写真家イナ・ジャン―アートフォトとファッション写真の違いvol.1/2【INTERVIEW】

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イナ・ジャン氏。自身の作品を模してその場で仮面を作ってくれた
  • イナ・ジャン氏。自身の作品を模してその場で仮面を作ってくれた
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  • 写真のモチーフを描きつける手帳
  • 学生時代に撮ったバッグストーリー。ショッパーからバッグの一部が除く
  • 学生時代に撮ったバッグストーリー。ショッパーからバッグの一部が除く
  • 学生時代に撮ったバッグストーリー。ショッパーからバッグの一部が除く
  • 学生時代に撮ったバッグストーリー。ショッパーからバッグの一部が除く
  • 仏誌Jalouseでのアクセサリーストーリー
東京・東雲のアートスペース「トロット(TOLOT)」内にあるギャラリー「ジーピー・トリプルジー・ギャラリー(G/P + g3/ gallery)」にて、8月10日まで若手韓国人フォトグラファー、イナ・ジャン(Ina Jang) の個展が行われている。

彼女は東京・ニューヨークで写真を学び、コンテンポラリーアートの領域で写真作品を発表。2011年にはフランスのイエール国際モード&写真フェスティバルで入賞した。現在はNYをベースに活動している。

会場には「オニギリ(onigiri)」「アガール(a girl)」など代表作が展覧される。その作風はガーリーかつファッショナブル。しかし作中の被写体は顔が隠され、シュールな雰囲気が漂う。展覧会に際し来日したイナに作品について聞いた。

――ファッションとアートの境界が曖昧になってきている中で、あなたの写真にはファッションの要素を感じるものもあります。自身の作品をどう捉えていますか?

私の写真はアートの領域だと思います。私は自分の幸福のために写真を撮っていますから。でも作品を分類するのは、受け取る側の問題だと思うのです。ただ、ファッションとアートでは求められるものが違います。ファッションマガジンに向けた仕事だったら、服、バッグ、靴など商品を見せなければなりませんよね。

その点が実利的な感じがして、ファッションに共感できないことがあります。学生時代に、ショッパーの上部から中に収まっているバッグの取っ手だけが見えるバッグストーリーを制作しました。ファッションに精通している人なら、微かに出ている取っ手を見ただけで、ブランドを特定できるはずです。見えない中身に想像をめぐらせ、自分が理想とするバッグの形を頭の中で描きます。そうすることで観客は写真と真の意味でつながることができる。しかし、この作品はバッグ本体が写っていないので評価されませんでした。これが、“ファッションのリアリティー“なんでしょう。

でもファッション側が私に共感する部分があるようです。私の作品はシンプルかつ明快なイメージを表現しています。ファッション写真も同じようにエレガントかつシンプルで、ポイントをついた写真を必要とします。これが共通点かもしれません。

ブランドにとって私は良いカメラマンとは言えないと思います。でもウェブなどリスクが比較的低いニューメディアで前衛的なことができるのであれば、是非ファッションフォトに携わっていきたいです。

――以前フランスのファッション誌『ジャルーズ(Jalouse)」でアクセサリーストーリーを撮っていましたが、ファッションフォトにもかかわらず、現在のスタイルと通じていますね。

このストーリーでは、アクセサリーそのものを少女達のアイデンティティーとして表現しようと考え、少女達の顔から靴やバッグが出ている演出をしました。アクセサリーは今日では女の子のアイデンティティーの一部でしょう?そこで、女の子のアイデンティティーをこれらのアクセサリーに置き換えることを思いついたんです。バッグやシューズは買う側だけでなく、ブランドにとっても主流アイテム。突き詰めると、買う側と売る側、双方のアイデンティティーになっている。この写真にはそんな皮肉を込めました。

これらファッション的な要素が強く出ている作品は、私の写真のスタイルを代表する作品とは必ずしも言えませんが、私が作品で頻繁に使う「カットアウト」の手法を使用していますし、私がすべての作品を通して表現している、「曖昧なアイデンティティー」を感じさせる要素もあります。

――なぜ被写体の顔をカットアウトするのでしょうか。

顔が認識できないことで、鑑賞者が写真に映っている人物と自身を重ねることができると考えています。顔を隠すことによって、被写体は普遍性を持つようになる。だから私は、人の顔をカットアウトするのです。カットアウトの手法は最近使い始めました。ただ、それ以前からも顔を髪の毛で覆ったり、そっぽを向かせたりして、被写体のアイデンティティーを隠してきました。

また、作品は自分のために作るものでもあります。私を含め、アーティストは皆自己中心的。被写体の写真ではなく自分の写真であってほしい。この手法から更に成長したいと考えていますが、今はまだ写真が自分に帰属していてほしいのです。

――作品はどのように作り始めるのでしょう?

当初はランダムに撮影していました。でも限界に気付いて、頭の中のイメージをスケッチするようになりました。手帳にドローイングを起こしてから、それをそのまま写真に再現するのです。スタジオでの撮影が多いのですが、そこは私にとって絵を描ける余白、キャンバスのようなもの。今回展示している作品もこうして作っています。余白が多い、ドローイングのような作品です。おそらくうまく絵が描けないから写真を撮っているのでしょう。写真は“瞬間”をそのまま捉えるメディアだから、好きなのです。

vol.2/2に続く。
《Maya Junqueira Shiboh》
  • イナ・ジャン氏。自身の作品を模してその場で仮面を作ってくれた
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  • 写真のモチーフを描きつける手帳
  • 学生時代に撮ったバッグストーリー。ショッパーからバッグの一部が除く
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  • 仏誌Jalouseでのアクセサリーストーリー
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