス・タップスコット《Arc ZERO》
  • 淺井裕介《土の泉》
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  • 《土の泉》制作途中の淺井裕介さん
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  • 地元の土が作品を描く際の画材となりました
  • 地元の土が作品を描く際の画材となりました
  • ジェームス・タップスコット《Arc ZERO》
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  • 北アルプスの雪解け水が流れる鹿島川流域のエリア
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  • マーリア・ヴィルッカラ《ACT》
  • 新津保建秀+池上高志《不可視な都市:ロング・グッドバイ》
  • 新津保建秀+池上高志《不可視な都市:ロング・グッドバイ》
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