女性の多様性を受け入れる寛容さが優れた組織を作る。『ELLE』森明子×坂井佳奈子対談--1/2【INTERVIEW】

2015.06.11

ハースト婦人画報社が発行する『エル・ジャポン』が、20代後半から40代の働く女性をメインターゲットにしたイベント、第2回「Women in Society(ウーマン・イン・ソサイエティー)」を、6月13日に開催する。開催に先駆け、同誌発行人の森明子氏、エル コンテンツ部編集長の坂井佳奈子氏にお話をうかがった。


■「ウーマン・イン・ソサイエティー」が目指すもの

――昨年開催された第1回イベントを踏まえ、第2回「ウーマン・イン・ソサイエティー」が掲げる目標とは何でしょうか。

森 明子氏(以下 森):私も坂井も今回からの参加となりますので、第1回の反響を聴いたところをお伝えすると、皆さんとても真剣に、情報収集の意欲を持っていらしているということですね。今年はその点をより発展させていくこと、そして「エル・ジャポン」のミッションである「常に女性に寄り添い、彼女たちの人生が豊かになるように応援する」ことにフォーカス出来ればと思っています。

坂井 佳奈子氏(以下 坂井):イベントは、フランスでは4年前からスタートしています。昨年の日本初開催時には700名ほどの方にご参加いただきましたが、参加応募自体は1000名弱の方からいただいていました。今年はその4倍、約4000名の方が応募されていて、多くの女性が働くことに対して関心を持っていることを感じます。今年のイベントは「幸せになる働き方」をテーマとして掲げていますが、そういった関心ともリンクしているのではないでしょうか。

森:若い女性たちは、よく「仕事は好き、働くことは自然なこと、でも自分が摩耗しない働き方を教えてくれるメンター的存在が欲しい」といいます。人生のナビゲーターや相談者、そういった相手と出会える場所を求めているようです。

――では現在の働く女性に、メンターとの出会いの場を提供するといった意味合いもあるのですね。

森:そうですね。今回は登壇者として『AERA』編集長の浜田敬子さんをお呼びしています。子育てと女性編集長職を両立なさっている浜田編集長は、30代から40代の働く女性たちにヒントを与えてくれるのではと思います。

坂井:現代の女性たちは、自分自身が幸せになる働き方を目指すというステージにまで来ているんじゃないかと思います。その一番の代表例として、ソーシャライトのオリヴィア・パレルモさんを登壇者としてお呼びします。彼女の、自身の人生を自身で先導していくところに、今の女性を象徴する働き方を見ています。

■女性のキャリア形成について

――若い女性たちの中には、管理職を目指すことをためらう気持ちがあったり、専業主婦を希望する方が増えていたりするようですが。

森:私は、子どもの頃から働くってことを当たり前のことと考えていて、働かない人生ってちょっと考えられなくって。専業主婦をしていた時期に、自分の存在価値が分からなくなってしまった経験があるので、自分が生きていく中で仕事をするということはマスト。ただ、管理職であるとか、会社のキーパーソンになるとか、高収入であるとか、そういったことにこだわりがあったわけではないんです。

坂井:私も同じです。私にもふたりの子どもがおりますが、ふたり目の出産の時に、当時の勤め先を退職しました。子育てをしながら2年ほど専業主婦を経験したんですが、当時は次の勤め先の予定もありませんでしたし、子育てのために社会から孤立してしまったようで、不安な気持ちでしたね。今、子育て中の方や専業主婦の方も、私と同じようなことを感じたまま生活しているんじゃないでしょうか。

森:専業主婦願望が強い人が、主婦として暮らして40代になった時、愛情を注ぎ込んだ子どもや夫が自分のコントロール下から抜け出て、それぞれ好きに人生を生きている時に、自分が犠牲者であるかのように、家族にリターンを求めるのは間違っているでしょう。でも、仕事には見返りを求められますよね。

私が『エル』に入ったのは18年くらい前ですが、当時の編集部にはシングル、既婚者、離婚経験者、子どもを持つママなど、大体の属性をもったスタッフが全部揃っていたんですよ。人生の苦さ甘さを全部知った人たちが集まったところから生まれてくるものって、一段深いのかなと。広く様々な属性の人を受け入れた方が、結局は優れた組織になると思いますね。

――多様性を認める寛容な組織作りが、女性の活躍する職場へと繋がっていくということでしょうか。

森:そういった寛容さは、絶対必要だと思います。

坂井:現在、編集部には産休中のスタッフが一人、妊婦が一人、ママは多分10人ぐらいはいると思います。様々な立場のスタッフがいる中で、管理職として気を付けなきゃいけないなと思ったのは、持ちつ持たれつ、お互いがみんなで支え合おうといった考え方を浸透させていくことです。そういった他者への気配りっていうのは、女性の方が少しだけ優れているのかな。そういった気配りできる職場ってすごく理想で、それを実現できるように、日々努力しなきゃいけないなって思うんですけどね。


--続く2/2では「女性は“トップを目指す”べきか」について両氏が語る。
interview:RIEKO.M text:K.H
  • 『エル・ジャポン』発行人の森明子氏
  • エル コンテンツ部編集長の坂井佳奈子氏
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