【REPORT】“痛み”を見せるシガリット・ランダウ展。メゾンエルメスにて開催中

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収穫機がオリーブの木を揺らす様子を録画した「茂みの中へ」
  • 収穫機がオリーブの木を揺らす様子を録画した「茂みの中へ」
  • 「火と薪はあります」の居間
  • 「火と薪はあります」の台所では女性達の話し声が聞こえる
  • シガリット・ランダウ氏
銀座のメゾンエルメス8階フォーラムにて、「ウルの牡山羊」シガリット・ランダウ展(The Ram in the Thicket by Sigalit Landau)が8月18日まで行われている。オープニングには本人が来日し、作品について説明した。

展示は二つのインスタレーションで構成。一つは既に発表されているビデオ作品「茂みの中へ(Out in the Thicket)」を発展させた作品。収穫機がオリーブの木をゆさゆさと暴力的に揺らす様子が、天井から下がる4面のスクリーンに投影される。フロアには収穫機本体が設置され、来場者は挟まれて揺さぶられ、オリーブの木と同じ気持ちを味わえる。

イスラエル南部のキブツ(農業共同体の集落)で日々収穫されるオリーブは、自然収穫ではなく、巨大なプランテーションの中で機械的に短時間で収穫される。不安定な政情では、いつ収穫できなくなるか分からないためだ。「イスラエルでは、パレスチナ側の農家が育てあげた、樹齢の古いオリーブの木が壁の建設によって切り倒される悲しい現実がある」とランダウ氏。ここでは皮肉にも「平和の象徴」でもあるオリーブが「恐怖の象徴」として浮かび上がってくる。

もう一つは50年代イスラエルの部屋を再現した新作「火と薪はあります(Behold the Fire and the Wood)」。「私の祖父の家の一部を再現した、未発表のインスタレーション作品」とランダウ氏は説明した。台所では、世界各地からイスラエルへ移住してきた女性達の立ち話が聞こえ、居間の一部には墓石が見える。空っぽの家では「人の不在」が意識され、50年代当時と今のイスラエルの世代間の断絶について考えさせられる。家の中の私的な経験について、社会的、政治的な意味を考えるように仕向けた作品だ。

テルアビブで作品を作り続ける作家は、暴力の連鎖に対して平和的に、非暴力的に、そしてあくまでも感覚的にアクティブであり続けることに価値を置く。正義を振りかざすことを避け、スローガンなども掲げない。「アーティストが個人的なことを作品にして、他者に影響を与えること自体がポリティカルな行為だと思う。その意味でアーティストは皆ポリティカル。私はその中でも集団へコミットし、他人と関係を持ち、何かをつなげようとしている。政治的なことを無視して作品を作ること自体が非常に政治的で、それは危険なことだと思う」と語る。

彼女は現在死海の中にイスラエルとヨルダンをつなぐ、「塩の橋」を架けるプロジェクトを制作中。ヨルダンとイスラエルが国交を結んでから20周年を迎える2014年に完成予定だ。


【イベント情報】
「ウルの牡山羊」シガリット・ランダウ展
会場:メゾンエルメス8階フォーラム
場所:東京都中央区銀座5-4-1
会期:8月18日まで
時間:11:00から20:00(日曜は19:00まで)
入場無料
《Maya Junqueira Shiboh》
  • 収穫機がオリーブの木を揺らす様子を録画した「茂みの中へ」
  • 「火と薪はあります」の居間
  • 「火と薪はあります」の台所では女性達の話し声が聞こえる
  • シガリット・ランダウ氏

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