【編集長ブログ】田中一光とディオール

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奈良県立美術館「田中一光展」
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奈良県立美術館で「特別展/田中一光デザイン世界 −創意の軌跡−」が3月20日(水・祝)まで開催されている。

先月まで4ヶ月にわたり行われていた21_21 DESIGN SIGHT企画展「田中一光とデザインの前後左右」を見逃したことを悔やみきれず、連休に突然思い立って奈良に向かった。

奈良を訪れたのは数年ぶりだが、いつ来ても小学校気分に戻れるのが良い。今回も事前にスケジュールを綿密に立てたわけでもなく、遅い朝に奈良に着いて、興福寺で東金堂と五重塔と阿修羅像を見て、東大寺で大仏さんを見上げ、二月堂で一服してから美術館で展覧会を見てと、充実した1日。大人になってからは、ならまちの平宗で柿の葉寿司をつまんで一杯、とおまけが付いて、さらにご機嫌な休日の遠足となる。

その「田中一光」展。ポスターと言えば、田中一光と横尾忠則の二人に刷り込みされた世代にとって、どの年代の作品も教科書のような存在。休日ながらそう混み合わない会場で、空間全体を俯瞰しながら作品を見られるというのは、本当に贅沢だ。

田中一光が奈良出身ということもあり同美術館が収集したコレクションはグラフィックアート182点、ポスター105点に及ぶ。今回その代表作が展示されているが、田中一光が残した膨大の作品から見ればごく一部。興味深かったのは。若い頃のデッサンやドローイング、油彩画、はたまた小学校時代の書など、初めて発表されていた作品群。没後に自宅から見つかったものだが、驚いたのはその中に含まれている衣装デザインの原画13点の存在だ。

デザイン画は京都市立美術専門学校の図案科を卒業して、鐘淵紡績(カネボウ)の意匠部に勤務していた時のもので、このときに自身がパリの最新モードに触れて、デザイナーを夢みていた、ということも今回の展示で初めて知った。デザイン画自体は人員整理の対象として解雇される1952年夏までの約2年間に描かれたものなのだが、その頃カネボウはディオールからオートクチュールの型紙や生地を買い付けていた時期だということを、田中千代先生のアーカイブで知った。1951年というのは森英恵が新宿に洋裁店「ひよしや」をオープンした年にあたる。

その背景を知るとポスターなどの作品の見方も変わる。当時のディオールはパリモードの頂点として作品を発表していた時期。一光さんはリアルで体験したディオールの“ニュールック”をどう見ていたのだろうか?  今回の展覧会ではカネボウ退社後の“具体美術”の影響にスポットを当てていたけれど、個人的にはディオールが田中一光に与えた影響の方が気になるところだ。一連のポスターのデザインなどに明らかにディオールの影響を感じてしまう。

今回はあまりファッションに関する作品は展示されていなかったが、日本のファッションシーンの中で田中一光が手掛けたグラフィックは実に多岐にわたる。そのグラフィックが日本のモードに与えた影響は大きい。そう考えると小池一子さんがディレクションした「田中一光とデザインの前後左右」展を見逃したことが残念で仕方がない。


【展覧会情報】
「特別展/田中一光デザイン世界 −創意の軌跡−」
会期:2013年1月12日(土)から3月20日(水・祝)
会場:奈良県立美術館
住所:奈良市登大路町10-6 
開館時間:9:00から17:00(金・土曜日は19:00まで、最終入場は閉館30分前まで)
料金:一般800円/大・高生600円/中・小生400円
休館日:月曜日(2月12日は休館)
《編集部》
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