【INTERVIEW】アートとファッションを予言する『フューチャーキュレーション』の真意とは?後藤繁雄氏に聞く

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後藤繁雄氏
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伊勢丹新宿店再開発において、設計を担当した丹下憲孝と森田恭通は「ファッションミュージアム」をテーマに掲げた。ファッションとアートを融合(フュージョン)させたお店を目指すということだ。そして、両名が造り出すミュージアム=美術館という箱に対して広告キャンペーンのコンセプトワークを担ったのがクリエーティブディレクターの後藤繁雄氏だ。

後藤氏は再開発後の伊勢丹を予感させる紙&ウェブ媒体「イントゥ ザ フューチャー(INTO THE FUTURE)」を制作し、モナ(Mona)をミューズとしたメインビジュアル作り、そしてグランドオープンと同時に発刊されたファッションミュージアムの世界観を伝えるビジュアル書籍『フューチャーキュレーション』の編集を手掛けている。彼にこの書籍の狙いを聞いた。

――『フューチャーキュレーション』を作った目的は?

結論から言うと、“伊勢丹という東京の百貨店がアートフュージョンについて考えている”ということを世界に知れ渡らせるためだ。

現在様々なメゾンが、アーティストを用いて付加価値を付けるアートフュージョンを使ったブランディングを行っている。伊勢丹も同様にそれを行うということは、どういうプラットホームをすえてお客さんに提案するかという同店の見識が問われることになる。それに対する答えをこの本は示している。

――具体的にはどのような内容か?

巻頭にはアートフュージョンについて山本耀司やベアトリクス・ルフ(キュレーター)、アバケ(グラフィックデザイナーユニット)らに聞いたインタビューページと、篠山紀信撮影による名和晃平の作品とディオールやサンローランなどトップメゾンの洋服を融合させた写真ページを設けている。

そして中盤では、今アート&ファッション界で活躍している国内外51人のアートフュージョンへの考えを掲載した。ファッションデザイナーやディレクター、キュレーター、アーティストなどがアートフュージョンに関して今どう思っているのかを窺い知ることができる。

この本はもちろん彼らにも発送する。海外ではオリヴィエ・ザームやクリスチャン・ルブタン、アイ・ウェイウェイ、テセウス・チャンなどへ。これによって伊勢丹がアートフュージョンのプラットホームを提案しているということが世界の最先端を行く人達に伝わる。箔押しの表紙にコデックス装(背表紙なし)というインパクトある装幀と相俟って、「伊勢丹は一体何をやろうとしているんだ?」と受け取った人は予想を抱くだろう。

――アートフュージョンについて教えて下さい。

例えば、英アーティストのライアン・ガンダーがエルメスのスカーフをデザインしたり、草間彌生がルイ・ヴィトンとコラボレーションしたりと、現代アーティストがファッションメゾンとグッズを作ることが一般的になってきた。今、アート業界にはアーティストがブランドとコラボレーションすることがかっこいいという風潮も起こってきている。商業的なものとアートが融合することはアートの適正な進化の一つと言っていい。スイスの美術館「クンストハレ・チューリッヒ」のディレクター、ベアトリクス・ルフなど世界のトップキュレーター達も肯定的にとらえている。これは驚くべき趨勢だ。

この本は、同分野にかかわる人たち、アーティストやメゾンがこれからアートフュージョンを考える時のためのネタ本として機能することも狙っている。世界中に配布することで、これからアートフュージョンがはやるようにするための時限爆弾を各地に仕掛けたようなもの。予言集と言ってもいい。

――“キュレーション”とタイトルにありますが、本来アート用語であったこの言葉が、インターネットの発達による“キュレーションサイト”など、一般的に用いられるようになっています。どう捉えていますか?

今のキュレーションという言葉の概念はバーチャル(ネット)とリアルをエディットするということだと思う。今はバーチャルの情報があまりに多いから、セレクターやエディター、リコメンダーという役割がとても重要になっているのではないか。そして、彼ら自身がロールモデルとなるライフスタイルを送っていないとリスペクトされない。セルフブランディングが重要となってきている。

ブロガーもキュレーターみたいなものだ。食べた物・買った物をブログにアップして、それを読んで、食べたい・欲しいと思う読者がいる。つまり彼らがアップしたものがメディアとなっている。今の人達は、贅沢ではなく適正な欲望の帰着点を探しているようだ。それを指南してあげることもキュレーターという役割だろう。

伊勢丹にもウェブでトップブロガーを仕立て、キュレーションサイトを作ったら面白いと思う。そうすればウェブがショーウインドーになる。ネットでこのような仕組みを作ってそれがリアルに反映されることになったら小売業の構造が変化すると考えている。

――最後に、アートを売り場に取り込むことにどういう意義があると思いますか?

アートは真実を見せる平和活動・破壊兵器両方に活用できるもの。つまり、アートフュージョンはすべてが丸く収まるものを提案できるわけではない。ヤバいぐらいポテンシャルがある。でも、そんな危険性があるものを売り場に導入することが新たなブランディングになる。『フューチャーキュレーション』で伊勢丹の姿勢・見識を示すことでこれからやりやすくなっていくだろう。

3月6日には名和晃平の作品とメゾンの服が伊勢丹のウインドーに展示されたが、これは一つの成果。今まで複数ブランドがウインドーに並ぶことなんてありえなかった。編集の勝利と言える。広告・宣伝は直接売り上げを生むものではないが、ブランディングにおいてとても重要なウエイトを占めるファクターだ。私にやらせてくれた婦人統括部、宣伝部の見識はすばらしかった。感謝している。
《編集部》
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