話題のパネルディスカッション。三越伊勢丹、UA、ゾゾ代表による「価格に見合う価値の時代」とは?

2013.02.04

2月1日、「第5回文化ファッション大学院大学ファッションウィーク」(BFGUFW)イベントの一環として、大西洋三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長、重松理ユナイテッドアローズ(以下、UA)取締役会長、前澤友作スタートトゥデイ代表取締役によるパネルディスカッションが行われた。

テーマは「ジャパン発の100年ブランド 100年ショップを最創造しよう!」。同大学院の長谷川功教授が司会進行役を務め、今後のファッション業界について意見を交わされ、第1部はユーストリームでライブ配信された。

三越伊勢丹の大西社長は、百貨店が依然として厳しい経営状態にあることを前提として、その背景の「婦人服売り上げの低下と、婦人雑貨の好調」な状況に着目。「顧客の感性分類と社会属性を組み合わせて商品を展開することで、個々のニーズに即した商品を提供している」と述べた。
3月6日にグランドオープンに向けて、順次各フロアオープンしている伊勢丹新宿店に関して、「2階から4階で新規顧客が各フロア2%、4%、6%増加。婦人服と雑貨の買い回りが2%から4%上昇した」と説明。今後も「百貨店のあるべき姿の実現(百貨店の再生と存在価値の向上)」を目指すとした。

UAの重松取締役会長は、好調決算の背景要因として「7、8年サイクルで出店のサイクルを変えてきたこと」「新規事業を凍結し既存事業を拡大、効率の良い事業に集中してきたこと」を挙げた。
今後は2014年3月期までにナンバー1の好感度ファッション専門店グループの地位の確立を目指す。その戦略として、1.既存事業の徹底強化、2.新チャネルへの展開(空港、ハイウエイなどへの店鋪展開)、3.新ドメインへの進出(ライセンス事業など)を掲げていることを説明した。

スタートトゥデイの前澤代表は、直前にゾゾタウンの購入ポイント還元率を10%から1%に戻すと発表したことに触れながら、「トライ&エラーのサイクルの早さが自社の強みでもあり、弱みでもある」と説明。また、顧客の変化として「O2O(オンライン・トゥ・オフライン)の流れにあり、現在スタートトゥデイが運営するゾゾタウンの顧客はオンラインショッピングと店鋪での買い物の利用率は約半々になっている」と話した。

UAの重松会長と三越伊勢丹の大西社長はともに、震災やリーマンショックといった外部要因による消費の変化に関して述べ、「一時はファストファッションなど低価格志向の傾向が強かったが、現在はいかに価格に見合う価値を提供できるかが重要になっている」と同様の見解を示した。

第二部から参加したUAの野宏文クリエティブディレクターは、この点についてデザイナーズブランドを例に出して説明。現在魅力的なブランドとして、カラーkolor)やサカイsacai)を挙げ、「今のデザイナーズブランドがリアルクローズ化しており、そうした服は一見シンプルに見えてもシルエットの美しさといったディテールにブランドの良さが現れている。オピニオンリーダーとマジョリティーの両方の層から着られるようになっている」などの変化を考察した。

大西社長もこの点について、「震災後、ファッションへの価値観や見方が変わってきている。スタイリッシュでありながら実用的で、素材もしっかりしたものが、今は好まれるようになっていると」との見方。

また、「おもてなしを重視した伊勢丹から見てECをどう見ているか?」という質問に、大西社長は顧客のニーズの多様化のなかで「ネットを通じたおもてなしの仕方も充分ありうる」と述べ、前澤代表は「ネットでもおもてなしの要素を取り入れようと、バーチャルなコンシェルジュサービスなども含め、現在実験している最中」と回答。

UAの重松会長も「世界で日をアピールしていく上では、商品そのものよりも、日本独自の文化に根ざした繊細なおもてなしが重要になってくるのではないか」とコメントした。

一方でアパレル業界のコメンテーターからは、「現在の日本のファッション業界が小売主導でものづくりサイドが主導権を握っていないのでは」という意見とともに、「価値と価格の話題が出たが、価値を小売の人間だけで定義してしまっているのではないか」といった厳しい指摘も飛んだ。

最後に服飾のパターンを専攻する学生から「服の作り手に最も望むこととは?」との問いに、重松会長が「服はデザインではなく、最終的にはフォルムや着心地だと思っている。そこを突き詰めてほしい」と語り、注目のイベントの幕が閉じた。
石山佳奈
  • 手前より栗野宏文氏、重松理氏、大西洋氏、前澤友作氏
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