【連載:IT×ファッションvol.01(後編)】ユーザーの発想は自由であるということをブランドは理解する必要がある------アパレルの構造革命を狙うVASILY金山裕樹

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ヴァシリー代表取締役金山裕樹氏
  • ヴァシリー代表取締役金山裕樹氏
月間訪問ユーザーは100万人を突破。売り上げは前月比150から200%で増え、現在月1万人以上のペースでユーザーが増える「iQON」。最後となる下編では、SNSとファッションブランドの関係性を追究し、そこから生まれる将来のファッション構造について掘り下げた。


--御社はSNSサービスの事業ですが、SNSとファッションブランドとの関係はどうでしょうか?

最近の若い方々のムーブメント、考え方はSNSで育まれていると思います。ここは互いの自己主張が乱立するカオスな場所であり、この世界をコントロールする方法はおそらくないでしょう。ただ言えることは、SNSという「各人が自己主張を楽しむ」場そのものは、今後ますます求められ、人々のライフスタイルに浸透していくであろうということです。ファッションブランドもこのSNSを用いて、人々のライフスタイルに溶け込む必要があると考えています。

一方で、ファッションブランドはそのイメージ・世界観をコントロールしてきました。結果、いわゆる「トップダウン的な」見せ方とならざるを得ない。しかし、現実の消費者はブランドにとらわれずミックスし、着こなしています。

--ファッションをライフスタイルに根付かせるためにはSNSが有効な一方、SNSのカオスはブランドにとってはデメリットとなる、ということですね。

そうです。しかし、道は開けると考えています。日本人のブランドミックスセンスは素晴らしい。僕は日本人のコーディネートセンスは抜群だと思っていて、ルイ・ヴィトンのバッグを持ってシマムラに行ったり、グッチのスーツにスタンスミスを合わせてドレスダウンする外しは、日本人にしか出来ないスタイリングだと思います。ラッパーのカニエ・ウエストが、カジュアルなパーカにフォーマルなジャケットを合わせるスタイルは、日本のストリートから真似したと聞きました。こういったメディアコンテンツとしての見せ方は非常に重要です。

そもそも、全身を単一ブランドでそろえている人は、実社会でほとんどいませんし、iQON上でもブランドミックスでのコーディネートがユーザーに好評という事実があります。つまり、ブランドにとっていい意味での「意図しない見せ方」があるということです。だからブランド側には、もちろん譲れない点はあるかと思いますが、意図しないことから生まれる「幅」の価値を重要視してほしい。見せ方をコントロールしようとすると、人々のライフスタイルに入り込むことが困難になります。

--ファッションをライフスタイルに溶け込ませるために、ブランド側はイメージコントロールを諦めろと。

コントロールする場所と、コントロールしない場所との使い分けが重要だと思っています。自社サイトやショップでは、ブランドの持つ世界観や打ち出したいイメージをこれまで通り全面に打ち出していく一方、iQONやブログなどのソーシャルメディア上ではユーザーに表現を任せる。ユーザーの発信力というもののネガティブな側面ばかり着目せずに、ポジティブな側面を有効利用していくことにフォーカスすべきだと思います。

今の日本のファッション業界には、多少の痛みを伴っても変化が絶対に必要です。このままファッションの情報シェア低下に対して何も策を講じなければ、人々がファッションに割く時間とお金は着実に減少していく。今回、冒頭で申し上げた通り、ソーシャルゲームに全部使われてしまうかもしれない。ソーシャルゲームは入念に練られたシステムです。射幸性が高く、決済は直結し、すぐに楽しくなれる。これを越える喜びをファッション業界全体で考えて与えないといけない。

忘れて欲しくないのは「ファッション」の持つ根本的なパワーは絶対に変わっていないということ。新しい服を着て街に出る楽しさは10年前も今も変わっていないと思います。もっと情報の受信・発信量を増やせばいいのです。これからお金を使う若い人たちに情報を届けないと。そしてできればiQONがその役割の一番手に担いたい。早い段階でファッションの華やかさ、楽しさを体感してもらい、ファッションに気を配るライフスタイルとなるようにしなければ。全身単一ブランドの人はいないし、コントロール不能なSNSがムーブメントを作る時代。ファッション業界もこの時代に柔軟に対応する必要があります。

--ブランドのコントロールが利かなくなると、業界の構造変化が起こるのでは。

そうです。それを狙っています。iQONではユーザーの行動履歴を基に、彼らの趣味・嗜好に関する膨大なデータを蓄積しています。どんなユーザーがどんなブランド、色、サイズのアイテムをどのようなタイミングで欲し、実際にどう行動するのか。このデータの活用が今後のテーマです。例えば、ブランドが作り上げた洋服を、ユーザーが編集するiQON上での行動履歴が、ブランドの商品開発やVMDのヒントとなる。更に進めば、コレクションに端を発するファッショントレンドが末端にまで浸透するというトップダウンの現状から、今度は消費状況をブランドにフィードバックするというボトムアップなファッションの作られ方も可能になる、ということ。もちろん、すべてのブランドがそうなるべきと言っているわけではありません。ただ、全体的にトップダウンからボトムアップとファッション業界が構造変化する、これは不可避な流れだと思います。

--最後になりますが、金山さんにとってファッションとは?

僕にとって、ファッションはとても大切なもの。今でも初めて自分のお金で買ったジーパンやスニーカーを履いた時、テンションが上がってカッコつけたのを覚えています。すべての男性はカッコよく、女性にはもっとかわいくなってもらいたい。それはファッションによって実現される部分も大きい。

日本のファッションは本当に素晴らしいと思っていて、アジア圏では間違いなく国際競争力のあるコンテンツです。現在東南アジアの経済成長が目覚ましいですが、東南アジアの多くの人々にとって「衣食住」の「衣」は、意識・関心の上では身体を護る「プロテクション」に近く、「ファッション」ではない。でも、近い将来彼らが「時間」と「お金」の余裕を手にし、「プロテクション」が「ファッション」に切り替わる瞬間が必ず訪れる。日本はこのタイミングを逃してはいけない。その時、iQONが日本の「ファッション」を伝える「起点」として機能し、日本ファッションの飛躍に大きく貢献できれば、と思っています。


【金山裕樹プロフィール】
静岡県浜松市出身、立命館大学政策科学部卒。大学在学中の2000年、フジロッ
クフェスティバル、レッドマーキーステージにバンド出演。大学卒業後音楽系ベンチャーなどを経て2007年ヤフー入社、Yahoo!FASHIONとX BRAND の立ち上げ責任者として勤務後、2009年株式会社VASILY代表取締役に就任。VASILYではファッションコーディネートアプリ「iQON」を運営中。
《編集部》
  • ヴァシリー代表取締役金山裕樹氏

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