【REPORT】ベネチア・ビエンナーレ3/3-ジャルディーニは潜在意識へ没入

2013.10.12

もう一つの会場は、19世紀のナポレオン統括時代にベネチアに強制的に作られたフランス風の「庭園」、ジャルディーニ内のセントラル・パビリオン

ここでは、カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung)の「レッド・ブック」が観客を迎え入れる。これはユングが自身のファンタジーをカラフルな絵に描き、製したもの。蛇や竜、踊る人間など、奇怪でシュールなイメージで溢れている。アルセナーレでは「自然」「宗教」「身体」「テクノロジー」など、外界との関係によって作家が作り出すイメージが順序を追って展示されているのに対し、セントラル・パビリオンでは様々な作家の内なる「潜在意識」から派生するイメージが多数混在して展示されている。

ユングに続いて、仏人作家のルネ・イシェ(Rene Iche)による、人アンドレ・ブルトン(Andre Breton)のデスマスク彫刻「マスク・オブ・ブルトン(Mask of Breton, 1950)」が登場。シュールレアリズムの父、ブルトンは観客を潜在意識の世界へと誘う。
ここではルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner)が1920年代に描いたドローイングや、神からのお告げを受けて宗教的なペインティングを描きはじめた仏人作家、オーギュスティン・レサージュ(Augustin Lesage)などの作品も展示され、カルトと哲学とオブセッションの「グレーゾーン」にある作品達が、人間の潜在意識と強く結びついたものとしてピックアップされている。様々な作家の「集合的無意識」が散らばった会場は、ドロドロとした空気で満ちている。

この会場では最も優れたアーティストへ贈られる金獅子賞を獲得した、英国人作家ティノ・セーガル(Tino Sehgal)のパフォーマンス作品も観られる。セーガルは写真や映像によってパフォーマンスを記録することを好まず、「場」の特異性を生かして、作品をつくり続けている。形を持たないパフォーマンス作品が金獅子賞を受賞したのは、パフォーマンス・アートが評価される最近の流れを汲んでのことだろう。

全体を通して、我々が知識を追求する過程で生まれてきた様々な視覚的「イメージ」を見せることで、人間の知識への飽くなき欲求を昇華させる行為が、あくまで主観的だと再認識させる展示になっている。更に両会場を通して一貫して見られたのは、「誰がアーティスト」なのかという問い掛けだ。アートマーケットとは直接関係を持たない、ありとあらゆるマニアックな作品が細々と集められ、泥臭く、生々しい作品も多くセレクトされた。奇麗な作品、最先端の作品よりもむしろ、「人間らしさ」というアートの根本を見せつけてくれる展示になった。このようにして、アートマーケットに偏ったアートのあり方を批判すると共に、「知識」のアーカイブの多様な方法が見せられ、ウェブ全盛時代の我々の今後のアーカイブの行く末を考えさせられる展示にもなっている。

繊細でありながら、熟考されたテーマを強い意志をもって貫くキュレーションに、キュレーションを超えたアートそのものに近い感覚を憶えた。
Maya Junqueira Shiboh
  • Carl Gustav Jung 'The Red Book
  • Drawings by Rudolf Steiner
  • Augustin Lesage
  • Hilma af Klint
  • Rene Iche 'Mask of Breton' 1950
  • Levi Fisher Ames
  • Maria Lassnig
  • Marisa Merz
  • Morton Bartlett 'Untitled'
  • Oliver Croy and Oliver Elser, Jack Whitten
  • Performance by Tino Sehgal
  • Peter Fischili and David Weiss
  • Richard Serra 'Pasolini' 1985, Thierry De Cordier
  • Sarah Lucas
  • Shinro Ohtake
  • Walter Pichler 'Compositive Figure' 1999 'Movable Figure' 1982
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