【PRESSブログ】構造主義的・実存主義的な初音ミクオペラ「THE END」

Voice Voice

会場にはルイ・ヴィトンを着た初音ミク等身大フィギュアが登場
  • 会場にはルイ・ヴィトンを着た初音ミク等身大フィギュアが登場
渋谷文化村オーチャードホールで公演された、初音ミクが歌う話題のデジタルオペラ「ジ・エンド(THE END)」を観て来ました。

プロジェクションマッピングが投影される舞台には、ガーゼのような薄い素材感の4
面スクリーンが垂れ下がり、デジタル映像作家YKBXによる非常に完成度の高い映像が流されます。建築家の重松象平氏による舞台美術は、このシンプルなスクリーンに合わせて、スクリーンと同じ素材で四角く象られたブースと、傾斜のある床面のみ。無駄を省いたデザインに、奥行きを感じました。

この舞台の構造と映像の完成度から、パフォーマンスが一度始まると、まるで初音ミクが舞台に存在しているかのような錯覚を覚えます。そして、そのアディクティブな映像に目が釘付けになってしまいました。

チェルフィッチュの岡田利規氏脚本のストーリーは、誰もが思春期に経験する存在論的な内容。実存しないキャラクターである初音ミク=「思考」が、どこからか現れた実存する自身の分身=「体」を意識し始め、とまどいながらも「思考と体の一体化」を果たす物語です。そしてこの物語は「死」を理解しようとする力によって引っ張られます。とても分かりやすい古典的な物語の構図です。

ルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」のウサギや、サン・テグジュペリ作「星の王子様」のキツネと同じ役割を果たす、いわゆる狂言回しとして、着ぐるみめいたヘアメイクを施された渋谷慶一郎氏が舞台に立ちます。

音については「時間の意識を飛ばすことを意識した」と渋谷氏。まるで耳のすぐ側で囁いているような音から、内臓が震えるような重低音までが効果的に使われました。ボイスロイドによる、聞きとれる台詞と聞きとれない台詞が重なり、物語へのコンセントレーションが時間と共に増して行きます。

ルイ・ヴィトンのマーク・ジェイコブスがデザインした初音ミクの衣装は、13SSのランウエイそのままに、今まさにファッションページで露出されているルックで構成されていました。「ルイ・ヴィトンがアートとファッションの関係を最もビビッドに表現しているからヴィトンを選んだ。アートをただ額縁に入れるというよりも、アートをファッションの側に引き寄せるし、ファッションもアートに溶け込ませる、双方の能動的な関係を築いている」とルイ・ヴィトンについて語った渋谷氏。初音ミクのバストもファッショナブルにサイズダウンさせたそう。

ここ最近、スタイリストにアニメキャラクターをスタイリングさせ、それを原画に起こすプロジェクトが気になっていましたが、これはその進化版とも言えるのではないでしょうか。こういった企画の更なる進化を期待させられました。

渋谷氏は「最初から海外を意識してこのオペラを作った」とコメントしていますが、なるほど、この完成度とテイストは良い意味でのいわゆる「クールジャパン」的なツボをドンピシャで突いています。11月にはパリ・シャトレ座での講演を控えていますが、ジャパンメイドのオペラがどのように世界に受け止められていくのか、楽しみにしています。
《Maya Junqueira Shiboh》
  • 会場にはルイ・ヴィトンを着た初音ミク等身大フィギュアが登場

FEATURED

特集

page top