【安藤美冬/生き方】ノマドワーカー先駆者に学ぶ、好きなことを仕事にするための自由なスタイル

2014.09.27

仕事や家庭など、様々な場面で活躍する女性達を紹介するインタビュー企画「輝く女性の秘密」。第6回は、安藤美冬(あんどうみふゆ)さん。

最近、少しずつだけれど「働き方にもいろいろあるね」と言われるようになってきた。特に女性を取り巻く仕事の環境は、政治の助けもあって追い風かも。でも、具体的にどうすれば?と思う人も少なくない。安藤さんは、そんな多様な働き方をいち早く実践している、ノマド(遊牧民)ワーカーの先駆者だ。まずは、出版社から独立した経緯から伺った。

--新卒で大手出版社に内定したというのはある意味とても安定的な職業選択ですし、また出版社のお仕事であれば、それなりに刺激的でもあったと思います。にもかかわらずあえて独立するという選択をしたのは、どんな思いからでしょう?

「何をやるか(What)」よりも「どう働くか(How)」というスタイルを大切にしたかったからです。就職活動時には「どんな職種か」「どこの会社か」ということにしか目に入らなかった自分が、20代をずっと会社員として過ごしてきて、次第に「どんな風に働きたいのか」に意識が向くようになりました。例えば、年に2回2週間の有給休暇を取得して海外に行くんじゃなくて、世界中をあちこち回りながら仕事がしてみたい。あるいは、肩書きの中で役割を決められるのではなくて、自分の興味の赴くままに、色々な仕事に挑戦してみたい……そんな願望が自分の中で抑えきれないくらい強くなった時、「この働き方のスタイルは、会社員のままじゃ出来ない」と確信して現在に至ります。

--分かります。

30歳ちょうどで会社を辞めたんですが、あと30年、40年もこのまま会社員として働くのは嫌だったし、会社や業界に何かが起きた時に共倒れするリスクだってある。収入を一つに頼るのはリスクが大きくて、それは一般的にブランドと称されるような企業だって例外じゃない。じゃあ、まずは小さな仕事でもいいから、複数の仕事を同時に手掛けることによってリスクを分散させながら、次第にフリーランスとして力を着けていこうと思ったんです。……とはいえ、会社を辞めてから約半年間は全く仕事も収入も無く、更に半年間はひとりで食べていくのもやっと(いや、足りない!)という状況だったんですけどね。

--確かに、会社に自分の人生を預ける不安というのは、ありますね。

1人の人間が一つの仕事に自分の人生を投資するというのは不思議なことなのじゃないかと思うのです。投資の分野であれば、リスクを減らすために対象を分散させるポートフォリオの構築が重要なのと同じように、自分という財産を複数のものに分散させるリスクヘッジもとても大切だと思います。例えばアメリカには「ポートフォリオワーキング」という言葉があって、ある時はプログラマー、ある時はヨガインストラクター、ある時はライター、ある時は料理研究家……なんて人も居たりする。複数の仕事をする理由が、単に「一つの仕事では食べられないから」というネガティブな意味合いではなく、経済的なリスクヘッジと同時に「色々な仕事をすることで自分の可能性を開き、結果人生を輝かせてくれる」というものだったりします。

--その働き方は、自分がやりたいことを実現出来るという側面と、個人のリスクヘッジという側面がありますね。

そうそう、そうです。大学で講師をしたり、企業さんに呼ばれて講演をしたり、イベントやサイン会に登壇したりする際に20代から40代くらいの男女からキャリアに関して相談を受けることがあります。彼らに接してきて感じるのが、自分のやりたいことや出来ることを明確に持っているわけではないものの「今いるところは、一生自分が過ごす場所じゃない」と感じている人が多いことです。今の場所がそれなりに安定しているから、辞めたい気持ちもあるけど辞められない、でも自分の人生、このままでいいの?という疑問を持っているのですね。

私自身が会社を辞めた時も、同じような気持ちだったのでよく分かります。今の仕事は嫌いじゃない。人間関係も仕事内容も、不満はあるけれどもすぐに辞めるほどではない。何より、自分が何をやりたいのかも、どんなことが出来るのかもはっきりしない。まるで雲をつかむような頼りない感覚だけがいつも自分の胸の内にくすぶっていて、焦っていました。そうして会社員時代には終業後や土日の時間を使って3000人を超える人に会ったり、大金をはたいてセミナーに通い詰めたり、自己啓発書を読み漁ったり、ブログをとりあえず始めてみたり、色んな事をやったんですけど(笑)、一度このモヤモヤに取り憑かれてしまったら最後、一生この気持ちをごまかせる気はしなかった。だから、成功する保証があったわけではなかったし、これといって華やかな実績を会社で積んでいる訳でもなかったけれども、新しい世界へ一歩を踏み出すことに決めたんです。

--そういう、当時安藤さんが感じていた気分に対して、今は共感する人が増えてきたのではありませんか?

