“見る側”と“撮る側”が語る。写真家たちが個々に築く「写真史」【NADiffオススメBOOK】

2017.05.25

木曜日連載、アート・ブックショップ「NADiffナディッフ)」各店による今読むべき1冊。今週は、金村修、タカザワケンジ著の『挑発する写真史』。東京渋谷の支店 NADiff modern(東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura地下1階)によるご紹介です。

■『挑発する写真史』金村修、タカザワケンジ

これは、“見る側”写真評論家・タカザワケンジד撮る側”写真家・金村修、同年代のふたりが語る「写真史」である。(いや、「写真史(※金村修の場合)」とした方がより適切かもしれない。)

書は、2012年に開催された青山ブックセンター本店での講座がベースとなっている。対談形式特有のライブ感、“見る側”、“撮る側”という異なる二つの視点、そして、大幅加筆された細かな注釈、各章の冒頭文、まえがき、あとがきによって、さらに面白みを増した1冊に仕上がっている。

タカザワ氏は、「すぐれた写真家は自分自身の写真史を持っている」という。従来の時系列を主軸とし語るのではなく、一人の写真家(本書の場合は金村修氏)の眼を通して語られる写真史、たった200年という写真の歴史の中で、いつ、どこで、誰にどのような影響を受け、何を思い、今現在の自身の表現に至ったのか、その物語こそがここで語られる「写真史」なのである。

写真史を漫然と知識として取り込むのではなく、ある過去の作品と正面から向き合うとき、自身の今の立ち位置にも気づかされ、そこから自分自身の写真史が始まり、写真というものの正体の一端を覗き見ることができるのかもしれない。

こんな偏った視点から語られる「写真史」もあってもいいのではないかと、新鮮な発見と新しい写真へのアプローチの可能性を感じさせる1冊である。

現在、Bunkamura ザ・シネマでは、『Don't Blink ロバート・フランクの写した時代、またBunkamura館内にて「ニューヨークが生んだ伝説 ソール・ライター展」、<「写真家ソール・ライター展」開催記念特別上映>『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』が上映中。

書籍情報】
『挑発する写真史』
著者:金村修、タカザワケンジ
版元:平凡社
368ページ/A5
発行:2017年2月
価格:2,300円

【上映情報】
■『Don't Blink ロバート・フランクの写した時代』
会場:Bunkamura ル・シネマ

■<「写真家ソール・ライター展」開催記念特別上映>
『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』
上映期間:5月20日~6月2日

【展覧情報】
「ニューヨークが生んだ伝説 ソール・ライター展」
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
会期:4月29日~6月25日
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)、毎週金・土は10:00~21:00(入館は20:30まで)
料金:一般1,400円、大学・高校生1000円、中学・小学生700円
休館日:6月6日のみ休館
NADiff
  • 『挑発する写真史』金村修、タカザワケンジ
  • 『挑発する写真史』金村修、タカザワケンジ
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