【ファッション再生】“貢献するファッションを作りたい”イエリ社長×兼松繊維社長3/3

2014.10.19

O:あれだって一定の補助金があるから採算の取れる状態になって事業として格化したんだと思うんですよ。衣料品だって同じようなことが出来ると思うので全体の流れが変わってきたらきっと一定の利益を出し得る様な仕組みが作れると思う。

利益と言うとみんなちょっと誤解するんですが、継続的にやっていけるとしたらそのことだけで満足感が得られるような仕組みを作らないと絶対無理ですよ。だって給料なしでやりますか?そんなことは有り得ないでしょ。給料を出すためには一定の行為の結果として利益が出ないと出せない。利益というのはその業務全体が健全に成長していく必要条件ですよ。そういう仕組みを作っていくためには先ほども言いましたように影響力のある企業が動き、最終的には政府が動いてくれないと何も動かないと思います。

T:それは大いに賛成です。開発費が必要ですからね。

O:僕らは日本はそろそろそういった動きが支持される環境に成りつつあると思っています。冒頭に言ったようにこのままでいいのだろうかと思う気持ち、このままだけでは何かが足りないと思う気持ち、きっと人間の満足感は、何かに役に立てていると思える環境が必要だと思います。単純にご飯を食べて息をして衣服を買って暮らすだけではなくて、なにか貢献できているということが必要なんです。「もったいない」という言葉がもてはやされた時が有りましたが、ややすたれた感があるのは残念です。「もったいない」という意識そのものがリサイクル的でリユース的です。

先ほども手塚さんが仰いましたが、ファストファッションがあります。大量生産、大量消費の構図ですが、彼らこそこのリサイクル、リユースにもっと真剣に取り組むべきです。実際にはそういった動きは有るのですが、企業規模からして余りに小さな動きでしかありません。

こういった機会に出来るだけ多くの方に意見を聞いていただいて賛同いただける輪を増やしてムーブメントにしていきたいものです。

T:日本の有力企業が動いて、経済産業省がそれに着いてきたら、日本が動き始めたという世界からの目があって初めて色々なことが成功していく。そこまで大々的に行う必要があるし、かかわる人間もプロフェッショナルでないといけない。でないといいものができない。無理を可能にしていかないといけない。

今当たり前に使われている薄型テレビだって昔の人からするとあり得ないことでしょ。そのあり得ないことを実現してきたのが日本人なんだから、最初から無理だとあきらめないこと。例えば、色んな生地が集まるから、全部黒に染めてしまって、黒の喪服や礼服だけは全部再生糸で作り、その素材を使った喪服、礼服を消費者が着ることが当たり前となればいい、最初はそういう小さいムーブメントからでも全然いいと思うんです。

これまで話したのは、原材料に戻そうっていう話でしたが、それ以外の手前の話もあって、我々がものをつくるにおいて、原材料をぴったりには出来ないところがあって、必ず余ってしまうんです。黒、白、ブルーを作ったとしたら、ブルーの原反が残る、ブルーの糸が残るとか。それが知らず知らずのうちに倉庫へ山積みにたまっていく。糸も、生地も、Tシャツにまで作られた製品も然り、あとは欠けたボタンであるB品も倉庫。それを引きずりだして何かものにしていけないか、スペインのインディテックスの考えですよね。そこはいい部分として取り入れていかなければならないんじゃないかなって思う。

日本は白、赤、黄とすべてがきっちりそろっていないと店頭へ出せない文化でしょ?だけど、青だけでメンズウィメンズ子供服まであったって構わないじゃないですか。それをやったのがZARA。これの日本版を作る。原反を抱えているのはどこの企業も同じ。それを60歳以上の営業面では海千山千の方々に一つのチームになってそういう余った素材を買いにいってもらう。それを製品にする。そういうのも面白くないですか。

O:半分くらい本気で昔から話していたことがあって、60歳以下の人は入れない会社をつくろうと(笑)。条件として、50万か100万かを出資金として出してもらう。給与は一律15万か20万。アパレル業界のプロ達がリタイアしてからそんな会社を作れば面白いと思うのですが。だって、60歳、70歳以上の人のファッションって誰が本気になって考えられますか?自分達自身でしょう。今まで話してきたリサイクル、リユースの事業はまだまだ解決しなければならないことが山ほどあるのですが、いずれにしてもあまり経費を掛けている場合じゃあないということも含め、発想として“あり”だと思っています。

別の観点からもう一つ言わせてもらうと、日本のアパレル市場全体の上代での売り上げは8から9兆円と言われており、例えばその売り値に1%オンさせてもらい、それを衣料品のリサイクルの原資、例えばリサイクルする機械の開発費に充当したり、もしくは先ほど手塚さんの話にも有った太陽光発電の補助金のような仕組みと同じように衣料品のリサイクルにプールする。そういうことを通じて事業として成立して、そうして新たに参入してくるところが出てきて、と全体として活性化もされると思います。

T:売り値の仕組みも海外ブランドをたくさん扱っている百貨店が始めたら世界から注目されるでしょう。進んだ百貨店として。百貨店の新しい道筋になるかもしれない。かっこいいという価値観は他の人に任せて、これからの世の中をどうするかということを皆さんの力を借りながら真剣に考えていきたいですよね。

O:手触りのいい服より、ちょっとごわごわした再生の服の方がかっこいいんだっていうフィロソフィーは作れないわけじゃないと思うんだ。

T:そしたら日本の技術は、風合いを柔らかくする方にいきますよね、きっと。そういう技術開発力を日本人は持ってるから。日本の技術力は凄いんだから。

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編集部
  • 左からイエリデザインプロダクツ社長・手塚浩二氏、兼松繊維社長・長ケ部良一氏
  • イエリデザインプロダクツ社長・手塚浩二氏
  • 兼松繊維社長・長ケ部良一氏
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