メイ首相も着用した、ロンドン新進デザイナーデュオのパルマー・ハーディング【2017-18秋冬ウィメンズ】

2017.02.23

2月19日ロンドンファッションウィーク2日目、パルマー・ハーディング(palmer //harding)がプレゼンテーション形式で2017-18年秋冬コレクションを発表した。若手デザイナーの宝庫と言われるロンドンの中でも一際異彩を放っているのが同ブランド。デザイナーデュオ、レヴィ・パルマー(Levi Palmer)とマシュー・ハーディング(Matthew Harding)によって2012年春夏に立ち上げられた。シャツのみで構成されるコレクションは、トラディショナルな技法を使って一つひとつ丁寧に仕立てられる。昨シーズン、ロンドン・ファッションウィーク開幕パーティの首相官邸でメイ首相が着用したことで一気にその名を全国区へと広げた。

たおやかに揺れるドレープや、巧みなカッティングによって生まれるセンセーショナルなシルエットは爽やかで軽快さがある。しかし今季はこれまでになかった黒をキーカラーに、ダークなゴシック調のコレクションとなった。着想源となったのはレヴィ・パルマーの生まれ育った地、アメリカ合衆国テキサス州。その地域にはgoths(ゴス)と呼ばれるゴシック・ロックミュージックから影響を受けた若者が多く、彼自身も10代の頃は全身黒のゴシックスタイルが日常だったという。バウハウスのBela Lugosi’s dead (ドラキュラ役で名を馳せた俳優ベラ・ルゴシへ捧げた曲)をBGMに、会場は真っ黒の壁と砂で異様な空気に包まれていた。

ファーストルックのシャツは襟がなくネックラインがそのまま伸び、フードの様に頭から掛けるような状態で登場した。シルク素材のスリットが入ったスカートは妖艶なツヤを放ち、レザーのグローブが魅惑的な雰囲気に拍車をかけた。続くルックでは淡いピンクのシャツ、その次はアシンメトリーのオレンジのスカートと、黒が引き立て役となって、まるで夜に朝日が差し込むような鮮やかなカラーだった。波打つような広がりを見せる裾はシャツドレス、麻素材のコート、ロングスカートに用いられ、悠々自適なエレガントを纏う。スリーブの前部をカットして自由に腕を動かすことのできるシャツワンピースや、オフショルダー、ベルスリーブと様々なシルエットを引用し、シャツ縛りのルックは退屈さとは無縁のバリエーションであった。

これまでのイメージから大きくシフトしたコレクションは、シャツという制限の中で無限の可能性を感じさせてくれるものである。シンプルであるからこそ、高度な技術と優れた美的感覚が要されるが、彼等は十分にそれらを備えていることを証明した。
ELIE INOUE
  • パルマー・ハーディング2017-18年秋冬コレクション
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