チームラボ、生きた人間の骨格の動きや形態を忠実に再現する3D人体解剖アプリ「teamLabBody」を発売

2013.03.27

チームラボは3月21日、生きた人間の骨格の動きや人体の形態を忠実に再現した、世界初の3D人体解剖アプリ「チームラボボディ(teamLabBody)」を発売した。

人体解剖学におけるデジタル教科書として医療用途や教育用途に使えるだけでなく、接骨院やエステヨガ教室、トレーニングなどのヘルスケア用途、デッサン、漫画アニメなどアート系の資料としても幅広く活用することができる。対応機種はiPad2/新型iPad/iPad4/iPad mini。言語は英語と日語に対応する。

このアプリは、大阪大学運動バイオマテリアル学教授の菅本一臣教授の研究チームが開発した、生きた人間の関節の三次元的な動きを解析する手法を基にしたもの。整形外科の治療や手術の際、症例によっては、従来用いられている情報だけでは技術的な限界があった。そこで研究チームは、全く新しい手法で骨関節の三次元形態と動きを解析する技術を開発。その結果、人間が自分の意志で動かした関節の動きは、献体から得た動きとは異なることを明らかにした。

この結果から、研究チームは「生きた人間の骨格の動きは、治療や手術、さらには教育分野全般に役立つ」と考え、1998年から独自のソフトウェア「teamLabBody -3D Motion Human Anatomy-」の開発に着手。10年以上にわたって研究を進め、人体の全身の筋・神経・血管・骨・関節を高精度にビジュアル化し、同時に3Dモーショングラフィックスによるリアルな動きを実現した。

このアプリの特徴は、CTやMRIのデータから忠実に再現された全身の3D模型を表示できること。筋肉・じん帯・神経・血管・骨など計827部位を詳細に閲覧できるほか、骨格の動きや形態を好きな角度・倍率で見ることができる。また、全身表示の状態からでも直感的に見たい部分を操作できるので、操作方法をわざわざ学習する必要もない。ちなみに市販用アプリとなる「teamLabBody」の開発にあたっては、チームラボがユーザーインターフェースをより使いやすい仕様へと進化させた。

解剖学的な見地から作られたiPad向けの人体模型3Dアプリは以前からあるが、“生きた人間”の動きや形態をここまでリアルに再現したアプリはこれまで存在しなかった。また既存のアプリも英語版のみの提供だったり、独特のインターフェースを採用するなど、医学関係者以外のユーザーが興味を持っても使い勝手の面で課題があった。誰もが簡単に操作できる敷居の低さは利用シーンの拡大につながる。「teamLabBody」はこの点で、幅広い事業分野の注目を集めそうだ。

タブレット用アプリは既に膨大な数がリリースされているが、採算ベースに乗っているアプリはまだまだ少ないのが現状。多くのソフト会社が実験的な意味合いから参入している中、医学系のアプリは確実な需要を見込める数少ないカテゴリーと言われている。「teamLabBody」の発売元であるチームラボは、プログラマー、エンジニア、デザイナー建築家など幅広いスペシャリストから構成されているテクノロジスト集団。アートやエンタテイメント分野での活躍が目を引くが、メディカルなどビジネス分野のアプリ開発にも豊富な経験を持っている。今回の取り組みはチャレンジと言うよりも、新たなビジネス分野への着実な一歩と言うべきだろう。

「teamLabBody」の価格は2600円。機能・対応機種・言語は同じだが、頭頸部のみに対象を限定したLight版も、価格85円で同時発売されている。チームラボは、夏頃にはアンドロイド対応版を発売する予定。また、「teamLabBody」をベースにしたヨガの教科書ソフトも検討しているという。今後は新たな知見に基づいたこの3D人体模型アプリが、身近な分野で積極的に使われるようになるかもしれない。
薄井テルオ
  • 生きた人間の動き・形態を再現した3D人体解剖アプリ「teamLabBody」
  • 「teamLabBody」忠実に再現された3D人体模型
  • 「teamLabBody」忠実に再現された3D人体模型
  • 「teamLabBody」忠実に再現された3D人体模型
  • 献体とは異なる生きた人間の関節の動きを3Dで再現
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