静寂の中、彫刻・文学・野の花に触れる―長泉町「クレマチスの丘」【富士の旅vol.1】

2016.03.17
東京から東海道新幹線で約1時間、三島由紀夫のペンネーム由来の一つとも言われる三島駅に到着した。都心からも程近い静岡県の東部にあたるこの町は、過ごしやすい温暖な気候と、昭和の面影が残る町並み、一駅足を伸ばせば温泉街のある熱海と、パノラマの富士山を望める新富士がある味わい深い町。

そんな静岡県東部をもっとよく知るために出かけたの一部を今回から全3回にわたって綴りたい。まずは静岡県長泉町にある「クレマチスの丘」へ。

クレマチスの丘は、美術館、文学館、レストラン、ショップ、季節ごとのクレマチスが咲く庭園が点在する複合文化施設。広大な敷地内は、フランスの画家ベルナール・ビュッフェの作品を所蔵する「ルナール・ビュッフェ美術館」、作家・井上靖の「井上靖文学館」とそれらに隣接する「駿河平自然公園」があるビュッフェ・エリアと、杉本博司が設計を手掛けた「IZU PHOTO MUSEUM」、クレマチスの庭園に併設された「リストランテ プリマヴェーラ」などのレストランがあるクレマチスガーデン・エリアと大きくふたつのエリアに分かれている。

中でもとりわけ印象に残る場所は、クレマチスガーデン・エリア側にある「ヴァンジ彫刻美術館」。芝生の上に寝転んだり、椅子に腰掛けてパノラマに広がる伊豆や箱根の山々を眺めていれば優に丸一日が過ぎてしまうようなのんびりした時間が流れ、その心地良さを思わず誰かに共有したくなる魅力的な場所である。

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「ヴァンジ彫刻美術館」


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エントランスを抜けてすぐの作品《レリーフ 風景の中の人物》2002年


イタリアを代表する具象彫刻家ジュリアーノ・ヴァンジの世界唯一の個人美術館であるこの施設には、現在、屋内と屋外を合わせて47点の彫刻と、デッサン・版画11点のデッサン・版画が展示されている。ヴァンジは、人間の多面的な心の在りようを形にした表情豊かな彫刻が特徴だそうで、一方から見た時と、そのまた反対側から見た時では全く別の表情や輪郭をしているという。また、屋外に佇むこれらの彫刻には触れることも出来る。

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《竹林の中の男》1994年

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反対側から見ると違った表情を見ることができる


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館内にも、たっぷりと余白を使い作品が点在する。《紫の服の男》1989年

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コートを着た女》2006年

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館内は自由に撮影可だそう


これら常設の展示のほか企画展も行っており、4月2日からはキギKIGI)の個展「KIGI キギ in Clematis no Oka」がスタートする。そして初夏になれば、美術館の庭園内にあるクレマチスガーデンに、這沢(はいざわ)やヘメロカリスなど一年で最も多くのクレマチスの品種が咲き誇るといい、また再び訪れたくなる話を聞いてしまった。

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2月の足元にはクロッカスが



クレマチスの丘
静岡県長泉町東野クレマチスの丘347-1
055-989-8787
http://www.clematis-no-oka.co.jp/
開館時間:1月 10:00~16:30
2月、3月 10:00~17:00
4月、5月、6月、7月、8月 10:00~18:00
9月、10月 10:00~17:00
11月、12月 10:00~16:30
※入館は閉館30分前まで
休館日:水曜日、年末年始
入館料はHP参照
Iori Ihara
  • 「ヴァンジ彫刻美術館」
  • 「ヴァンジ彫刻美術館」
  • エントランスを抜けるとすぐに《レリーフ 風景の中の人物》2002年
  • 《竹林の中の男》1994年
  • 《竹林の中の男》1994年
  • 足元にはクロッカスが(2月)
  • 「ヴァンジ彫刻美術館」
  • 《壁をよじ登る男》年
  • 《コートを着た女》2006年
  • 「ヴァンジ彫刻美術館」
  • 《真実》2013年
  • 《紫の服の男》1989年
  • 《紫の服の男》1989年
  • 《説教壇》2002年
  • 「ヴァンジ彫刻美術館」
  • 「ヴァンジ彫刻美術館」
  • 「ヴァンジ彫刻美術館」
  • 「ヴァンジ彫刻美術館」
  • イタリアンレストラン「リストランテ プリマヴェーラ」
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