写真家イナ・ジャン―写真はアイデンティティーを探す壮大な旅vol.2/2【INTERVIEW】

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イナ・ジャン氏
  • イナ・ジャン氏
  • 「TOLOT」内ギャラリー「G/P + g3/ gallery」で行われているイナ・ジャン個展
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vol.1/2より続く

――今後どんな作品を撮っていこうと考えていますか?

スイスで始まるグループ展に新作「There is no there there(そこには何も無い)」を出展します。展覧会のテーマは「若さ」です。

韓国には私が10代の頃から存在する「アルチャン(ULZZANG、韓国語で最も優れた顔の意)」というサイトがあります。このサイトは女の子が写真をポスティングして、閲覧者がコメントを付けるというSNS。可愛ければ可愛いほど有名になれます。テーマをリサーチする中でこのサイトを思い出し、調べてみたらまだ存続していました。

今ではデジカメが普及し、万人がフォトショップを使うことができます。当然、ポスティングされる写真も大半がデジタル処理されています。興味深いのは、彼女達が元の顔がわからなくなる程までに、自分の顔を変えてしまっている点です。

新作は、この顔が歪んだ少女達の写真シリーズなのです。サイト上で女の子にコンタクトを取って、彼女達の写真をスタジオで撮影。それを本人に送付。受け取った子はフォトショップで好きに加工して、サイトにポスティングする。その加工された写真が私の作品です。

この作品は、私がすべての作品を通して提起している、アイデンティティーの問題を孕んでいます。社会の中での美の基準とは?なぜ社会は少女達に美しくあることを要求するのか?なぜ自身の顔を加工しなければならないのか?これらの問い掛けを意図しています。実存しない顔からは、アイデンティティーが見えない。他のシリーズとも通じています。

――韓国は経済的に活気づいているようです。

ソウルは今、猛スピードで変化しています。以前私が住んでいた街並みはまるで認識できないほどに変わってしまっています。東京も変化しているものの、まだまだ認識できる範囲内です。ニューヨークは逆に、今住んでいるからかもしれませんがゆったりとした時の流れを感じます。

ソウルはもう少し深い意味での変革の時期を迎えている気がします。革命的な変化を遂げている最中のように感じるのです。人々の考え方やライフスタイルが徐々に欧米化してきました。皆お金持ちになりたくて、物質的な贅沢への欲求も高い。いわゆる資本主義的な価値観がピークに達しつつあるのだと思います。

国が経済的に豊かになった分、今は文化やアート、政治へと人々の視線が向いています。北朝鮮との関係についてもしかりです。今の韓国はすべての分野において、新しい価値観を力一杯に追求しようとするエネルギーで溢れています。この動きは大局的に見ると、国としてのアイデンティティーを追求しようと試みている、と理解することもできます。これまではひたすら目標を追いかけ、何かをコピーすることに力を注いできた韓国ですが、今こそ国の方向性を定め、独自の価値観を築き上げつつある、革命的な時期を迎えているようです。

――やはり“アイデンティティー”が気になるのですね。

アイデンティティーの追求はとても自然な欲求だと思います。私は沢山の顔を持っています。フォトグラファーとして、アーティストとして、娘として、妻として。その中で自分のアイデンティティーを探す壮大な旅に出ているような気分で生きています。人生とは、“自分を探し当てる”というのが大きな目標なのではないでしょうか。


【イベント情報】
イナ・ジャン個展
場所:ジーピー・トリプルジー・ギャラリー
住所:東京都江東区東雲2-9-13トロット2階
会期:8月10日まで
時間:11:00から19:00(事前アポイントメント制)
休館日:日・月曜日、祝日
《Maya Junqueira Shiboh》
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