【COLUMN】「シアタープロダクツ」の近未来。武内&藤原の新コンビを占う

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新たにデザイナーに就任する藤原美和(右)と武内昭
  • 新たにデザイナーに就任する藤原美和(右)と武内昭
シアタープロダクツは先日、2001年のブランド設立以来、武内昭とともに「シアタープロダクツ(THEATRE PRODUCTS)」のデザインを手掛けてきた中西妙佳の退任を発表した。「昨年春に出産した娘の育児とブランドにとっての最良の方法を探った末の決断」(中西)だという。

実にシアタープロダクツらしい人間味溢れるというか、ブランドが備える幸せな空気感を象徴するようなニコニコしてしまう理由で、退任を残念がる人は多くても、そこに疑問を感じる人はいないのではないだろうか。熱烈な中西のファンにとってラストシーズンの2013春夏コレクションは特別なものになるに違いなく、人気アイテムは争奪戦が予想される。最近「ハイク(HYKE)」というブランド名で再始動を発表した「グリーン(GREEN)」の休止時のように…。

中西の後任となるのは、現「アンサンブル シアタープロダクツ(ensemble THEATRE PRODUCTS)」デザイナーの藤原美和で、2013秋冬シーズンから武内昭と共にシアタープロダクツのデザインを担当する。藤原はトゥモローランドの企画を経て、2009年にシアタープロダクツに加入。小物の企画を中心に担当してきたが、その独特で繊細な世界感が評価され、2011年秋冬にアンサンブルをスタートさせた。

私が思う藤原の持ち味は、PVCやフェイクファーなどのチープな素材をバタ臭く高級に見せるテクニックと、実家の洋品店で幼い頃から様々な物に囲まれて育つ中で培われた “昭和の西洋的感性”にある。写真でしか見たことないけれど、ホテルニュージャパンのニューラテンクオーターのインテリアや、S12#型クラウンのベルベットのワインレッドの内装的な「昭和の西洋」と、トゥモローランド時代に培われたヨーロッパ寄りの「正統派トラッド」。その2つの要素をミックスして具現化したのが、アンサンブルの小物なり洋品だった。

石原裕次郎の愛人じゃなきゃ似合わなそうなベージュのガウンと、清楚にもSM用具にも見えるストッキング素材のパンプスカバーは強烈に目に焼き付いているし、最新コレクションでは「自分で2足買いするほど気に入っている」というパールでデコレーションしたホワイトのパンプスが印象的だった。とにかくモノ作りがどうしようもないくらい好きで、メンズの職人系デザイナーでたまにいる「こんなの作っちゃった(ハートマーク)」的な無邪気な洋服好きの匂いがする数少ない女性デザイナーなのである。藤原は「これまでのシアタープロダクツの世界感を大切にしつつ、これもまたいいねと思ってもらえるような表現に挑戦したい」と控えめに話すが、アンサンブルで見せた世界感が本ラインでどのように昇華するのか、今から楽しみでならない。

そんな藤原とコンビを組む柔和で言葉数の少ない武内も、負けず劣らずマニアックな感性を持つことで知られている。層の厚い30代の男性デザイナーの中でも、特筆した古着(特に戦前のEUモノ)の知識を持ち、個人レーベル「パスカルドンキーノ(PASCAL DONQUINO)」で、「トキト(TOKITO)」「エムシックスティーン(M16)」「サイ(Scye)」「マンド(mando)」などのメンズドメスティック第一世代(私の勝手な命名)とは一味違うアレンジで世の変態(服好き)を歓喜させている武内とのコンビは、ハマれば強力なハーモニーを奏でる可能性を秘めている。

もちろん、マニアックすぎて、一般受けしなくなる可能性もあるけれど、渋谷〜原宿の2キロ圏内にコンセプトの違う直営3店舗を構えるドミナント戦略という通常のドメスティックブランドではあり得ない戦略が当たっている戦略家の一面もあるから、心配は無用だろう。最近ではあの金子功の「ピンクハウス(PINK HOUSE)」とのコラボレーションという、何とも素敵な時を隔てた協業も実現させているし、このメゾンのジャンルや知名度を問わない旺盛な企画力には敬服するほかない。

二人のコンビによる初コレクションは、3月17〜23日かけて開催される「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク東京 2013-14AW」でお披露目される予定。注目されたし。
《増田海治郎》
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