そうですね。とはいえ、仕事に対する不安や不満はいつの時代にもあって、今のような「働き方ブーム」は数十年前から様々な主張や方法論によって人々の心をとらえてきたので、自分が特別だとは思いませんけれども。肩書きにとらわれず、多種多様な仕事をやる。SNS(私は「自分メディア」と呼んでいます)での発信を駆使して、社会とつながる。無名でも一般人でも「自分ブランド」を意識して、キャラクターや強みを明確にする。プロジェクトベースで身軽に働く『ルパン三世式ワークスタイル』のすすめなど、一つひとつ自分で実践してきたことが共感を呼んで、仲間が増えていくのはとっても嬉しく思っています。

--独立したいけれど不安、という方にどんなアドバイスをされますか?

まず、誰にでも他の人より、好きなこと、得意なことがあると思います。でも、もっと出来る人もいるから、と思う必要は無いんです。そこで、「100人中の1位」というのをまずは目指してみる。

1000万人中の1位はオリンピック選手級でしょうし、1万人中の1位であっても県大会レベルくらいでしょうか。いずれも非常に大変でしょう。でも「100人中の1位」なら十分に目指せるレベルです。数年、場合によっては10年くらいの時間を掛けて、20代で一つ、30代で一つ、40代でまた一つ、と増やしていく。そうして「100人中の1位」になれる領域や分野、詳しいことを増やして掛け合わせていけば「1万人の1位」「100万人中の1位」だって夢じゃない。芸は身を助くと言いますが、私は更に「多芸は身を助く」と呼んでいます。用貧乏じゃなくて、器用長者。変化が早くて競争も世界レベルで始まっている現代において、私を含めた一般の人たちがサバイブしていくための戦略だと思っています。

--安藤さんのネーミングの才は、100人中の1位以上ですね(笑)。

あ、そうですか。ありがとうございます(笑)。複数のことを同時に手がけること、それを現代経営学の父ドラッガーは“パラレルキャリア”と呼んでいて、ひとつの仕事やひとつの肩書きにはまらずに、2つ以上のしごと、2つ以上の組織、2つ以上の肩書きを持つくらいの気持ちで働いてみる。そうしたら、きっと人生の景色は一変します。今以上に少しでもお金を稼ぐ事が出来たら安心感にも繋がるし、意外なことが仕事になったら自信も付くし、今まで気付かなかった自分の才能を目覚めさせることが出来たら、何よりこんなに幸せなことはありません。大事なのは、行動すること。どんなに小さなことでもいいから、「そんなことは今は出来ない」「自分には出来ない」と思考停止するのではなくて、今出来ることから始めてみることです。

--これからやりたいな、と思っていることは?

一つは、海外も視野に入れた移住ですね。実はここ10年で8回引っ越するほどの「引越し魔」なんです。そもそもノマド的な生き方を選ぶ人は、定住が苦手なのかもしれません(笑)。ずっと東京育ちなので、東京以外のところに住んでみたいですし、東京と海外や地方を行き来するような「二拠点、多拠点生活」を送ってみたいですね。その都市のベストシーズンを渡り歩きながら生活できたら最高です。

後は、英語力をつけること。大学時代にオランダのアムステルダムへ留学をして、これまで53ヶ国くらいをしてきてはいるのですが、格的に「暮らす」「発信する」「仕事をする」ための英語力を付けたい。単に観光目的の英語ではなくて。そのために来年あたりはフィリピンのセブ島へ短期留学に行って、マンツーマンレッスンをしっかり受けながら英語力アップ出来たらいいなと思っています。

後半では、ライフスタイルメイクについての哲学をお聞きします。
飯塚りえ
  • 株式会社スプリー代表の安藤美冬さん
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