【インタビュー(前編)】川島蓉子が中陽次伊勢丹新宿本店長に聞く―「モードを売る店」として百貨店らしさの復権を

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中陽次伊勢丹新宿本店長
  • 中陽次伊勢丹新宿本店長
  • 伊勢丹新宿店3階パーク
伊勢丹新宿店のリモデルが進んでいる。昨年12月5日に3階モードフロアが開き、3月6日には最終的なお披露目となるグランドオープンが予定されている。顧客の1人としても、その動向は気になるところ。伊勢丹新宿本店長の中陽次さんにお話をうかがった。

―行き過ぎたのではないかと心配していた―

伊勢丹について取材を重ねてきたが、店長である中さんにお会いするのは初めてのこと。ちょっと緊張してインタビューにのぞんだ。話をうかがうと興味深いことばかり。中さんの話術も後押ししているのだろうが、聞いてみて分かることが、実はたくさんあったのだ。

12月5日のリモデルで大きかったのは、内装イメージを大きく変えたこと。インテリアデザイナーの森田恭通さんの手によって、全面的に刷新された売り場が登場した。
「行き過ぎたのではないかと、ちょっと心配していたんです」と、中さんは最初に言う。聞いてみると、空間の照明や素材をあえて統一しなかったので、「お客様が巡っていて、くらくらするのではないか」と、少し心配したというのだ。
しかしそれも杞憂に過ぎなかった。全体的にはポジティブに受けとめる人が多かった。旧来の売り場に慣れていた私もやはり迷ったが、変化に富んだ明るさや躍動感のある元気さが伝わってくる売り場だと感じた。

「今は“統一の意匠”ではない時代ととらえています。不均一であっても全体が調和することを狙いました」と中さん。各フロアに「パーク」と名づけられたプロモーション的なスペースを設置したこと以外は「縦軸で貫く意匠をあえて施さなかった」という。

振り返れば2003年、メンズ館において、ブランドを越えた統一環境による売り場が誕生した。従来の百貨店の枠組みを壊す場として、大きな話題を呼んだのは記憶に新しい。その後、食品、アクセサリー、婦人服と統一環境は広がっていった。そして他の百貨店でも導入するところが続いた。均質な売り場が普及・定着していったのである。

―「不均一の調和」を図った―

今回のリモデルは、その逆を行こうという話。「不均一の調和」を掲げたというのだ。フロアごと、売り場ごとに統一条件をあえて設けず、それぞれの個性を出す。「新しくて想定外のことが起こるのがモードの本質。この店はモードを売る店なのです」と中さん。

これは私も大賛成。整い過ぎているものの魅力は、女性には分かりづらい。理論・理屈よりは、感覚・実感が先立ってしまうのだろう。薀蓄(うんちく)好きな男性に対し、「そんなことより可愛いかどうか」という女性の言葉が、それを物語ってもいる。

今回、登場した売り場は、その意味でも興味深い。「何があるのだろう」と巡る楽しさが、百貨店に戻ってくる気配が見え隠れしているからだ。それは、売り場環境にとどまらず、商品、販売員、すべてにかかわってくること。「モードを売る店」というからには、常にわくわくドキドキさせる要素を発信していかなければならない。生き物とも言える売り場を、躍動的に動かして魅力づけをしていくには、社員のたゆまぬ努力こそが求められる。これからの維持・進化が肝要だ。

―店頭から奥に引き込む売り場―

「店頭面積は、婦人グループで言うと約8%は減っているし、店頭SKU数で言うと10%以上は減っているはず」。売り場を広げることを良しとしてきた百貨店の方針として、これも斬新と感じた。理由を聞いてみると、「店頭になくても、扱っているSKU自体は増えているので問題がないのです」とのこと。倉庫にあるものをチェックして迅速にお客に届けること、タブレットで店頭にないものの在庫を即座に調べ、取り寄せることをこれから積極的に広げていくのだという。そのため、売り場の随所には、ゆったりしたソファや個室が配されていて、お客がくつろぎながら「自分のためのファッション」を選ぶスペースが確保されている。

問われるのは接客の深さだろう。店頭からお客をどう奥に引き込んでいくかは、販売員の技量に拠るところが大きいからだ。そこに挑戦していく伊勢丹の意図には、大きなエールを送りたい。もしそれが実現すれば、百貨店らしさは復権していくに違いないし、百貨店ファンとしてそうあって欲しいと願うからだ。
《川島蓉子》
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